「百年の寺院」巡る紛争激化 タイとカンボジアが交戦、8万人が避難

2025-07-24 16:58
2025年7月24日、カンボジアがタイ・スリン県の住民地域に砲撃を加えた後の被害状況。(AP通信)
2025年7月24日、カンボジアがタイ・スリン県の住民地域に砲撃を加えた後の被害状況。(AP通信)
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タイとカンボジアの国境地帯で24日、両国軍による激しい武力衝突が発生した。タイ空軍はF-16戦闘機を投入してカンボジア軍の拠点を空爆。これにより、タイ人2人が死亡、複数の負傷者が出ており、現地の病院では患者の緊急避難が行われた。国境沿いの村々からはおよそ8万人の住民が退避している。

今回の衝突は、20世紀初頭のフランス統治時代から続く古代寺院「タ・モアン・トム(Ta Moan Thom)」の領有権を巡る対立が背景にある。両国の緊張は近年で最も高まっており、外交関係にも深刻な影響を及ぼしている。

タイ側の主張:無人機の侵入から武力衝突へ

タイ陸軍によると、24日未明、カンボジア軍が西北部ウドーミアンチェイ州(Oddar Meanchey)にあるタ・モアン・トム遺跡付近で監視用ドローンを展開。その後、カンボジア兵が越境し、実弾を使用した攻撃を開始したという。

タイ軍は即座に応戦し、BM-21多連装ロケット砲や重砲を用いた大規模な交戦へと発展。さらに、東北部第2軍管区がF-16戦闘機を派遣し、カンボジア軍の支援部隊2カ所を空爆したと発表した。

2025年7月24日、タイ・カンボジア衝突から避難するタイ国民が東北部スリン県で避難している。(AP通信)
2025年7月24日、タイとカンボジアの衝突を受け、タイ東北部スリン県で避難生活を送る住民たち。(AP通信)

タイ陸軍の報道官リチャー・スックスワノン(Richa Suksuwanont)大佐は、「攻撃はあくまで軍事目標に限定されており、民間人への被害は発生していない」と強調した。なお、カンボジア側からは現時点で空爆に対する公式な反応は出ていない。

F-16戦闘機の使用は、近年の国境衝突では異例であり、今回の事態の深刻さを象徴している。

民間人にも被害、病院は緊急避難 政府が8万人を退避させる

国境に近いスリン県カープチューン郡では、カンボジア側の砲撃によって民間人2人が死亡、多数が負傷したと報告されている。郡長スッティロット・チャルーンタナサック氏(Sutthirot Charoenthanasak)がロイターに語ったところによれば、周辺の病院では患者が安全な場所へ移され、公共衛生省もこれを確認した。

タイ政府は、国境沿いにある86の村から約4万人の住民を退避させ、さらに周辺地域も含め避難者の数は8万人に上ると見られている。

戦闘はウドーミアンチェイ州だけでなく、プリアヴィヒア州およびタイ側のウボンラーチャターニー県にまで拡大。タイ軍はウボンラーチャターニー県で対人地雷2個を発見したと発表しており、戦闘の長期化が懸念されている。 (関連記事: タイ・カンボジア国境で住宅地にロケット弾直撃 民間人に多数の死傷者、SNSで悲痛な映像拡散 関連記事をもっと読む

カンボジア側の主張:「タイ軍の侵入が発端」 地雷事件が衝突の引き金に

カンボジア国防省は今回の衝突について、タイ側の説明と真っ向から対立する見解を示している。国防省報道官のマリー・ソチェアタ(Maly Socheata)中将は、「我が軍の行動は自衛に限られており、タイ軍による一方的な領空侵犯と領土侵害に対する正当な反撃だ」と強調。タイ側の「カンボジア軍が先に攻撃した」との主張を否定し、両国間の事実認識の大きな隔たりが浮き彫りとなっている。

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