日本野球界最大の祭典「マイナビオールスターゲーム2025」第1戦が7月23日(水) 、大阪・京セラドームで開催された。《風傳媒》は現地から熱狂の様子をお届けする。 平日開催にもかかわらず、会場には全国から多くの野球ファンが駆けつけ、球場の外には長蛇の列。スタンドでは応援歌と歓声が響き渡り、ユニフォーム姿の観客が記念撮影を楽しむなど、開場前からお祭りムード一色となった。
野球殿堂入り表彰で開幕 名選手たちに温かな拍手 試合開始に先立ち、公益財団法人野球殿堂博物館による2025年度の殿堂入り表彰式が行われた。競技者表彰として元中日ドラゴンズ・岩瀬仁紀氏、阪神タイガースの伝説的打者・掛布雅之氏が殿堂入り。また、特別表彰では、野球文化の普及と発展に貢献した富澤宏哉氏が選出された。
式典では、殿堂入りを記念したレリーフのレプリカと花束が贈呈され、岩瀬氏、掛布氏が登壇。富澤氏の代理として登壇した友寄正人氏と共に、観客から盛大な拍手が送られた。
ホームランダービーは清宮幸太郎が決勝進出 試合前イベントとして行われたホームランダービーは、セ・パ両リーグから選ばれた計8選手によるトーナメント形式。制限時間2分以内に打った本塁打数で勝敗を決め、優勝者には100万円の賞金が贈られる。
初戦では、阪神・佐藤輝明がオリックス・頓宮裕真を5対3で下し勝ち上がり。続く2試合目では、日本ハム・清宮幸太郎が阪神・森下翔太を2対1で破った。
そして準決勝で再び佐藤と清宮が激突。佐藤は先攻で4連発を含む6本を放ち、圧巻の打撃を見せたが、清宮が残り10秒を切ってから一気に7本目を打ち抜き、劇的な逆転勝利で決勝進出を果たした。
清宮は試合後、「輝さんがすごく打っていたので正直厳しいと思った。でも、バッティングピッチャーの高市さんがいい球を投げてくれたおかげです」と語り、感謝の気持ちを口にした。
注目の第2戦は横浜スタジアムで開催へ ファン投票1位で出場した森下翔太は、期待された本塁打数を伸ばせず敗退。第2戦は7月24日(木)に横浜スタジアムで行われ、第4試合ではDeNAの牧秀悟と日本ハムのレイエス、第5試合では中日の上林誠知と日本ハムの万波中正が対戦予定。決勝戦を制するのは果たして誰か、熱戦の行方に注目が集まる。
2025年のオールスターゲーム第1戦は、京セラドームで開催された。(写真/黃信維撮影)
打順は“ガラポン抽選”で決定 異例の演出で観客も沸く 太平洋リーグを率いた小久保裕紀監督(ソフトバンク)が、日本ハム・新庄剛志監督の発案を採用し、打順を「ガラポン抽選」で決定するという前代未聞の演出を披露。試合前のステージで選手たちが順番にガラポンを回し、くじによって打順が決められた。
2025年のオールスターゲーム第1戦は、京セラドームで開催された。(写真/黃信維撮影)
オリックス勢が存在感 頓宮が3ラン、若月もソロで続く 試合は2回、ソフトバンク・周東佑京のタイムリーで全パが先制。3回には、地元オリックス・バファローズの頓宮裕真が、レフトポール直撃の特大3ランホームランを放ち、球場の熱気は最高潮に。さらに7回には、同じくオリックスの若月健矢がソロホームランを放ち、地元選手の活躍が光った。
一方の全セは5回、中日・岡林勇希の三塁打と相手失策で1点を返すにとどまり、以降は全パの強力な投手リレーに封じ込められた。
試合は5対1で全パが勝利。MVPには3ランを放った頓宮が選ばれ、賞金300万円を獲得。また、敢闘選手賞には日本ハム・北山亘基、ソフトバンク・周東佑京、中日・岡林勇希の3名が選出された。
2回裏、1死一・三塁の場面でソフトバンクの周東佑京がライト前へタイムリーヒットを放ち、パ・リーグが先制点を挙げた。(写真/NPB公式サイトより)
モイネロが右投げで観客を魅了 オールスターならではのサプライズ 4回には、思わぬ“パフォーマンス”が観客を驚かせた。全パの2番手として登板したソフトバンクの左腕モイネロが、2死から広島のファビアンを迎える場面で突如右投げ用のグラブに持ち替え、右腕で投球を開始。球場にどよめきが広がる中、最初の2球はボールとなったが、3球目で三飛に打ち取り、スタンドは大きな歓声に包まれた。
モイネロは試合後、「右でも投げられて、いい思い出になりました。もう少し強く投げたかったけれど、当てるのが怖くて球速が出ませんでした」と笑顔で振り返った。普段から右でもキャッチボールをしていると明かし、最後はファビアンと笑顔で握手を交わした。
「スク」「イズ」の文字が流れるサングラス演出 ファンの記憶に残る名シーンに 第1戦では、新庄剛志監督による型破りなパフォーマンスが大きな話題を呼んだ。三塁コーチャーとして登場した4回表、新庄監督は特注の“電光サングラス”を装着し、場内の視線を一身に集めた。 この電光サングラスは、球場のカメラ席にあらかじめ用意されたもので、表示されたのは「スク」(スクイズ)と「イズ」(スリーバントスクイズ)のメッセージ。オリックス・若月健矢がこれを受けてスリーバントスクイズを試みたが、惜しくもプレーは失敗。それでも球場と中継席は大盛り上がりとなり、エンタメ要素に満ちた場面はファンの記憶に刻まれた。
ベンチに戻った周東佑京選手はカメラを手にベンチ内を回りながら、「新庄さん、あれ160万円って言ってた。そんなサングラス見たことない」と驚きの声。新庄監督は2006年のオールスターでも、電光メッセージ付きのベルトで話題をさらっており、19年ぶりの“お祭り男”演出にスタンドは歓声に包まれた。
阿部慎之助監督、球宴初采配に「とても楽しい時間だった」 セ・リーグの監督を務めた読売ジャイアンツの阿部慎之助監督は、自身初となるオールスター指揮を「目の保養になりました」と振り返った。
「初めてこんなに気楽に野球を見られた。いい選手が集まっていて、本当に楽しい時間でした」と笑顔を見せ、新庄監督の演出について問われると、「いや~、僕も何か用意しないといけないのかなと思ったけど、とても斬新でしたね」とユーモアを交えて応じた。
巨人・甲斐拓也が“生実況”でファンを魅了 元同僚・周東とマイク越しに笑顔のやりとりも 試合に全セの捕手としてスタメン出場した巨人の甲斐拓也捕手は、守備時にマイクを装着し、実況さながらの“生中継”で観客を沸かせた。
「今、頓宮が話しかけてきました!」「もう1球チェンジアップいきます!」とリアルタイムでコメントし、広島・森浦投手に直球のサインを出して首を振られると「アハハハ!」と大きな笑い声を上げ、スタンドを笑顔に包んだ。
また、2回にはかつてのチームメート・周東佑京に二盗・三盗を許す場面も。マイクを通じて周東と笑顔で会話する様子からは、両者の信頼関係が垣間見えた。
甲斐は「ありがたい時間だった。本当に楽しかった」と試合後に語り、球宴初出場の喜びを噛みしめていた。
小久保監督「勝負だから勝ちに行った」 MVP頓宮「ホッとした」 賞金300万円は「地元の仲間に還元したい」 第1戦の試合後、全パを率いたソフトバンクの小久保裕紀監督は、勝利を振り返りながら「選手たちにも『これは勝負だから勝ちに行こう』と伝えていたので、結果が出て良かった」と満足げに語った。
オリックス勢の活躍についても「期待通りに結果を出してくれた」と称賛。モイネロ投手の右投げについては「驚いたけど、素晴らしい投手陣だった」と笑顔を見せた。
試合のMVPに輝いたオリックス・頓宮裕真選手は、3回に放った決勝スリーランについて「地元・京セラドームで結果が出せて本当にうれしい。打ててホッとした」と安堵の表情を見せた。賞金300万円の使い道について問われると「地元の仲間に還元したい」と語り、感謝の気持ちをにじませた。
第2戦は横浜スタジアムへ ホームランダービー後半戦にも注目 マイナビオールスターゲーム第2戦は、7月24日(木)に横浜スタジアムで開催される。試合前のホームランダービー後半戦では、DeNA・牧秀悟と日本ハム・レイエス、中日・上林誠知と日本ハム・万波中正が対戦予定。優勝を懸けた熱戦が繰り広げられる見通しだ。
第1戦は全パが全セを5-1で圧倒する結果となったが、新庄剛志監督によるさらなる“サプライズ演出”や、阿部慎之助監督の采配にも注目が集まる。セ・リーグの巻き返しに期待がかかるなか、夢の球宴はまだ終わらない――。