参議院選挙で歴史的な敗北を喫した自民党内に動揺が広がる中、一部メディアが「石破茂首相が辞任を決意、8月末までに発表へ」と報じた。これに対し、石破首相は23日午後、麻生太郎、菅義偉、岸田文雄の3人の元首相と会談後、報道陣の前に姿を見せ、「私がそのような発言をした事実は一切ない」「報道は完全に事実と異なる」と明確に否定した。
また、3人の元首相との会談についても「私個人の進退に関する話は一切なかった」と説明し、辞任の可能性を強く打ち消した。
元首相3人との「一対三」会談 焦点は「危機感の共有」と「党の結束」
注目を集めたこの会談は、23日午後、東京・千代田区の自民党本部で行われた。出席者は石破首相のほか、麻生、菅、岸田の3氏、さらに党幹事長の森山裕氏も同席した。
会談後、石破首相は報道陣に対し、「参院選での歴史的敗北に対して、出席者全員が強い危機感を共有した」と述べたうえで、「我々は一致して、自民党を分裂させてはならないという認識を持っている」と力を込めた。
この発言は、党内で高まる首相退陣論や路線対立の声に対する明確な牽制とも受け取れる。石破首相は、自らの進退問題から党の結束というより大きな課題へと焦点を移すことで、党内の結束を図る狙いとみられる。
「謝罪」から「団結」へ? 石破首相の政治的賭け
石破首相の辞任否定発言は、報道各社が予測していた「謝罪の場」や「辞意表明の調整」とは一線を画すものだった。むしろ、党内の反対派に対し、「分裂回避」を旗印に圧力をかける形となり、これは石破首相にとって一種の政治的ギャンブルとも言える。
とはいえ、地方支部や国会議員の間では、責任を明確に問う声が根強く残っており、「辞任回避」という一手がどこまで効果を持つかは依然として不透明だ。
自民党のある中堅議員は匿名を条件にメディアにこう語った。
「首相が否定しても、『敗北の責任』という問題は消えない。敗因分析の報告書が出た後に、首相が何も言わなければ、党内の反発はさらに強まるだろう」
支持率低迷の中、関税交渉の「成果」をアピール
さらに、石破内閣は参院選敗北以降も内閣支持率が回復せず、苦境が続いている。石破首相はかねてより「米国との関税交渉の完遂」を続投の理由に挙げてきたが、ドナルド・トランプ米大統領はすでに15%の関税率を発表済みだ。
それでも石破首相は、関税協議を「政権の成果」と位置づけ、政権維持の正当性を主張している。会見では「輸出産業にとって極めて重大な問題であり、国民生活を守るために全力を尽くす」と強調した。
編集:梅木奈実 (関連記事: 石破首相、辞任報道を強く否定 会談後に続投を表明、「政治空白は避けるべき」 | 関連記事をもっと読む )
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