日本の政界が大きく揺れた。自民党と公明党による与党連合が、20日に行われた第27回参議院選挙で壊滅的な敗北を喫した。石破茂首相が率いる政権は参議院でも過半数を失い、衆議院と合わせて両院で少数派となった。自民党が1955年の結党以来、約70年にわたり維持してきた両院過半数を同時に失うのは初めての事態だ。石破首相は深夜に続投の意思を示したものの、政権基盤は大きく揺らいでいる。
民心が変化 与党は雪崩のような敗北
今回の参院選では124議席が改選対象で、石破首相は「50議席の獲得」を掲げ、与党で過半を維持する125議席を目標とした。しかし選前から厳しい戦いが予想され、開票の結果、自民党は39議席、公明党は8議席にとどまり、改選前の66議席から大きく減らして計47議席に。参議院の総議席は122となり、過半数を割り込んだ。
NHKの分析では、自民党は伝統的な票田とされる32の「一人区」で、前回の28議席から半減の14議席に落ち込み、2016年制度導入以来の最悪の結果となった。さらに公明党も愛知選挙区で現職が落選し、2007年以来18年ぶりの地方選敗北となった。
石破政権への不満噴出 派閥衰退も影響
『毎日新聞』は21日の社説で、昨年の衆院選に続く「二連敗」であり、国民が石破政権に明確な拒絶を示したと論じた。内閣発足から約10カ月経っても国民の不安に応えられないことが、支持を失った原因とみている。社説は自民党全体にも矛先を向け、派閥体制の弱体化で「票と資金を集める力」が衰え、民意を反映できなくなっていると指摘した。公明党もまた25年にわたって与党を支えてきたが、組織力の低下が目立つという。長引く経済低迷で貧富の格差が拡大し、少子高齢化で社会保障は危機に直面するなか、現状打開の道を示せなかったことも痛手となった。
野党勢力が台頭 票を奪われる与党
一方、野党は躍進した。立憲民主党が22議席、国民民主党17議席、参政党14議席、日本維新の会7議席、共産党3議席、れいわ新選組3議席、日本保守党2議席、社民党1議席、その他1議席、無所属8議席を獲得した。
『毎日新聞』は、最大野党の立憲民主党は一定の存在感を示したものの比例代表では伸び悩み、国民民主党は勢いを増して前年の4倍の議席を得たと分析。『産経新聞』は「若年層や無党派層を取り込んだ国民民主・参政党の台頭」「立憲民主党の地盤固め」「保守新党の登場」を指摘し、政治の光譜が多様化しているとした。
今回の投票率は57.91%と、3年前の52.05%を上回った。多くの有権者が現状への不満を票で示した形だ。
石破首相の試練 与野党攻防の時代へ
石破首相が今後政策を進めるには、野党との協力が不可欠になる。首相は一部野党との「部分連合」を続ける意向を示したが、勢いづく野党の協力を得るのは容易ではない。立憲民主党の野田佳彦代表は「民意は石破政権に明確なノーを突きつけた」と強硬姿勢を示した。一方で野党側も一枚岩ではなく、路線や利害の違いを抱えているため、政権への圧力をどう組み立てるかは不透明だ。
『ウォール・ストリート・ジャーナル』は、今回の結果が日米間の通商交渉を混乱させる可能性を指摘。農業や自動車など敏感分野での妥協を進めるには、弱体化した政権では国会の支持を得にくいとの見方を示した。経済界からも懸念の声が相次ぎ、経団連の筒井義信会長は「国民からの厳しい審判だ」と語り、経済同友会の新浪剛史代表幹事も「政府が経済課題に十分対応できていないことへの不安が表れた」と指摘した。
石破首相は選後、「賃上げが物価上昇を上回るよう努めているが、物価高の影響は深刻だ。消費税を社会保障財源とする説明も十分浸透していない」と認めた。歴史的惨敗を受けて党内から責任を問う声が強まるのは必至だが、首相は深夜の取材で「第一党の総裁として責任を果たす」と続投を強調した。今後の政権運営は困難を極め、日本政治はしばらく激しい攻防と不確実性に包まれる「政治の転換期」に入ることになりそうだ。
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