公益財団法人フォーリンプレスセンター(FPCJ)は7月16日、東京大学大学院総合文化研究科の内山融教授を招き、「参院選の見通しとその後の国内政局」と題するオンライン・ブリーフィングを開催した。
内山氏は今回の参院選について、「石破政権への事実上の信任投票にあたる」とし、物価高騰やコメ価格上昇をめぐる経済政策が最大の争点となると指摘した。また、選挙自体は中間選挙の性格が強く、注目すべき点として、石破政権の評価、物価対策を巡る与野党の違い、野党間の選挙協力、新興ポピュリスト政党の台頭、SNSによる偽情報の拡散、外国人政策を巡る論争などを挙げた。
内山氏は争点を以下の6分野に分類した:経済・財政政策、社会保障・子育て支援、外交・安全保障、政治とカネ、ジェンダーと多様性、外国人政策。与党である自民・公明両党は、子育て世帯や低所得者への現金給付、2030年度までに平均賃金100万円増、2040年までにGDP1000兆円の実現を掲げている。
一方、野党は消費税減税を前面に打ち出し、立憲民主党は食料品の税率を1年間ゼロに、維新の会は2年間ゼロに、共産党は税率5%への引き下げと将来的な廃止を提唱。また、社会保障分野では各党が年金の底上げや子育て支援を公約に掲げる中、維新の会が医療費削減や社会保険料負担の軽減を訴えている点が特徴だという。
外交・安全保障では、自民党が日米同盟を基軸に防衛力の抜本強化を目指す一方、公明党は対話重視と核兵器禁止条約会議への参加を主張。立憲民主党は現行の外交方針を支持する姿勢を見せるが、共産党、れいわ新選組、社民党は辺野古新基地建設の中止や安保法制の廃止を訴えており、政党間の立場の違いが際立っている。
「政治とカネ」の問題では、自民党は政治資金の透明化を進めるとし、公明党も規制強化を掲げるが、立憲民主党、共産党、れいわ新選組などは企業・団体献金の全面禁止を訴えている。
選挙情勢については、7月上旬の調査で自民党が優勢だった一人区は32中12だったが、中旬には4に減少。前回2022年の選挙では与党が28の一人区を制したが、今回は野党が15選挙区で候補者を一本化し、接戦が増えているという。国民民主党や参政党は議席を伸ばす可能性が高い一方、共産党は後退が予想されている。
内山氏は「与党が過半数を割れば、石破おろしが現実味を帯び、小泉農相などが後継候補として浮上する可能性がある」と指摘。逆に過半数を維持しても、「内閣支持率の劇的回復は見込めず、政権は不安定なままだ」と見通した。
SNSの影響については、外国人規制や消費税減税を中心とする投稿が多く、偽情報や差別的言説の拡散が懸念されていると説明。昨年の兵庫県知事選でSNSが排外主義を助長した事例を挙げ、今回の参院選でも同様の傾向が見られる可能性を示唆した。 (関連記事: 独占インタビュー》中国人からの妨害にも屈せず――「反送中」第一人者・平野雨龍氏、日台注目の2025参院選に最年少で挑む | 関連記事をもっと読む )
外国人政策が注目されている背景には、外国人による土地取得や運転免許切り替え後の事故といった具体的な事例が社会不安と結びつき、警戒感を高めていることがあると述べた。