舞台裏》台湾師範大・女子選手に採血強要 告発から処分まで、8か月前の警鐘を教育部は無視

2025-07-17 13:57
師範大女子サッカーチームの学生が違法採血で単位と引き換えにされる事件、被害者の「教授に伺いますが、もしあなたが私たちの立場だったら耐えられますか?」という一言が衝撃を与えた。(写真/范雲事務所提供)
師範大女子サッカーチームの学生が違法採血で単位と引き換えにされる事件、被害者の「教授に伺いますが、もしあなたが私たちの立場だったら耐えられますか?」という一言が衝撃を与えた。(写真/范雲事務所提供)
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台湾・民進党の立法委員・范雲氏らは2025年7月15日、記者会見を開き、台湾師範大学(台師大)が学生に血液検査を強制していた問題を公にした。被害を受けた学生が口にした「教授、もしあなたが私たちの立場だったら耐えられますか?」という言葉が波紋を広げている。この問題は実は8か月前に国会で質疑が行われていたが、師大は重大な問題として扱わなかったとされる。范雲氏は、師大に運営上の深刻な欠陥があり、年次監査を怠り、事件発覚後も十分な調査を行わなかったと指摘。教育部も師大の繰り返される違法行為を重大視しながら、審査の一時停止にとどめ、人体研究法に基づく処罰を下していなかったと批判した。

同じ日午前、民進党の立法委員・吳沛憶氏は、全国教職員組合総連合会の記者会見に出席し、教育部の「愛心球政策」が現場と乖離していると発言。教育部は政策を急に打ち出しては方向転換を繰り返す傾向があり、提案前に十分なコミュニケーションを取るべきだと訴えた。民進党の議員でさえ「我慢できない」と口にする状況に、鄭英耀教育部長の責任を問う声が強まっている。

20250715-師大女足學生遭違法抽血換學分案,民進黨立委范雲召開聯合記者會。(范雲辦公室提供)
師範大学女子サッカー部の学生が、違法な採血によって単位を取得させられていた事件が発生し、民進党の范雲立法委員(左から3番目)が合同記者会見を開いた。(写真/范雲オフィス提供)

学生8か月前に助けを求める 教育部対応見通し変わらず

さらに、陳培瑜氏は7月15日、国科会や師大による研究倫理調査、教育部と師大のキャンパスいじめ調査報告では、外部委員が入っても師大が問題を「在校生」や「単一の研究案件」に限定し、長年被害を訴えてきた卒業生が調査対象外にされたと説明。半年間続く不合理な対応は、師大の曖昧な態度と、教育部・国科会が師大の決定を安易に受け入れたことに原因があると指摘した。

血液採取問題は2024年11月、師大女子サッカーチームの学生が陳培瑜氏に相談したことで表面化した。長年、コーチの周台英氏が研究計画への協力を理由に血液採取を求めていたという。11月28日、陳氏は国科会で質疑を行い、師大は「全員が同意した」と声明を出したが、後に学生が個別に呼ばれていた事実が発覚。12月3日、陳氏は当事者と記者会見を行い、教育部が高等教育の主管として二次被害を黙認していると批判。教育部は注視を続け、師大に手続き通り対応するよう求めていた。

騒ぎの拡大を受け、教育部は2025年7月16日、「キャンパスいじめ事件審議委員会」を緊急開催し、台師大の教員評価委員会の決定を厳格に見直し、問題があれば差し戻すと発表。また、特別チームを組み、国科会と連携して他の争点についても調査を進めるとした。しかし社会の怒りは収まらず、行政院長・卓榮泰氏は「非常に怒っている」と表明。教育部は師大に対し、学生の人権と教育を受ける権利を守り、被害学生の損害補償と該当コーチへの最も厳しい処分、学校の風紀是正を求めると通達した。 (関連記事: 台湾師範大学、女子サッカー部で「血液と単位交換」強要事件 研究名目の強制採血に批判殺到 関連記事をもっと読む

20250715-針對師大女足學生遭違法抽血換學分案,民進黨立委范雲(左三)召開聯合記者會。(范雲辦公室提供)
民進党の陳培瑜立法委員(右から2番目)が8か月前にこの採血事件を公表したが、教育部はそれに対し無関心な姿勢を保った。(写真/范雲オフィス提供)

率先して模範を示すはずの教育部長・鄭英耀の教育部に相次ぐ議論

教育部長の鄭英耀氏は、政治大学で教育学の博士号を取得し、かつて中山大学の学長を務めた。さらに、民進党系シンクタンク「新境界文教基金会」の理事を2期務め、謝長廷氏や陳菊氏という2人の民進党系高雄市長に起用されて高雄市教育局長を歴任した経歴を持つ。これに対し、学界出身の国民党立法委員・柯志恩氏は「鄭英耀氏は政治に熱中し、南社の副社長を務めたこともある。国立大学の学長に就任できたのも、背後で陳菊氏が支えたからだ」と指摘している。

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