「日本の反送中第一人者」と呼ばれる社会運動家の平野雨龍氏が、東京都新宿で街頭演説中に中国人とみられる人物から妨害行為を受けたことが、日本と台湾の双方で議論を呼んでいる。演説中、平野氏は中指を立てられ、飲料をかけられ、ペットボトルを投げつけられたほか、マイクを奪われそうになるなどの被害に遭ったという。
こうした妨害にも屈せず活動を続ける平野氏は、現在、無所属で参議院選挙の東京選挙区に立候補しており、中国人移民に対する規制強化や、台湾・香港との関係深化を主要政策として掲げている。
「日本の反送中第一人者」とされる平野雨龍氏。新宿での街頭演説中に中国人から妨害を受け、日台で議論を呼んだ。現在は東京選挙区から無所属で参院選に立候補している最年少候補。(写真/黃信維撮影)
新宿での街頭活動妨害と波紋 2019年の香港支援が原点 香港民主化運動の支援やウイグル問題の啓発活動で知られる平野氏は、参院選終盤を迎える中、台湾メディア《風傳媒》の独占取材に応じた。2019年に初めて香港支援に関わった当時の思いや、日本社会の反応、街頭活動での経験、中国への姿勢、さらには今回の選挙で掲げる政策について率直に語った。
「日本の反送中第一人者」と呼ばれる平野雨龍氏。新宿での街頭演説中に中国人から妨害を受け、日台双方で注目を集めた。現在は東京選挙区から無所属で立候補し、中国人移民の規制強化を訴える最年少候補である。(写真/黃信維撮影) 2019年の香港支援を振り返り、平野氏は次のように述べた。
「2019年は初めて香港の運動を支援しました。そのとき日本国内の反応はどう感じたかというと、多くの方が当時は香港デモに関心を寄せていたと思います。ただ、それは2019年だけという印象です。2020年以降は香港への関心がまったくなくなってしまいました。大きく変わったのです。コロナの影響もあり、法律の影響もあり、国安法の影響もありました。ただ、日本国内への影響はかなり大きかったと思います。」
「自分の国は自分で守る」 同世代の香港人に受けた衝撃 「私と同世代、20代、私はそのとき25歳でしたが、同世代の香港人が故郷を守るために命がけで戦っていました。その姿に強い感銘を受けました。そして同時に、自分の国は自分で守らなければならないという思いがそこから生まれました。」
中国政府の圧力が国際的に強まるなか、日本社会はどのように対応すべきかと問われた平野氏は、日本政府に対し明確な態度を求めた。
「日本政府はウイグルジェノサイドを認定すべきだと思います。はい、今はまだ認定していません。ですが、日本政府はすぐにでもウイグルジェノサイドを認定すべきです。 」
ウイグル証言を漫画化し、無料配布 市民啓発の取り組み 「ウイグルに関しては、証言を漫画化し無料配布する活動を行っていました。ウイグルの証言者の話を漫画にしたものを小冊子にまとめて配布していました。台湾でも大きな話題になりました。クラウドファンディングで印刷代を集め、無料配布する活動を3年ほど続けています。今は選挙期間中なのでやっていませんが、ずっと続けていますし、これからも続けます。とても重要な活動だと思っています。」
新宿南口での演説中に中国人による妨害 SNS拡散で観光客が集まる事態に 新宿駅南口での街頭活動でも、中国人観光客による妨害が相次いでいるという。平野氏は次のように語った。
「新宿駅南口でもずっと一人で活動しています。去年11月からです。マイクを奪われそうになったり、液体をかけられたり、ポールを抜かれたり、汚い暴言を吐かれたりしました。中国人観光客がたくさん来ます。私が新宿駅南口で路上活動をしていることが微博やビリビリ動画で話題になっているので、中国人観光客がわざわざ新宿駅南口に来るのです。そして液体をかけてもすぐ帰国できるので、非常に質が悪いのです。」
「日本の反送中第一人者」とされる平野雨龍氏。新宿での街頭演説中に中国人から妨害を受け、日台で議論を呼んだ。現在は東京選挙区から無所属で参院選に立候補している最年少候補。(写真/黃信維撮影)
台湾からは温かい声援 メディア報道も多数 一方で、台湾からの支援も大きかったとし、平野氏は次のように振り返った。
「台湾の方もたくさん来ます。台湾の方は皆『加油』と声をかけてくれます。そのとき台湾のメディアやネットでも大きな話題になりました。台湾のメディアが何度も報じてくれました。私は昨年1月、賴清德総統のときに台湾へ行きました。」
香港への入境拒否に「当然」と冷静な受け止め 「現地を見る人間」であることにこだわり 香港への入境を拒否された経緯について、平野氏は「 香港への入境を拒否されたのは仕方がありません 」と冷静に語った。
「私が香港の民衆をずっと支持してきたので、香港に入れないのは当然です。しかし、私は現地を自分の目で見る人間です。台湾にも行きましたし、台湾の総統選も現地で見ました。韓国の改憲令の際もユンソンニョル大統領の動きを見に行きました。香港にも行きました。ウイグルにも行きたい、中国にも行きたいと思っています。現地を見る人間です。」
「ですから香港には入れなくなりましたが、これから国会議員になれば台湾との関係を強化したいと考えています。」
「日本の反送中第一人者」とされる平野雨龍氏。新宿での街頭演説中に中国人から妨害を受け、日台で議論を呼んだ。現在は東京選挙区から無所属で参院選に立候補している最年少候補。(写真/黃信維撮影)
「大和民族」としての使命感 アイデンティティの原点は「香港民族」 自身のアイデンティティと価値観について、平野氏は「私は 大和民族です 」と明言し、次のように語った。
「私のアイデンティティは大和民族です。だからこそ、この祖国のために命を懸ける、命を使うというのが大和民族としての役目だと私は思っています。私の価値観は香港人の『香港民族』という考えから来ました。多くの友人はアイデンティティを単なる香港人ではなく『香港民族』としています。独立派が多いのです。香港民族というアイデンティティを多くの人が持っています。だからこそ、私も大和民族というアイデンティティが強くなりました。」
「国のため、祖国のため、民族のために命を懸ける、命を使うというのが使命ではないかと考えています。香港民族というアイデンティティは昔はありませんでしたが、2019年に突然それを持つ人が増えました。ですから私は大和民族というアイデンティティを持つ人を増やしたいと思っています。そうならないと国は守れません。その意識を芽生えさせなければ国は守れないのです。一人ひとりが国を守らなければならない、私一人ではなく。」
「中国人規制」を柱とする6つの重点政策を掲げる 外国人問題を主要テーマに 平野雨龍氏は、今回の参議院選挙で掲げる政策について、「外国人問題は今回の選挙における極めて重要なテーマであり、その中心は中国人に対する規制です」と説明した。
これら6つのうち、大半が中国人を対象とした措置であり、「移民全体ではなく、中国人に対して入国規制を行い、帰化を厳格化し、土地取得を規制し、経営管理ビザでスパイ防止を図るべきです」と主張している。また、現在は国会議員に定年制度が存在しないことも問題視し、その導入を訴えている。
「日本の反送中第一人者」と呼ばれる平野雨龍氏は、新宿での街頭演説で中国人からの妨害を受け日本と台湾で話題となり、現在は東京選挙区から無所属で立候補し、中国人移民の規制強化を訴える最年少候補である。黃信維
「人口侵略」の懸念を強調 台湾との共通点も指摘 なぜ中国人を対象にした規制が必要なのかという問いに対して、平野氏は「 それは人口侵略の懸念があるからです 」と語った。
「中国は人口を使って他国への影響力を強めています。台湾の現状を見れば分かると思います。台湾も同様の問題に直面しており、同じ危機意識を共有しているはずです。中国人は台湾に大量に流入しており、日本も同様の状況にあります。」
具体的な数値としては、「今、在日中国人は84万人います。そして日本国籍を持つ中国人は16万人です。今年、日本にいる中国人がちょうど100万人を突破した年です」と指摘した。
「このままでは多数決で勝てなくなる。台湾でも同様に、多数決による政治的優位を失っています。議会で過半数を取れない状況が続いています。私は日本をそのような状態にはしたくないのです」と強い危機感を示した。
そのうえで、「今は5年住むだけで日本国籍が取れますが、それを変えなければなりません」と訴えた。
また、台湾・香港との関係については「今後さらに強化すべきである」と語り、「私自身、香港・台湾との個人的な関係をまず強化し、国会議員としても今後ずっと取り組む予定です」とした。
「この活動は1期だけで終わるものではありません。30年という長期的な視野で取り組む覚悟でいます」と述べ、継続的な政策遂行への強い意志を示した。
選挙戦は最終盤へ 新橋での街頭演説を予定 移民政策に関心集まる見込み 選挙戦が最終盤を迎える中、今後の活動予定について平野雨龍氏は「投票日までまだ少し時間があるので、最後のイベントも含めて積極的に発信していきたいと思います」と語った。
特に、移民政策に対して強く反対する姿勢を共有する河合議員との共演により、「移民反対の立場を持つ有権者が多く集まるのではないか」としている。
なお、最終日前日の土曜日の活動場所については「現時点ではまだ決まっていないので、それはSNSをチェックしていただければと思います」と述べ、有権者に最新情報の確認を呼びかけた。
和服モデルから社会運動家、そして政界へ 異色の経歴を持つ候補者 平野雨龍(ひらの・うりゅう)氏は1994年1月31日生まれ。和服モデル、舞台俳優、社会運動家として活動してきた異色の経歴を持つ。旧名は平野鈴子で、2021年に現在の名へ改名。日本国籍を保有している。
大学時代から茶道、華道、雅楽(龍笛)、和服の着付けを学び、銀座和服学院で講師を務める傍ら、2016年にはプロの和服モデルとしてデビュー。舞台では歴史を題材にした作品にも出演するなど、文化的素養に富んだ人物として知られている。
2019年には香港の反送中運動を支援し、「日本で最初に香港を支持した人物」として注目を集めた。その後も東京で定期的に香港支援デモを主催し、香港への入境を拒否されたことでも話題となった。
2022年に発生した安倍晋三元首相の銃撃事件を契機に、国政への関心を深め、「戦後最大の危機」にある日本を変えるべきだと訴え、現在は平成世代の最年少候補として参議院選挙(東京選挙区)に出馬している。