米、台湾有事に備え日豪に役割明確化を要求 「三方面作戦」回避へ優先戦略

2025-07-14 16:51
元米国防次官補代理のエルブリッジ・コルビー氏。(写真/簡恒宇撮影)
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世界各地で安全保障上の課題が山積する中、アメリカ国防総省の政策中枢にいるエルブリッジ・コルビー氏が注目を集めている。45歳の国防政策担当副次官である同氏は、米軍の兵器備蓄が逼迫していることを明らかにした機密覚書を作成。この文書が発端となり、アメリカ政府は一時的にウクライナへの一部軍事支援を中断する決定を下すに至った。

さらに、英『フィナンシャル・タイムズ』は、コルビー氏が日本とオーストラリアに対し、「台湾有事」に備えて事前に立場を明確にするよう求めていたと報じた。米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』によれば、こうした動きは、米軍の戦略的重心を中国への対抗にシフトさせようとするコルビー氏の方針と一致している。

優先主義を掲げる対中重視の戦略家

コルビー氏は、元CIA長官ウィリアム・コルビー氏の孫にあたり、父親が日本の投資銀行に勤めていた関係で、少年時代を日本で過ごした。ハーバード大学を卒業後、イェール大学ロースクールに進学し、バイデン政権下で副国家安全保障顧問を務めたジョン・ファイナー氏とは同室だったという。

現在は国防政策担当副次官として、「中国は米国にとって最も重要な戦略的競争相手」と位置づけ、軍事資源を過剰に他地域へ分散させるべきではないと主張している。6月初旬には、ピート・ヘグセス国防長官に宛てた覚書の中で、ウクライナが求める兵器と国防総省の在庫とのギャップを具体的に列挙。明確に軍事支援中断を求めたわけではないが、内容は一部兵器提供の再検討に用いられた。

コルビー氏は「優先主義者」として知られており、アジア以外の地域における米軍の関与を可能な限り抑え、西太平洋へのリソース集中によって中国の台頭に対応すべきだと訴えてきた。このスタンスは、各地での軍事介入を肯定する「伝統的タカ派」とは一線を画している。

トランプ政権の国防戦略の路線対立

その姿勢は、トランプ政権下でも議論を呼んだ。コルビー氏の兵器在庫に関する報告書は、ウクライナ支援をめぐる内部対立を引き起こし、当時のトランプ大統領は一時的に武器提供の停止を承認したものの、その後撤回。ゼレンスキー大統領には「自分は責任を負わない」と伝えたという。『ウォール・ストリート・ジャーナル』は、これは中東(イランやフーシ派)と欧州(ウクライナ)の二正面対応に苦しんだ政権の実態を象徴するエピソードだと分析している。

コルビー氏の支持者たちは、同氏が西太平洋における米軍の戦略的地位の向上に努めていると評価する一方で、実際には米国が中東や欧州で引き続き大きな負担を強いられていることも明らかになってきた。トランプ氏がホワイトハウスに復帰した直後、米軍は中東でフーシ派やイランに対して大規模な軍事行動を展開しながら、同時にウクライナ支援も継続していた。

元政権アドバイザーのダン・コールドウェル氏は、「コルビー氏は限られた軍事資源の中で、いかに米国が最も効果的な防衛体制を整えるかを深く考えている人物だ」と述べている。ただし、コルビー氏はウクライナ支援やアジア・欧州の防衛政策に関する取材依頼には応じていない。

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