夏珍コラム:国民による司法審判─柯文哲元台北市長の勾留は続くのか?

2025-07-11 15:39
民衆党の黄国昌主席が支持者を呼びかけ、北院外の分離帯で車に乗った柯文哲氏を支持する姿勢を示した。(写真/蔣帆威撮影)
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唯一無二の存在とされる元台北市長・柯文哲氏が、京華城事件を巡って勾留されてから10か月が経過し、検察にとっても極めて扱いにくい被告となっている。台北地方法院では現在、「京華城利益供与事件」の審理が進められており、3月と4月にそれぞれ2回の準備手続きが実施された。5月以降は証人の召喚と取り調べ映像の検証が集中的に行われている。勾留の延長期限は7月末に迫っており、次回の公判は7月15日に予定されている。勾留は来年4月まで延長が可能だが、その可否は未定であり、司法制度への信頼が揺らぐ中で、検察が築いてきた「司法の長城」はすでに大きく崩れているとの見方もある。

京華城事件の構図と法廷の攻防

事件の関係者である柯氏は、卓越した記憶力と強い意志で知られている。通常、起訴された被告は目立つことを避け、審理中に怒りを買わないよう努めるものだが、柯氏はその常識に当てはまらない。多くの場合、罪を認めて交渉を進め、執行猶予や釈放を得るケースが一般的で、これは検察が慣れてきた捜査の常套手段でもある。たとえば、議員の秘書費詐取事件では罪を認める関係者が相次ぎ、同様に台北市副市長も保証釈放を選んだが、その結果、妻が精神的負担に耐えきれず自死するという痛ましい出来事もあった。

勾留から10か月のうち前半は、柯氏にとって特に厳しい状況だった。検察による「鏡検」報告は毎週行われ、捜査や起訴状の内容は次々に外部へと漏洩していた。起訴を正当化するため、京華城事件とは無関係な政治献金や、柯氏のUSBに保存されていた女性の写真といった私的な内容までもが報道対象となった。だが柯氏は、自身のイメージが損なわれることを承知の上で否認を貫き、むしろ北院での審理を通して検察との対決の場と位置づけた。民衆党もこれに歩調を合わせ、徹底抗戦の構えを崩していない。開廷のたびに注目が集まり、実際の陪審員制度は存在しないにもかかわらず、全国民が見守る「もう一つの法廷中継」のような様相を呈している。審理の焦点は柯氏だけでなく、検察や弁護側の振る舞いそのものにも向けられている。

過去2か月にわたる法廷でのやり取りでは、検察側が優勢に立っていたが、核心である「1500万の資金の移動」に関しては、今なお明確な証拠が示されていない。この点は検察の大きな弱点であり、「贈賄・利益供与」事件としての成立に大きな疑問を残す。さらに問題なのは、検察が関係者に対して贈収賄を示唆しながら、長時間の取り調べで自身の見解を調書へと反映させようとした点だ。その手法は公正性に欠けるとして批判も多く、今後の審理での争点となる可能性がある。 (関連記事: 元台北市長・柯文哲氏に再起の兆し?京華城案めぐる審理と2028年出馬の可能性 関連記事をもっと読む

10か月の拘束──特定の「1500万」の行方は依然不明

こうしたなか、検察は「有力な理由」に基づいて柯氏の勾留を続けるため、大量の証人を並べ、法廷は12月初旬まで審理日程を確保する事態となっている。しかし、柯氏と対立関係にある前市発局長や前台北市副市長でさえ、決定的に不利な証言を提供するには至っていない。むしろ柯氏は、高雄市や台南市における類似の容積率奨励事例を持ち出し、京華城案件が都市計画法に準じた合法的な手続きを経ていたことを主張している。