台湾・台北市元副市長だった彭振声氏は、京城事件の再審で7月1日に法廷に出廷し、捜査録音の検証に臨む予定だった。しかし開廷直前、妻の謝夏蕎氏が転落死したという知らせを受け、法廷で衝撃を受けて号泣した。彭氏はこれまでに、拘留期間中に妻がうつ病を患っていたことを明かしており、この日も涙ながらに「もう生きていたくない、私は無実だ」と訴えた。
2度にわたって姿を見せた妻の支援
謝氏はふだん公の場に姿を現さない人物だったが、彭氏が捜査を受けていた期間中、2度にわたり法廷に現れた。2024年8月には証人として出廷し、同年末には弁護士と共に台北地裁に赴き、彭氏の保釈金として500万元(約2,500万円)を自ら支払った。また、拘留中の彭氏が診療を受けていた病院に薬を届けるなど、陰ながら夫を支えていた。その努力もむなしく悲劇的な最期を迎えたことで、関係者の間に深い悲しみと衝撃が広がっている。
自白は妻を安心させるためか?
《中天ニュースチャンネル》の報道によると、彭氏は捜査段階で早期に自白した理由として、「妻に安心してもらいたかった」と語っている。事件の数日前には、妻に「最悪でも3年の服役で済む」と話していたが、直後に謝氏の転落死が発生した。
また、柯文哲氏の弁護団は彭氏の自白が検察による誘導だった可能性を指摘しており、捜査の過程に「空白の2時間」があると主張している。彭氏自身はそのうちの1時間を「食事と服薬の時間」、もう1時間を「弁護士が席を外していた時間」だったと説明。検察側は違法捜査を否定し、「前任者のような轍を踏むなと警告しただけ」としているが、自白の信憑性に対する疑念はくすぶり続けている。
事件はどこへ向かうのか
彭氏は台北市副市長および都市計画協議会の委員長を務めていた当時、威京グループに便宜を図り、容積率の操作で利益を与えたとして起訴された。起訴後すぐに自白したことが突破口となり、柯文哲氏らが捜査の対象へと広がった。
当初予定されていた、昨年9月に行われた彭氏の捜査録音の検証は、謝氏の訃報により延期された。事件の今後の進展には新たな不確定要素が加わり、法廷の行方に注目が集まっている。
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