評論:米政府がTSMCへの中国工場例外措置を撤回へ 供給網・対中関係に波紋

2025-07-01 12:35
台韓のチップメーカーの中国工場の運命は「米国の手中に握られる」のか?米国による全面免除権の撤回の影響は大きい。(イメージ図/pexelsより)
台韓のチップメーカーの中国工場の運命は「米国の手中に握られる」のか?米国による全面免除権の撤回の影響は大きい。(イメージ図/pexelsより)

米国政府が、台湾積体電路製造(TSMC)などの半導体大手に対し、中国での半導体製造に関してこれまで認めていた例外措置を撤廃する方針であると、海外メディアが報じた。一部の報道では「影響は限定的」との見方も示されているが、この判断は当該措置がもたらす影響を過小評価している可能性がある。

米国メディアによると、米商務省で輸出管理を所管するジェフリー・ケスラー副長官は6月下旬、TSMC、サムスン電子、SKハイニックスの3社に対し、米国技術を用いた中国国内での製造に対する例外措置を撤回する方針を通達したという。早ければ今後数カ月以内にも実施される見通しである。アナリストの中には、韓国企業への影響は大きい一方で、TSMCは中国において先端製造プロセスを展開しておらず、影響は限定的であるとの見方もある。

現時点でこの政策は正式に発表されておらず、実際に実施されるかどうかは今後の動向を見守る必要がある。しかし、仮に正式に発表・実施された場合、産業や企業への個別の影響はさておき、米中間の不安定で脆弱な関係に対しては、確実に大きな打撃となる。

過去にも、米中間の関税交渉においては、ジュネーブでの合意後も関係改善には至らず、むしろ一層の緊張を招いた。米国が合意後に、ファーウェイのAIチップに対する第三国の使用禁止や、米国のEDA企業による中国向けサービスの提供禁止といった新たな制裁措置を講じたことが原因である。これに対し中国は、レアアースの輸出制限という対抗措置を採り、その後に行われたロンドン会談によって、ようやく一時的に対立が沈静化した経緯がある。

こうした背景を踏まえると、米国がこのタイミングで台湾・韓国の半導体大手に対し、中国国内での製造活動に制限を課し、米企業のサービス提供を禁じるとなれば、たとえ具体的な制裁対象や範囲が不明であっても、新たな制限の導入そのものが「停戦合意の破棄」と受け取られかねない。実施時点で米中間に正式な合意が存在するか否かにかかわらず、両国を再び報復と対立の連鎖に引き戻す可能性が高い。

産業および企業への影響も避けられない。韓国のサムスン電子およびSKハイニックスは、中国国内でのメモリー生産比率が高く、たとえばサムスンはNAND型フラッシュメモリの約20〜30%、DRAMの約40〜50%を中国で生産している。SKハイニックスも無錫工場で全体の約40%のDRAMを生産しており、両社は世界のメモリー市場を支える主要企業である。仮に米国が例外措置を撤廃し、生産の縮小や将来的な技術更新が困難となれば、供給不足や価格高騰が発生するのは避けられない。TSMCは中国における生産比率が低く、かつ成熟プロセスに限定されているものの、新たな制限の影響を受ければ、同様に業界全体にとって負の影響を及ぼすことは明らかである。 (関連記事: 中国がレアアース禁輸緩和「譲歩ではない」と専門家が警告 台湾の交渉カードは? 関連記事をもっと読む

台湾および韓国の半導体大手が中国で生産を続けられる例外措置は、バイデン政権が中国に対して先端半導体製造技術の輸出制限を導入した際、台韓両国からの反発を抑え、自国企業への影響を最小限にとどめる目的で設けられたものである。この特例により、台湾・韓国の半導体企業は中国国内での既存生産および設備のアップグレードを制限されることなく続けることが可能となっていた。

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