米中関係が大きな転換点を迎えようとしている。『日経アジア』が6月28日に報じたところによると、米国政府はトランプ大統領が年内に代表団を率いて北京を訪問する計画を進めており、政府高官に加え、複数の米大手企業のCEOが随行する予定だという。この訪中は、米国の対中政策が「極限的な圧力」から「管理されたリスク軽減」へと転換することを示唆しており、重要な外交シグナルとして注目されている。
トランプ氏は27日に中国との貿易協定の署名を発表したが、具体的な内容には触れていない。しかし『日経アジア』は、訪中が実現すれば、ワシントンの対中姿勢が脅しから交渉重視へと変化する象徴的な動きとなると分析している。長年にわたる関税戦争と技術面での対立を経て、米中はより建設的な対話の模索を始めたようだ。訪中は、こうした新たな枠組みを築くための出発点になる可能性がある。
中東モデルを踏襲?豪華CEO団の顔ぶれにも注目
今回の訪中は、トランプ氏が5月に行った中東訪問をモデルにしているとされる。当時、テスラのイーロン・マスク氏、ブラックストーンのスティーブン・シュワルツマン氏、ブラックロックのラリー・フィンク氏、OpenAIのサム・アルトマン氏、エヌビディアのジェンスン・フアン氏、アマゾンのアンディ・ジャシー氏ら、30人超の企業トップがサウジアラビアを訪問し、最終的には2兆ドル(約318兆円)を超える取引がまとまった。
もし今回の訪中が実現すれば、同様に華やかなCEO団の陣容が予想され、米国ビジネス界が依然として中国市場を重視していることを内外に示す場となる。経済を通じた外交再構築を狙った動きとみられる。
レアアースと半導体 米中が「補足合意」へ
貿易協定署名の翌日となる6月28日、中国商務省の報道官は、レアアースの輸出と米国の輸出制限措置をめぐって、両国が「補足合意」に達したと明らかにした。中国側は、「条件を満たした輸出申請については法に基づいて審査を行う」とし、これに対して米国側は、AIや半導体などに対する一部の輸出規制を撤回する姿勢を見せている。これらはバイデン政権下で導入された厳格な措置とされており、今回の合意は双方にとって大きな譲歩だといえる。
この合意に至るまでには、数か月にわたる緊張した交渉があった。トランプ政権が仕掛けた関税戦争では、米国の対中関税が一時145%にまで達し、その後、米国財務長官のスコット・ベッセント氏と中国の何立峰副総理がスイス・ジュネーブで会談。両者は90日間の「関税休戦」に合意した。
こうした一連の動きは、トランプ政権内部での対中政策をめぐる権力闘争も浮き彫りにしている。情報筋によれば、中国との「華麗で壮大な再均衡」を模索するベッセント財務長官と、対中強硬派として知られるルビオ国務長官との間には深刻な意見の対立があるという。
現実主義派が優勢に?習主席も電話会談で応答
今年5月28日にベッセント氏と何副総理の会談が行われた直後、ルビオ氏は中国人留学生へのビザを大量に取り消す新政策を発表し、米中間の緊張が一時的に高まった。これを受け、中国の習近平国家主席は6月5日にトランプ氏と電話で会談し、「米中関係という巨大な船の進路を正しく組み立て、干渉や破壊行為を排除する必要がある」と述べた。この発言は、ルビオ氏の政策に対する反発とみられる。
現在、訪中計画の進展や貿易協定の成立を背景に、現実主義を掲げるベッセント氏の立場が政権内で優勢となっている。ベッセント氏は6月12日の上院公聴会で「中国は消費主導型、米国は生産主導型の経済を目指している。真摯な協力を通じてこそ、米中は再均衡を実現し、世界経済をより持続可能な方向へ導ける」と語った。
トランプ政権が対中政策の大転換を試みるなか、その鍵を握るのは、現実路線を進める財務省チームと、従来の強硬姿勢を貫こうとする国務省チームとのせめぎ合いだ。再び訪中が実現すれば、その動向は世界的な関心を集めることになりそうだ。
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