フェイスブックの創設者であり、MetaのCEOであるマーク・ザッカーバーグは、人工知能(AI)分野への進出で強い野心を示している。この新興分野では、Metaはマイクロソフト(Microsoft)やグーグル(Google)に比べて大きく遅れを取っているが、ザッカーバーグは最も直接的で「最も効率的」な手段、すなわち多額の資金を投入し、新興企業の買収やOpenAIを含む経験豊富なスタッフを高額で引き抜くことで、MetaをAI分野で急速に追い上げさせている。
143億ドルを投じてAI新興企業Scale AIを買収し、その創業者である汪滔とチームメンバーをMetaに取り込んだ後、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の報道によれば、ザッカーバーグはさらに資金を投入し、OpenAIから3名のベテラン研究者を「スーパーインテリジェンス」チームに引き抜いた。この三人、ルーカス・ベイヤー、アレクサンダー・コレスニコフ、翟曉華は、OpenAIのスイス・チューリッヒオフィスのメンバーだったとされる。
Scoop: Meta has poached three OpenAI researchers: Lucas Beyer, Alexander Kolesnikov and Xiaohua Zhai, according to people familiar with the matter.
— Meghan Bobrowsky (@MeghanBobrowsky)June 26, 2025
An OpenAI spox confirmed the three have left the company.pic.twitter.com/TeoZa2VryZ
実際、OpenAIの従業員引き抜きに関する噂は、数日前にCEOのサム・アルトマンが公開しており、Metaが驚くべき条件で従業員を引き抜こうとしたとのこと。その内容には、契約ボーナスが1億ドルにも上るという話が含まれていた。新たな情報が公にされ1週間が経つ中、OpenAIのスポークスパーソンは、3名の退職を確認し、Meta側からは即座にコメントはされなかった。
興味深いことに、AI分野では、Metaは他のシリコンバレーの競合に比べて劣るものの、一時期はオープンソースのAIモデル分野でトップと見られていた。しかし、内部の人材流出や新モデルの公開の遅れにより、ザッカーバーグの望む栄光は、OpenAIや中国のDeepSeekに奪われてしまっている。

ザッカーバーグが最近の一連の行動で市場の注目を受ける中、Metaは専門家チームの再編成を通じて、AI領域での劣勢を払拭しようとしているようだ。また、ザッカーバーグ自身は「汎用人工知能(AGI)」に特化したトップチームを結成し、技術的なリーダーシップを取り戻すことを目指している。ChatGPTを生み出したアルトマンは、「Metaは我々を最大の競争相手と見ているらしい」としている。
これまでのザッカーバーグの投資行動を振り返れば、InstagramやWhatsAppの事例のように、大きな圧力や競争を感じた際には、莫大な資金を投入している。
アナリストのギル・ルリアは冗談交じりに、今のザッカーバーグは創業者モードに入っており、誰も彼を止めることはできないと述べている。「AI分野で成功するには、Metaはこの新しいチームに頼るしかない」として、Metaが急いで人材を集め、チームを再建しているのはそのためだとしている。

MetaがAI進出を拡大する理由は、AIを社内のすべての業務に統合することを狙っているためである。オンライン広告セクター、Instagramのアルゴリズム、メタバース構築に至るまで、さらに進化したAIモデルと技術により、広告の効果を高め、コストを大幅に削減することが期待されており、既存の業務にも良い影響を与える見込みだ。
これだけの資金を投入しているにもかかわらず、ウォール街の多くのアナリストはなお、ザッカーバーグに期待を寄せている。現在のMetaの株価は682.35ドルで、Argus Researchは今週、Metaの株を「買い推奨」とし、目標価格を725ドルから790ドルに引き上げた。
編集:佐野華美
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