米シンクタンクが分析「中国は短期的な台湾侵攻には慎重」 警戒すべき「3つの兆候」とは?

2025-06-27 12:26
中国国家主席 習近平。(AP通信)
中国国家主席 習近平。(AP通信)

中国による台湾への軍事的圧力が続く中、台湾海峡情勢への国際的な関心が高まっている。米国の有力シンクタンク「スティムソン・センター(The Stimson Center)」の専門家は6月27日、北京当局が政治戦や威圧といった手段を通じて統一を進めようとしているとした上で、現在の政治・経済・軍事情勢を踏まえると「中国が短期的に大規模な台湾侵攻に踏み切る可能性は低い」との見方を示した。

「全面侵攻の可能性は低い」米シンクタンクが現実的分析

同センターが開催した「台湾侵攻の現実(The Realities of an Invasion of Taiwan)」と題する座談会では、上級研究員のダン・グラジア氏、研究員のジェームズ・シーベンス氏、副研究員のマッケンナ・ローリンズ氏が登壇し、中国による台湾侵攻に関する戦略的・政治的・経済的・軍事的な観点からの分析を行った。

中国はこれまでも大規模な軍事演習や戦闘機・艦艇による台湾周辺での活動を繰り返しており、米国防総省も中国の軍事的拡張と台湾侵攻シナリオに警戒感を強めている。

しかし、台湾への現地調査などを踏まえたグラジア氏らの分析によれば、「台湾への本格的な上陸作戦は極めて複雑な軍事行動」であり、中国にとっては核エスカレーションのリスク、政治的不安定化、経済的損失、軍事的泥沼化など多大な代償を伴うとして「成功の可能性は極めて低い」と結論づけた。

武力行使の前兆? 専門家が警告する「3つのサイン」

グラジア氏は「中国にとって台湾侵攻のリスクは、得られる利益を大きく上回る」と指摘した。一方、シーベンス氏は「中国には他にも複数の軍事的オプションがある」とし、特に「封鎖戦術」など、比較的実行しやすく効果的な手段に傾く可能性があると述べた。

また、中国が政治戦や経済的威圧を通じて事実上の統一を目指している現状に言及し、「米国が台湾を支援するには、北京が現在実際に行っているこうした圧力にどう対応するかが重要であり、大規模な軍事侵攻ばかりに焦点を当てるべきではない」と警告。

仮に中国が本格的な軍事侵攻に踏み切る意思を固めた場合、以下の「前兆」が現れる可能性があると指摘した:

●台湾の防衛力を意図的に削ぐ行動
●離島の制圧・奪取
●威圧的行為の段階的なエスカレーション

海上封鎖の可能性とその国際的影響

記者団から「中国が台湾に海上封鎖を行った場合、米国はどう対応すべきか」と問われたシーベンス氏は、「中国は既に封鎖を実行する能力を整えつつあるが、実際に行うかどうかは“条件付きの意思”によるものだ」と分析。

その上で「米国および台湾との経済的関係を持つ他国は、自国の利益と台湾との経済連携がいかに重要かを強く主張すべきだ」と述べた。

特に米国は、半導体などのハイテク分野を中心に台湾との経済的依存度が高く、他国も同様の構造を持っている。シーベンス氏は「中国が台湾に海上封鎖を行えば、それは台湾に対する侵略行為にとどまらず、台湾と関係を持つすべての国に対する攻撃とみなされるべきだ」と強調した。

台湾ニュースをもっと深く⇒風傳媒日本語版X:@stormmedia_jp

最新ニュース
戦果か誇張か──イラン核施設攻撃を巡るCIAと軍の深い溝
相互関税の「猶予期限」7月9日迫る トランプ政権の決断に各国が注目
台湾のIMF加盟を阻むのは「金融の実力」ではなく「政治の壁」──元FRB幹部が語る3つのメリット
トランプ氏「米・イラン会談」予告 和平交渉は前進か、イスラエルは警戒感強める
台湾との連携に新局面 「宰相の郷」出身、東京海上元会長・隅修三氏が交流協会トップに就任
米国に激震!イラン最高指導者「核施設無傷」と反論、FBIが情報漏洩の出所調査
評論:賴清徳総統の「不純物を取り除く」発言に波紋 講演要旨から削除、政権の本音か
「台湾を孤立させない」 小林鷹之氏が訪台、賴清徳総統の言葉に強く共鳴
台湾・群創光電がパイオニアを完全買収 1636億円で全株取得、米上場も視野に
驚きの発言!馬英九氏が中国訪問で両岸の「平和的民主統一」を主張
NVIDIA、3.77兆ドル突破で世界首位に! 黄仁勲、数十億のロボット出現を予告
信じられない!アラスカ航空「ドア脱落」原因が明らかに:ボーイング737 MAX出荷時のボルト固定忘れ
台湾有事は日本有事──小林鷹之議員が台北訪問、顧国防部長と印太戦略を協議
評論:中国籍配偶者の「除籍証明」、民進党の新たな資金源か?
呉典蓉コラム》「不純物を排除」――頼清徳総統が語った「団結」が生む分断
密会テープと黒い手提げ袋――台湾政界を揺るがす汚職劇の舞台裏
米軍B-2爆撃機、36時間の極秘作戦に中ロ沈黙 専門家「米軍行動に2つの不可解な点」
台湾・頼清徳総統が「不純物は排除すべき」発言 郭正亮氏「習近平より危険」と強く批判
舞台裏》「台湾侵攻は6分で終わる」?机上演習で露呈した「致命的盲点」と防衛の限界
Xpark五周年、台日が共創する未来型水族館 ESG軸に「新たな感動・無限」ビジョン始動
トランプ氏、軍をロサンゼルスに派遣 60日間の駐留命令に批判と波紋広がる
陸文浩の視点:中国空母2隻が台湾に接近──「山東」は英国空母の南シナ海入りに備える
ベトナム、汚職や収賄の死刑を廃止へ 数千億円横領の女富豪・チュオン被告に減刑の可能性も
核戦争が起きたらどこへ逃げる?専門家が「最も安全」と語る国は日本から10時間の距離
名探偵コナンが「ペーパーシャドーアート ミニ」に登場 コナン・灰原・安室・キッドの4種、7月発売へ
富士山・大阪・浅草がミニチュアに エンスカイ「ペーパーシアター」新作を発売
ヨックモック、夏季限定「ドゥーブル ジュレ」発売 定番クッキーとの詰め合わせも展開
2027年の台湾侵攻は当面見送りか?米中の戦略再編の中で中国が演じる「平和の担い手」
コメ不足の背景に何が?郭正亮氏が分析する5つの要因と米国の不満
台湾・賴総統「反共しない者は中華民国派ではない」 「団結国家」第二講で強調
台湾で手搖飲ブーム加速 セブンが旗艦店、ファミマは「最大の24時間ドリンク店」に進化中
論評:賴清德の「団結」、恐怖を感じさせる
TOKIO、31年の活動に幕 国分太一の活動休止を受け解散を発表
イラン、米国への報復でカタールにミサイル奇襲! ウデイド空軍基地の重要性と、中東における米軍基地の実態とは?
イランはなぜ核開発をやめないのか?――自主独立という国家の誇りと代償
イスラエルとイランは本当に停戦したのか 核施設攻撃とトランプ激怒の真相
「リコールも民主の一部」賴清德総統が語る、団結と主権を守る台湾の選択
イラン核施設空爆後の停戦合意 中東の脅威は本当に終わったのか?
「今こそ台湾文化の出番!」日台文化交流に追い風、映画・音楽・舞台が続々日本へ
「40時間フライト」の極限任務──B-2爆撃機パイロットの過酷な現実とは?
日英伊、第6世代戦闘機を共同開発へ 米依存から脱却なるか、GCAP計画が始動
「両岸は互いに隷属しない」賴清徳総統が緩和メッセージを修正?副総統の「現状維持」と「憲法擁護」発言との温度差が波紋
日本初上陸のフェアモント東京、内覧会開催 東京湾を一望できる極上のホスピタリティ
台湾有事、日本は介入するのか?日台対話で示された「2つの前提」とは
昨年のフジロックがテレビ放送決定 7月5日には恒例の「ボードウォーク・キャンプ」も開催
SixTONESがサマソニ出演決定!KickFlip・紫今・PUSHIMなど「SUMMER SONIC 2025」追加ラインナップ発表
台湾・張仁久氏が台日関係協会の新秘書長に就任 小林鷹之議員や水鳥真美氏の訪台も明らかに
台湾、公共交通の「博愛座」名称を変更へ 制度見直しで「道徳的強制」に終止符
仮想通貨界に激震!史上最大10億ドルのビットコイン統合へ 次のブルマーケットは目前か?
大谷翔平の愛犬・デコピンが「遊戯王」カードに!ファン大興奮のレアコラボ