中国による台湾への軍事的圧力が続く中、台湾海峡情勢への国際的な関心が高まっている。米国の有力シンクタンク「スティムソン・センター(The Stimson Center)」の専門家は6月27日、北京当局が政治戦や威圧といった手段を通じて統一を進めようとしているとした上で、現在の政治・経済・軍事情勢を踏まえると「中国が短期的に大規模な台湾侵攻に踏み切る可能性は低い」との見方を示した。
「全面侵攻の可能性は低い」米シンクタンクが現実的分析
同センターが開催した「台湾侵攻の現実(The Realities of an Invasion of Taiwan)」と題する座談会では、上級研究員のダン・グラジア氏、研究員のジェームズ・シーベンス氏、副研究員のマッケンナ・ローリンズ氏が登壇し、中国による台湾侵攻に関する戦略的・政治的・経済的・軍事的な観点からの分析を行った。
中国はこれまでも大規模な軍事演習や戦闘機・艦艇による台湾周辺での活動を繰り返しており、米国防総省も中国の軍事的拡張と台湾侵攻シナリオに警戒感を強めている。
しかし、台湾への現地調査などを踏まえたグラジア氏らの分析によれば、「台湾への本格的な上陸作戦は極めて複雑な軍事行動」であり、中国にとっては核エスカレーションのリスク、政治的不安定化、経済的損失、軍事的泥沼化など多大な代償を伴うとして「成功の可能性は極めて低い」と結論づけた。
武力行使の前兆? 専門家が警告する「3つのサイン」
グラジア氏は「中国にとって台湾侵攻のリスクは、得られる利益を大きく上回る」と指摘した。一方、シーベンス氏は「中国には他にも複数の軍事的オプションがある」とし、特に「封鎖戦術」など、比較的実行しやすく効果的な手段に傾く可能性があると述べた。
また、中国が政治戦や経済的威圧を通じて事実上の統一を目指している現状に言及し、「米国が台湾を支援するには、北京が現在実際に行っているこうした圧力にどう対応するかが重要であり、大規模な軍事侵攻ばかりに焦点を当てるべきではない」と警告。
仮に中国が本格的な軍事侵攻に踏み切る意思を固めた場合、以下の「前兆」が現れる可能性があると指摘した:
●台湾の防衛力を意図的に削ぐ行動
●離島の制圧・奪取
●威圧的行為の段階的なエスカレーション
海上封鎖の可能性とその国際的影響
記者団から「中国が台湾に海上封鎖を行った場合、米国はどう対応すべきか」と問われたシーベンス氏は、「中国は既に封鎖を実行する能力を整えつつあるが、実際に行うかどうかは“条件付きの意思”によるものだ」と分析。
その上で「米国および台湾との経済的関係を持つ他国は、自国の利益と台湾との経済連携がいかに重要かを強く主張すべきだ」と述べた。
特に米国は、半導体などのハイテク分野を中心に台湾との経済的依存度が高く、他国も同様の構造を持っている。シーベンス氏は「中国が台湾に海上封鎖を行えば、それは台湾に対する侵略行為にとどまらず、台湾と関係を持つすべての国に対する攻撃とみなされるべきだ」と強調した。
編集:梅木奈実 (関連記事: 2027年の台湾侵攻は当面見送りか?米中の戦略再編の中で中国が演じる「平和の担い手」 | 関連記事をもっと読む )
台湾ニュースをもっと深く⇒風傳媒日本語版X:@stormmedia_jp