評論:中国籍配偶者の「除籍証明」、民進党の新たな資金源か?

2025-06-26 15:23
台湾に在住する中国籍配偶者の「除籍証明」手続きが最終段階に入り、6月末が最終期限となる。すでに台湾の身分を取得した1万2000人の中国籍配偶者のうち、7600人が手続きを完了しているものの、なお4400人が証明書を未提出であり、その場合、台湾の身分が抹消される恐れがある。(写真/顏麟宇撮影)
台湾に在住する中国籍配偶者の「除籍証明」手続きが最終段階に入り、6月末が最終期限となる。すでに台湾の身分を取得した1万2000人の中国籍配偶者のうち、7600人が手続きを完了しているものの、なお4400人が証明書を未提出であり、その場合、台湾の身分が抹消される恐れがある。(写真/顏麟宇撮影)
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人生の現実はドラマよりも奇妙である。台湾に住む中国籍配偶者に対し、「除籍証明」の提出を求める政策が波紋を広げている。6月末を期限として、約1万2千人の対象者のうち、7600人はすでに手続きを済ませたが、残る約4400人は未提出のままだ。このまま提出しなければ、台湾籍を失う可能性がある。多くの当事者が混乱と不安にさらされるなか、陸委会の対応は人権や倫理に反し、憲法上の問題に発展しかねないと指摘されている。

普通法が特殊法を凌駕? 政策変更の裏で揺らぐ法秩序

問題の発端は、選挙期間中に無所属で出馬した徐春鶯氏の存在だった。邱太三氏が主導した陸委会は、突如『国籍法』における「国籍放棄」規定を前面に押し出し、それまで適用されてきた『両岸人民関係条例』の規定を覆した。元法務部長である邱氏が、「普通法が特殊法に優先する」と平然と語ったことに法曹界も驚きを隠せなかった。

同様の影響は、南投県の議員・史雪燕氏にも及んだ。彼女は中国籍配偶であり、陸委会が議会に送った文書をきっかけに議員資格を失い、現在も行政訴訟を継続している。さらに、陸委会は「居住証」と「定居証」の区別や法解釈を明確に示すことができず、政策変更が相次いだことで混乱が広がっている。

20250102-国民党立法委員の翁曉玲(左)と游顥(右)が、前南投県の議員である史雪燕(中央)と共に記者会見を開いた。民進党が大陸配偶者30万人の参政権を奪ったことを非難。(顏麟宇撮影)
2025年1月2日、国民党の翁曉玲立法委員(左)と游顥立法委員(右)が、元南投県議会議員の史雪燕氏(中央)と共に記者会見を開き、民進党が約30万人の中国配偶者から参政権を奪ったと非難した。(写真/顏麟宇撮影)

過去には「居住証」の取得が台湾籍の喪失につながるとされていたが、現在では「定居証」を取得して観察期間を経た場合にのみ、台湾籍が失われるという解釈に変わっている。

過去の法律が遡及される

福建華僑大学の教員である張立齊氏は、昨年1月に中国の定居証を取得したことにより、台湾の身分証とパスポートを取り消された。当時は合法とされた手続きが、2025年の法解釈変更によって違法とされた形だ。さらに、旅行業者が業務上取得した「中国辺境通行証」も、突然身分喪失の原因とされる事例が明らかになった。

大陸で「台籍教師の張立齊」が定居証を取得したことで、陸委会により台湾身分を取り消された最初のケースである。(取自央視網)
中国で「台湾籍教師の張立齊」が定住許可証を取得したことで、陸委会により台湾の身分を取り消された初のケースとなった。(CCTV.com提供)

また、中国出身の人気ブロガー「亞亞」氏が、滞在中に武力統一を支持する発言をしたとされ、居留許可を取り消された事件を契機に、当局は中国出身配偶者および新住民二世に対して、3か月以内に「原籍喪失証明書」の提出を求める通達を出した。応じなければ、台湾籍を取り消すと警告している。

故郷の身分が罪になる

20年以上台湾で暮らしてきた多くの中国籍配偶者が、突然「故郷の身分」を理由に身分を奪われる事態に直面している。制度は「除籍証明」という一枚の紙を盾に、彼らを「罪の温床」とみなし、社会から排除しようとしている。

このような対応は、中国出身配偶者を民進党の対抗勢力へと追いやる結果を生みつつある。かつて民進党を支持していた新住民たちの間でも、「人種差別的でナチス的」との受け止めが広がっている。皮肉なことに、昨年成立した「新住民基本法」では、「どの国から来ても、台湾に住む者は住民である」と明記されている。それにもかかわらず、陸委会と移民署の対応は、その理念を裏切るものとなっている。

20250622-総統頼清徳が参加した「団結国家十講」の第一講。(劉偉宏撮影)
頼清徳総統が参加した「国家の団結」の第一講。(写真/劉偉宏撮影)

「抗中」の政治扇動が国際的批判を招く危機

民進党は「抗中」をスローガンに、リコール運動を勢いづけているが、その一環として「中国出身配偶者(陸配)」を中国と台湾の対立の中で「内応者」とみなすような視線を強めている。人権や倫理に反する措置は、国際社会からの批判を招くリスクを孕んでいる。

中国古代の故事にあるように、「秦を滅ぼす者は胡人なり」との予言に従い、始皇帝が万里の長城を築いたが、実際に秦を滅ぼしたのは内部の胡亥であった。今日の民進党が陸配を排除しようとする構図も、自己矛盾と内部腐敗に根ざした「中飽私囊」(権力を利用して私腹を肥やすこと)と「外強中乾」(外見は強固に見えても内実は脆弱であること)が原因となるのではないか、という懸念の声が上がっている。

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編集:田中佳奈 

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