中国人配偶者に迫る「身分の選択」——台湾か中国か、二者択一の現実

2025-06-21 14:10
海峡交流基金会の羅文嘉副董事長兼秘書長が、6月20日に記者会見を開いた。(写真/楊騰凱撮影)

台湾の陸委会と内政部移民署は、約1万2千人の大陸配偶者に対し、「除籍証明」の提出を求めている。この対応について、海基会副董事長兼秘書長の羅文嘉氏は20日、改めて説明を行った。羅氏は、「中華民国」または「中華人民共和国」のいずれかの国民として選択する権利は個人にあるとした上で、「同時に2つの国を選ぶことはできない」と強調した。

台湾の法制度によれば、中国人配偶者が台湾の身分証を申請するには、台湾で6年間の定住を経たうえで、中国大陸の戸籍を放棄することが条件とされている。現在、台湾に居住する中国人配偶者は約36万人、そのうち14万人がすでに台湾の身分証を取得している。陸委会の昨年の調査では、台湾の身分証を持ちながらも、中国の戸籍を喪失したことを示す証明を提出していない人が約1万2千人に上ることが判明した。これを受けて当局は、該当者に対して原籍喪失証明の追加提出を求めている。

移民署は同日、最新の進捗状況を公表した。それによると、これまでに約5千人が証明書を提出済みで、さらに800人が具結申請や手続き延長を行っているという。一方で、約6千人が証明を提出しておらず、具結申請や延長申請も行っていない実態が明らかになった。

羅氏はこの日午後、海基会によるニュース背景説明会を主催した。会見の中で羅氏は、「中華民国台湾に長期的に居住したいと希望することは、必ずしも中華民国公民になることを意味しない」とした上で、海基会としては既存の居住権に関する支援を行い、公民取得までの法的な障壁についても対応を進める方針を示した。

また、台湾の国籍を放棄し、中華人民共和国を選択する中国人配偶者も一部に存在すると指摘。現在の両岸関係の下では、「中華民国」と「中華人民共和国」の双方の法制度において、2つの国籍を同時に持つことは認められていないと説明した。羅氏は「いずれの法律でも二重国籍は基本的に許容されておらず、2国のパスポートを持つこともできない」と述べた。その一方で、「どちらの国の国民、公民になるかは個人の意思に基づき選択できる」との認識を示した。

編集:田中佳奈