かつて台湾・南投県議会議員を務めた史雪燕氏は、台湾で初めて中国出身の配偶者として議員に選出された人物だ。しかし退任から2年が経った後、内政部は彼女が中国の「国籍」を放棄していなかったことを理由に、議員としての資格を取り消した。偏見に向き合って
史氏は『風傳媒』のインタビューで、「私は台湾人の嫁であり、台湾人の母親です。納骨堂もすでに台湾で購入しており、中国出身配偶者の忠誠心を疑うような政府の姿勢には納得がいかない」と訴えた。また、陸委会が求める「除籍証明」の追加提出について、多くの基層中国出身配偶者が動揺していると語った。
史氏は河北省張家口市の出身で、1999年に南投県へ嫁ぎ、2008年に台湾の身分証を取得した。2018年の南投県議会選挙では3432票を獲得したが、当初は当選に至らなかった。しかし前職議員の汚職による解職を受け、2021年に繰り上げで議員に就任した。
5人の子どもを育て、そのうち4人は家庭を持ち、26年目には祖母となった。2022年の選挙で落選した史氏に対し、内政部は2023年12月、「国籍法」に基づき、外国籍を放棄していないとして2年前の議員資格を取り消した。しかし、史氏は「中国出身配偶者に関しては『両岸人民関係条例』が優先されるべきで、国籍法での処理は適切ではない」と述べている。

「両岸人民関係条例」によれば、中国出身配偶者は台湾で6年間居住し、中国戸籍を放棄した後に中華民国の身分証が申請できる。現在、約36万人の中国出身配偶者が台湾に住み、そのうち約14万人が身分証を保有している。
しかし、陸委会の調査によると、2024年時点で約1万2000人の中国出身配偶者が中国戸籍の「除籍証明」を提出していないことが判明。この1万人以上に対して現在、6月末までに証明書の追加提出が求められており、提出がない場合は、台湾籍の抹消につながる可能性があると警告されている。
偏見に向き合って初の「中国出身配偶者議員」に
史氏によれば、台湾に来た当初は専業主婦として家族を支えていたが、子供たちが成長するにつれ時間ができた。2016年に南投で中国出身配偶者仲間の支援団体を結成し、さまざまな問題を抱える中国出身配偶者たちと交流を深めた。この経験がきっかけで、彼女は社会に貢献したいとの思いを一層強くし、2018年の南投県議選に挑戦する決意を固めたと述べた。

政治参加にあたって「染赤(=中国寄り)」とのレッテルを貼られたことについて、史氏は「非常につらかった」と語る。初出馬時には多くの批判や疑問の声が寄せられたが、それでも最終的に多くの票を得た。
「国籍法」適用は政治的?除籍証明義務に異議
史氏は、民進党政府が国籍法を根拠に中国出身配偶者の公職資格を取り消したことについて、「これは政治的な操作であり、選挙委員会が最初に出馬を止めなかった以上、今になって職務を取り消すのは不当だ」と主張している。

さらに、2004年の両岸人民関係条例の改正時には「除籍証明」の提出義務はなく、今回の陸委会の追加要求は「知法犯法」に近いと批判した。もし彼女の参選が違法であるなら、選挙委員会が参加を阻止すべきであり、現政府の対応は不当であると強調した。
今後、中国出身配偶者議員は現れるのか?
史氏は、「このような状況下で、今後中国出身配偶者が基層から選出されるのは非常に困難になる」と懸念を示す。

一方で、政党の不分区立法院議員のような形で中国出身配偶者が議会に進出する可能性は残っていると語った。

「私は台湾人の嫁であり、台湾人の母親でもあります。中国出身配偶者の忠誠心を疑うようなことは、もうやめていただきたい」と、史氏は静かに語った。
台湾ニュースをもっと深く⇒風傳媒日本語版X:@stormmedia_jp (関連記事: 中国籍配偶者1.2万人が除籍危機 国台弁が猛反発「人倫に反し、道義を失っている」 | 関連記事をもっと読む )