台湾総統府は先日、6月18日に主要野党の党首を招き、国家安全情勢に関する機密報告会(国安簡報)を開催すると通知した。しかしこの報告会をめぐり、野党・国民党内では「これは罷免関連法案を通すための策略ではないか」との懸念が広がっている。
国民党の朱立倫主席と民衆党の黄国昌主席は出席を検討しているが、その一方で、総統の頼清徳氏が大規模な罷免運動の推進者である曹興誠氏(元・聯華電子董事長)と会談していたことが報じられ、野党側は激しく反発している。朱立倫氏に加え、台北市の蔣萬安市長も「総統が真に和解を望むのであれば、既に承認されている地方補助金を地方に返還し、罷免運動を直ちに停止すべきだ」と訴えた。
朱立倫氏は、国家安全をめぐる説明会の開催について「政府と野党が共に台湾のために取り組む空気を作るべきだ」と発言し、出席に前向きな姿勢を見せている。しかし、ある国民党の幹部は「実際に出席する可能性は低い」と語る。
6月18日の国家安全保障に関する報告会への招待について、朱立倫氏はこれまでの発言で、頼清徳総統に言行一致を求め、国家安全保障の課題を共に直視し解決することで、与野党が協力して台湾のために尽力する雰囲気を作りたいとして、出席の意向を示している。
「機密報告」は一方的な政権の演出か
同幹部によると、今回の会議は実質的な対話の場ではなく、頼総統が一方的に自身の国家安全政策への協力を野党に求める場に過ぎないという。総統が「野党とも誠意あるコミュニケーションを図っている」との印象を世論に与えるための演出であり、実際には和解の意志が見られないと指摘した。
「表では握手し、裏では罷免を進めるような姿勢に見える」とし、このような状況下で朱立倫氏が出席すれば、国民党の罷免反対運動に悪影響を与えかねないとする声が党内では多数を占めている。
国安十法を通すための「罠」との見方も
さらに、国民党内では「今回の会議は、民進党が国会で推進する“国安十法”を円滑に通過させるための布石ではないか」との見解もある。国民党が機密報告会への出席と引き換えに守秘義務を課せられれば、今後国会での法案審査において自由な発言が難しくなり、反対しにくくなる。
ある幹部は「頼総統は会議で台湾の国安上の脅威を詳細に伝え、理解を得たにもかかわらず、野党が法案に反対すれば“国の安全を顧みない党”と批判されることになる。しかも守秘義務のため、野党は反論もできない」と述べ、これは政治的に不利な構図だと警鐘を鳴らした。
このため、同幹部は「頼総統が機密報告後に朱立倫・黄国昌両氏との公開討論の場を設けると明言しない限り、現状での出席は極めて不適切」と強調した。
総統府側は柔軟姿勢、会議の実現へ前向き
一方、国民党で総統府との連絡を担当する黄健庭幹事長は、同日午後に総統府の潘孟安秘書長と電話で会議の進行について調整を行ったと明かした。国民党が提出した要望に対し、総統府側は前向きな回答を示し、会議には頼総統も全行程に参加する予定であるという。
また、報告終了後には総合討論の時間も設けられ、出席者が自由に意見を述べられるとの説明があった。黄氏は「十分な意思疎通が図られ、党の要望が満たされれば、18日の会議は円滑に進むだろう」と述べ、朱立倫氏も基本的には前向きな姿勢を保っているとしている。
編集:柄澤南 (関連記事: 台湾・総統府、18日に野党党首と機密会議 頼清徳総統が主導し「国家安全情勢」説明へ | 関連記事をもっと読む )
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