「ドリームライナー」神話崩壊か──ボーイング787、初の死亡事故で信頼に再び打撃

2025-06-13 10:05
ボーイングの売れ筋で燃費効率の良いワイドボディ機787型。(ボーイング公式サイトより)
ボーイングの売れ筋で燃費効率の良いワイドボディ機787型。(ボーイング公式サイトより)
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米ボーイング社が「ドリームライナー」と称する787シリーズは、2011年の正式就航以来、現役旅客機の中でも最も先進的な機体のひとつとして知られてきた。インド航空機の墜落事故が発生するまで、同シリーズでは死亡事故は一度も報告されておらず、優れた安全記録を維持していた。

AFP通信によれば、今回のインド航空AI171便の墜落は、2011年に全日本空輸(ANA)で初導入されて以来、787型機としては初の死亡事故となる。これまで十数年にわたり、エンジントラブルや部品不良による緊急帰還、目的地変更などの事例は数十件に及び、短期間の運航停止や点検も行われてきたが、いずれも致命的な事故には至っていなかった。

Ahmedabad plane crash first ever for Boeing 787 Dreamliner: Sourceshttps://t.co/SUW703D5UOpic.twitter.com/xfVyQpDdHD

— Khaleej Times (@khaleejtimes)June 12, 2025

現在、ボーイング787には「787-8」「787-9」「787-10」の3モデルが存在し、最大330人を搭乗させることができる。航続距離は最長で14,010キロに達する。これまでに80社以上の航空会社やリース会社が採用し、累計納入機数は2,598機にのぼる。なお、約900機が納入待ちの状態にある。

787シリーズが航空各社から高い支持を得ている主な理由としては、最新技術の導入により従来機よりも燃料消費を25%以上削減できる点が挙げられ、運航コストの削減に直結することが大きな魅力とされている。

2013年には日本でも連続トラブル

インド航空の事故以前において、787が直面した最大の危機は2013年1月に発生している。日本航空と全日本空輸の機体で、わずか10日間に6件の不具合が相次ぎ発生した。中には緊急着陸を余儀なくされた事例もあり、乗客が緊急脱出用スライドで避難中に軽傷を負う事故もあった。

印度航空787-8型客機起飛後墜毀,機身殘骸散落在機場週邊住宅區。(美聯社)
インド航空787-8型機は離陸後に墜落し、機体の残骸が空港周辺の住宅地に散乱した。(AP通信)

この事態を受け、ボーイングは同年1月中旬、787型機の全世界での運航停止を決定。既に納入済みのすべての旅客機および貨物機に対して徹底的な点検と改修を実施した。以後も同機種では、主にリチウムイオン電池やエンジンの過熱、オイル漏れといった技術的課題が指摘されている。

南米LATAM機の急降下事故も記憶に新しい

また、2024年3月11日には、南米LATAM航空の787-9型機がオーストラリアからニュージーランドに向かう途中、機体が数秒間にわたって急降下し、乗客が天井に衝突する事故が発生。この事故で50人以上が軽傷から重傷を負った。

印度航空787-8型客機起飛後墜毀,撞進機場旁的青年旅館。(美聯社)
インド航空787-8型機は離陸後に墜落し、空港隣のユースホステルに突っ込んだ。(AP通信)

信頼回復遠く 株価にも影響

今回のインド航空機の墜落事故は、既に737 MAX型機や旧型737に関連する一連の不祥事で打撃を受けていたボーイングにとって、さらなる痛手となる可能性がある。とりわけ、同社の主力広胴型機である787シリーズでの重大事故発生は、同社の安全性に対する信頼を一段と揺るがす恐れがある。

報道を受けて、ボーイング株は時間外取引で急落し、一時8%安を記録した。

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