米日台による机上演習で中国軍が12海里侵入 台湾チームは初撃を控え主権維持策に苦慮

2025-06-11 19:19
「台湾海峡防衛軍事演習」が10日に開催され、現場では米日台から計9人の上将、8人の中将が直接参加した。(顔麟宇撮影)
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台北政経学院は本日(10日)、「台湾海峡防衛机上演習」を実施し、米国、日本、台湾で参謀総長を務めたことのある上将9名、中将8名が参加して合同の机上演習を行った。この「総長級」机上演習の初日は、グレーゾーン事態を想定したシナリオで始まり、中国共産党が台湾の領空・領海にあたる12海里内に侵入するという状況が描かれた。通常であれば反撃すべき状況であるにもかかわらず、台湾側のチームは何ら対応を取らず、台湾が侵入される様子を黙認する形となった。

台湾海峡防衛机上演習は、指導グループ、統制グループ、中国(中共)チーム、台湾チーム、米国チーム、日本チームの6つに分かれて実施された。指導グループを除く各チームには主導官が1名ずつ配置され、分科会の進行やスケジュール管理を担当。各チームには米・日・台の高官や著名な軍幹部が顔をそろえた。シミュレーションでは、統制グループが「中国軍の航空機および艦艇が台湾の領空・領海(12海里内)に侵入した」との状況を想定して指令を出した。これを受けて、台湾チームはただちに国家安全保障の高官会議を招集し、「挑発せず、回避せず、弱さを見せず」という方針のもと、国軍に対して戦備強化を指示。さらに、情報・監視・偵察の共同任務を実施することとなった。また、政軍指揮センターの人員が即座に配置され、地上部隊は現状に応じて各作戦区域に偵察・監視部隊を前進展開し、敵による浸透行動を未然に防ぐ体制を整えた。

前米軍太平洋総司令ブレア(中)、前米統合参謀本部議長マレン(右)が10日、台海防衛兵棋推演に出席。(顔麟宇撮影)
前米軍太平洋総司令ブレア氏(中央)、前米統合参謀本部議長マレン氏(右)が10日、台海防衛兵棋推演に出席。(顔麟宇撮影)

敵軍12海里侵入で台湾チームは先制攻撃せず 中国チーム「兵力に明確な対応が見られない」

意外だったのは、このような想定下において台湾チームの対応が極めて苦慮していた点である。中国軍の艦艇が12海里圏内に侵入するという状況に対し、台湾チームは「対立をエスカレートさせない」原則のもと、監視を継続しつつ、可能な限りの手段で退去を促すという対応を取った。空軍は通常の偵察飛行を継続しつつも、転進(基地移動)を完了させる動きを見せた。海軍のミサイル車両は西岸前線で発射準備を整えたが、発射には至らず、防空ミサイル部隊も同様に態勢を整えたのみだった。参謀本部は友好国との情報共有を強化しつつ、「第一撃は撃たない」という原則を堅持した。

この状況下で、日本チームは「米国がいかなる行動を取るにしても、《日米安保条約》に基づき日本政府との協議が前提となるべきであり、南シナ海周辺の航行の自由も確保されねばならない」と指摘。これに対し、米国チームは4つの方針を明示した。第一に台湾を支持すること、第二にこの事態を中国との全面戦争に発展させないこと、第三に防衛姿勢を取ること、そして第四に、万が一戦闘に突入する場合には「どうすれば勝利できるか」を明確にする必要があるとした。 (関連記事: 日米台、初の民間主導「台湾海峡防衛机上演習」実施 2030年の中国侵攻を想定し4段階で国軍戦略を検証 関連記事をもっと読む

しかし、このような状況下で統制グループから疑問が提示された。中国(中共)チームに対し、「台湾チーム、米国チーム、日本チームの対応は期待通りだったのか。良かったのか、それとも不十分だったのか」との問いかけがなされた。これに対し中共チームは、今回のシナリオは2022年以降に中国が台湾周辺、東シナ海、南シナ海、第一列島線において実際に展開してきた動向を総合的に反映させたものであり、実際の戦力を用いて台湾がどう対応するかを試すものだったと説明した。そして、いわゆる「茹でガエル戦術」「サラミスライス戦術」「パイソン戦略」など、どのような形であれ台湾の主権に対する重大な試練であると指摘した。