IBM、世界初の「誤り耐性量子コンピュータ」を発表!2029年稼働、現行機の2万倍の性能へ

2025-06-11 16:21
IBM量子コンピュータのレンダリング画像。(IBM公式プレスリリース)

IBMは既に世界最大の量子コンピュータ群を所有しており、6月10日に最新の量子コンピュータ構想を発表した。それは、世界初の大規模フォールトトレラント(耐障害性)量子コンピュータであり、実用的かつ拡張可能な量子計算の基盤を築くものだ。このコンピュータは4年後に登場する予定で、IBM Quantum Starling(スターリング)と呼ばれる。ニューヨーク州ポキプシー市の新しいIBM量子データセンターで稼働し、現在の量子コンピュータの2万倍の計算能力を発揮するとされる。IBMは、スターリングが量子状態の複雑さを完全に探ることができ、量子コンピュータが限られた特性しかアクセスできないという制限を突破すると主張している。

IBMは6月10日、量子計算の次世代を担う新しい構想を発表した。発表されたのは、世界初となる「大規模フォールトトレラント量子コンピュータ」で、実用化に向けた量子技術のマイルストーンとされている。この新型量子コンピュータは「IBM Quantum Starling(椋鳥)」と名付けられ、2029年に登場予定。ニューヨーク州ポキプシーに新設されるIBMの量子データセンターで稼働し、現在の量子マシンの約2万倍の性能を持つという。

IBMの会長兼CEO、アーヴィンド・クリシュナ氏は「IBMは数学、物理、工学の知見を集約し、現実世界の課題を量子で解決する次の一歩に踏み出している」とコメント。Starlingは、これまでアクセスが困難だった量子状態を完全に解析可能にすることで、量子計算の限界を突破するとしている。

このシステムでは、200個の論理量子ビットを用いて1億回の量子計算を行う構想で、後続機「Blue Jay(ブルージェイ)」では2,000個の論理量子ビットを使って10億回の演算が可能になるという。これにより、新薬の開発、素材研究、化学分野、さらには複雑な最適化タスクまで、時間とコストの大幅削減が期待される。

数百または数千の論理量子ビットを備えた大規模なフォールトトレラント量子コンピュータは、数億〜数十億回の演算をこなすことができる。この性能により、医薬品の開発、素材の発見、化学の基礎研究、最適化などの分野で、時間やコストの大幅な削減が期待されている。論理量子ビットは、量子情報を保持する基本的な単位で、フォールトトレラント量子コンピュータの中核をなす。1つの論理量子ビットは複数の物理量子ビットから構成されており、互いに情報を支え合いながらエラーを検出・補正できる仕組みになっている。 (関連記事: AIも半導体も!頼清徳氏が明かす「新時代の日台パートナーシップ」 関連記事をもっと読む

IBMは、量子コンピュータも従来のコンピュータと同様に、大規模な計算を正確に実行するにはエラー修正が不可欠だと指摘している。そのため、複数の物理量子ビットを束ねて、よりエラーに強い論理量子ビットを構成するという手法が採られている。物理量子ビットの数が増えるほど、論理量子ビットのエラー率は指数関数的に下がり、より多くの演算が可能になる。