日米台、初の民間主導「台湾海峡防衛机上演習」実施 2030年の中国侵攻を想定し4段階で国軍戦略を検証

2025-06-11 08:47
台北政経学院基金会は本日(10日)「台湾海峡防衛机上演習」を開催し、兵推では2023年に中共が全面的に台湾へ武力行使を決定するとの想定を立てた。イメージ図。(資料写真、蘇仲泓撮影)

台湾の民間シンクタンク「台北政経学院基金会」は10日、中国が2030年に台湾への武力侵攻を決断したという想定に基づき、日米台三か国による「台湾海峡防衛机上演習(シミュレーション)」を実施したと発表した。今回の机上演習では、2023年に中国(中共)が台湾への全面武力行使を決断したというシナリオを設定し、台湾側はすでに信頼に足る非対称戦力を構築済みという前提で進められた。台北政経学院基金会の黄煌雄董事長は、机上演習の想定は「抑止」「威圧」「懲罰」「侵攻」の4段階で構成されており、この演習を通じて、現在の国軍による台湾海峡防衛作戦の戦略設計、建軍計画、および作戦コンセプトが、台湾海峡での戦争に対応可能かどうかを検証することが目的だと説明した。

また黄氏はあいさつの中で、「台湾海峡防衛机上演習」は象徴的な「全民防衛」の意味合いを持つと同時に、防衛戦略に対する実質的な検証機能も備えていると述べた。そして今回の机上演習が、台湾における机上演習史上、三つの「初」を記録したと強調。第一に、台湾海峡での軍事衝突を想定した机上演習としては、民間団体が主催する初めての軍事レベルの演習である点を挙げた。従来、民間による机上演習は、政府の意思決定を模擬する政軍レベルのものが大半だったという。

黄煌雄氏は、今回の「台湾海峡防衛机上演習」では、中国人民解放軍が台湾に対して取り得る行動を想定し、「威嚇(Intimidation)」「威圧(Coercion)」「懲罰(Punishment)」「侵攻(Invasion)」の4段階でシナリオを設計したと説明した。机上演習の目的は、どちらが勝つかを予測することではなく、現在の国軍による台湾海峡防衛作戦の戦略設計、建軍計画、作戦コンセプトが台湾有事に対応可能かを検証し、国軍の建軍・備戦任務において改善や修正すべき点がないかを見極めることにあるという。

さらに黄氏は、今回の机上演習には、国内外から上将9名、中将8名の計17名が参加しており、民間主催の机上演習としては過去最高レベルの陣容になったと述べた。参加者の多くは、かつて台湾海峡の軍事衝突に関する予防・対応の要職を歴任しており、現状の台海情勢、衝突リスク、双方の軍事力バランス、さらには米日による軍事介入の可能性などにも精通している。こうした専門家の参加によって、今回の机上演習は、より現実に近い結果が得られるものになると期待されている。

机上演習

黄煌雄氏は続けて、「第三に、『台湾海峡防衛机上演習』では、推演の進行状況に応じて電子的な映像を提供し、戦場の状況をリアルタイムでシミュレーションすることで、参加者が敵味方の態勢評価や兵力配置をより的確に把握できるようにしている」と述べた。最新の机上演習技術を活用し、参加チームが仮想の状況下で実際に近い意思決定を行い、同時に全体の推演効率も向上させることを目指しているという。

主催者としては、慎重な姿勢を持ちつつ科学的手法を貫き、最も厳密な態度で本推演を準備してきた。約1年をかけて行われるこの机上演習が、我が国の国防強化に寄与するとともに、国民の両岸軍事情勢への理解促進にもつながることを期待していると述べた。

また、黄氏は主催者を代表し、指導陣の各首長や参加者32名に感謝の意を表明。特に、遠方より来訪した前米国統合参謀本部議長アドミラル・ムーレン氏、前米国太平洋軍司令官デニス・ブレア氏、ならびに日本から参加した元自衛隊統合幕僚長の岩崎茂氏、元海上自衛隊幕僚長の武居智久氏に特別な謝意を示した。 (関連記事: 台米日9人の上将、8人の中将が集結!台北政経学院が軍事背景を持つ最高層級「台湾防衛演習」を実施 関連記事をもっと読む

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編集:柄澤南

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