山下一仁氏、「減反政策の廃止が日本と世界の食料安全保障を支える鍵」

2025-06-09 09:02
FPCJでは、山下一仁 キヤノングローバル戦略研究所 研究主幹をお招きし、「日本の食料安全保障」をテーマに、トランプ関税の影響や国内の米価高騰にも触れながら、日本の食料安全保障の現状と課題についてお話しいただきました。(画像/FPCJより)
FPCJでは、山下一仁 キヤノングローバル戦略研究所 研究主幹をお招きし、「日本の食料安全保障」をテーマに、トランプ関税の影響や国内の米価高騰にも触れながら、日本の食料安全保障の現状と課題についてお話しいただきました。(画像/FPCJより)
目次

ロシアのウクライナ侵攻、気候変動、そして世界的な人口増加を背景に、世界の食料供給をめぐる不安定性が増す中、輸入依存の高い日本の食料安全保障が改めて問われている。公益財団法人フォーリンプレスセンターが6月3日に主催した記者会見では、キヤノングローバル戦略研究所の山下一仁研究主幹が登壇。「日本の食料安全保障」をテーマに、米価高騰の背景と日本農政の根本的課題を明らかにし、抜本的な政策転換の必要性を訴えた。

FPCJでは、山下一仁 キヤノングローバル戦略研究所 研究主幹をお招きし、「日本の食料安全保障」をテーマに、トランプ関税の影響や国内の米価高騰にも触れながら、日本の食料安全保障の現状と課題についてお話しいただきました。FPCJ。
FPCJでは、山下一仁 キヤノングローバル戦略研究所 研究主幹をお招きし、「日本の食料安全保障」をテーマに、トランプ関税の影響や国内の米価高騰にも触れながら、日本の食料安全保障の現状と課題についてお話しいただきました。(画像/FPCJより)

世界的リスク高まる中、日本の食料安全保障に注目集まる

講演冒頭、山下氏は「世界の米の生産は1961年から現在までで3.5倍に拡大したが、日本の米生産は4割も減少している」と指摘した。その減少は自然な市場変化ではなく、政府による補助金付きの減反政策が意図的に推し進めてきた結果であるとし、「構造的な供給制限」が日本農業の脆弱性を招いたと批判した。

特に2024年に発生した米不足について、氏は「2023年産米は本来2023年10月から2024年9月まで消費されるべきものだったが、8〜9月時点ですでに40万トンが不足し、翌年度の備蓄を前倒しで消費してしまった」と述べた。しかし、農林水産省は米の不足を認めず、備蓄米を放出しなかったという。

その背景には、2021年産米の価格が暴落したことを受け、さらなる減産を促して価格を引き上げた政策の影響があると説明。実際、21年産米の価格が12,804円だったのに対し、23年には15,306円にまで上昇していたと数字を挙げた。「このような状況で備蓄米を放出すれば、せっかく上げた米価が下がってしまう。だから不足していないと言い張ったのだ」と、政府の姿勢を批判した。

FPCJでは、山下一仁 キヤノングローバル戦略研究所 研究主幹をお招きし、「日本の食料安全保障」をテーマに、トランプ関税の影響や国内の米価高騰にも触れながら、日本の食料安全保障の現状と課題についてお話しいただきました。FPCJ。
FPCJでは、山下一仁 キヤノングローバル戦略研究所 研究主幹をお招きし、「日本の食料安全保障」をテーマに、トランプ関税の影響や国内の米価高騰にも触れながら、日本の食料安全保障の現状と課題についてお話しいただきました。(画像/FPCJより)

米価の高騰が続く中でも、JA(全国農業協同組合連合会)は農家に高値を提示しており、「供給量をコントロールすることで価格の維持が可能」との見方を示した。山下氏は、JAが意図的に供給量を抑制する構造を維持していると述べ、「根本的な原因は減反政策の存続にある」と断言した。

現在、国内の米の生産可能量は1000万トンに及ぶが、消費量は700万トン程度であり、輸出が300万トンに達すれば理論上は自給が成り立つと説明。加えて「国内が40万トン不足しても、輸出量を一部調整すれば、今回のような問題は起きなかった」と語った。

価格を下げるための選択肢としては、関税ゼロの輸入枠を現在の10万トンから20〜30万トンに拡大すること、あるいは1キログラム341円の関税自体を引き下げることが必要だと述べた。また「減反政策を廃止すれば、生産が増え、価格が下がる。結果的に関税も不要になる」と強調した。 (関連記事: 「国産より安いのに美味い!」台湾米が日本のスーパーで品切れ続出 関連記事をもっと読む

そのうえで、「現在、石破総理と小泉農林水産大臣が検討しているのは、減反政策を廃止し、それによって影響を受ける主業農家に対して直接支払い(ダイレクトペイメント)を行う政策転換である」とし、これが今後の農政の焦点になるとの見方を示した。

最新ニュース
東京レインボーパレード盛大に開幕!台湾、5度目の参加で平等の声援
台湾・大リコール最終戦!民進党が「機密命令」発令 陸空一体となって10名の国民党議員を攻撃
マグロがつなぐ日台友好交流 静岡・屏東の地域連携が深化へ
台米日9人の上将、8人の中将が集結!台北政経学院が軍事背景を持つ最高層級「台湾防衛演習」を実施
台湾に今年初の台風接近か 「ウーティップ」発生の可能性、最速で来週水曜夜に接近?
台湾出身195cmルーキー、林冠臣選手 西武入りで夢のプロ舞台へ
スポーツから介護まで。筑波大発AIベンチャーが切り拓く「動作解析」の未来
大塚明夫さんのナレーションで巡る、アニメ東京ステーションの魅力とは?
世界中のアニメが池袋に集結!TAAF2026、来年3月開催決定
マスク氏の怒り爆発!トランプ氏との決裂「巨額支援の裏切られた約束」
東京で見つけた自分らしさ──明太子さん、13年半の模索と成長の記録
小田急ホテルセンチュリーサザンタワー 初夏の味覚を彩る新メニュー登場
AIも半導体も!頼清徳氏が明かす「新時代の日台パートナーシップ」
日本など9カ国・地域が米の為替監視リストに 通貨政策と経常黒字を注視
「国産より安いのに美味い!」台湾米が日本のスーパーで品切れ続出
海上保安庁長官、シャングリラ・ダイアローグで初スピーチ 「法の支配」を強調
デンソー、豊田自動織機株式の売却および自己株式の公開買付事前通知を発表
日本への情熱と清酒への探求——台湾のKOLが全てを捨てて再出発
「最強高校生」からV1昇格の主力へ──張育陞、日本5年目で語る恩師と成長の軌跡
フェアモント東京、開業目前の全貌を発表 ブランド初の日本進出で新たな歴史へ
CNNも絶賛!台湾・宜蘭の秘境「見晴懷古步道」──ジブリの世界のような幻想的絶景
台湾、国際医療および健康ケア展が開催 貿易協会「健康ケアは病院に限られず」
AI医療》93.4%の精度で脊椎骨折を秒診断 AI×医療の「最前線」が高齢社会を救う
マスク氏が暴露連発「トランプ氏は私なしじゃ勝てなかった」──大富豪が政治に踏み込む理由とは
日米、国債をめぐって激突! 財政金融博士が明かす日本の為替戦略:「実はトランプと同じ手を使っている」
王義雄の見解:「台湾有事」は買い手次第?トランプ氏が描くリアルな地政学
市場が歓喜!トランプ・習氏が直接対話、株価先物が一斉上昇
米中首脳の手相に台湾政界が驚愕 日本占い師「トランプは握れず、習は不安だらけ」
米中首脳が90分通話、関税・台湾問題を協議 異例の沈黙、トランプ氏に注目集まる
舞台裏》台湾の国安システム、インド・パキスタン戦争を極秘調査 世界を揺るがす疑惑の点を発見
台湾・行政院と立法院の対立、NVIDIA本社誘致にも影響か 台湾各地で波紋拡大
台湾政府、中国訪問の公務員に「事前許可」義務化へ 国家安全を理由に法改正検討
中国の居住証で台湾戸籍抹消 第1号の大学教員が反発「中国のほうが民主的」
芥川賞作家・李琴峰さん、「性別暴露」で甲府市議を提訴 賠償と投稿削除を要求
【武道光影】日本の国技としての大相撲における文化記号の脱構築的考察
「このままでは日本は滅亡する」イーロン・マスク氏の警告を裏付ける最新統計
任天堂スイッチ2の宣伝映像に黄仁勳が登場、カスタマイズされたチップを解説
任天堂スイッチ2世界同時発売!深夜に行列、世界中が熱狂「待ってでも欲しい」新型機
西欧でジフテリアが再拡大 移民を中心に70年ぶりの大規模流行
舞台裏》台湾・国民党に最大の危機 罷免敗北と党内分裂、主席選で盧秀燕が朱立倫に「直接対決」申し出か
調査》台湾・地方政府は「裕福な人々」か?予算戦争で行政院が語らなかった真実
「あなたたちを渡米させないことで、我々はより安全に!」 トランプ氏、新渡航禁止令を発令、12カ国全面禁止・7カ国部分制限
吳典蓉コラム》「大陸訪問の通行証“台胞証”が“トラップカード”に?」──沈黙を強いる賴政権の圧力
「必ず報復する」プーチン氏、トランプ氏と1時間超の電話 即時停戦はさらに遠のく
韓国新政権》台湾問題に慎重姿勢 李在明政権、米中・日との関係構築に注目
六四事件36年 各国が追悼、中国は警備強化と情報統制
24歳・大の里 泰輝が史上最速で横綱昇進 日本出身力士では稀勢の里以来8年ぶり
トランプの関税政策の影響が大きすぎる OECDが今年と来年の世界経済成長予測を下方修正
トランプ氏、渡航禁止令を再開 19カ国に入国制限
トランプ氏「習近平主席は非常に手強い」 対中貿易交渉の困難さに言及