調査》台湾・地方政府は「裕福な人々」か?予算戦争で行政院が語らなかった真実

2025-06-05 17:25
行政院は中央から地方への一般性補助金を大幅削減し、地方政府にはまだ708億の余裕があると述べているが、実際には本当にそうなのだろうか。(資料写真、洪煜勛撮影)
行政院は中央から地方への一般性補助金を大幅削減し、地方政府にはまだ708億の余裕があると述べているが、実際には本当にそうなのだろうか。(資料写真、洪煜勛撮影)

行政院が中央信頼補助金から地方への636億元を削減したことが、各地方政府の反発を招いている。台北市・雲林県・台東県・南投県など国民党が支配する数県は行政院への訴願を準備中であり、民進党の高雄市長である陳其邁も、行政院は南部にもっと配慮すべきと述べている。しかし行政院長の卓榮泰は、地方政府の財政の歳計賸余は708億元に達していることから地方の財政状態は年々改善しているとし、一部の県市政府には債務を引き受ける余裕があり「歳計賸余を活用する」や、必要のない支出を節約するように推奨している。行政院の発言者である李慧芝も「地方財政は充裕である」とコメントしている。

主計長の陳淑姿は、6月4日に立法院で、2024年には全国で唯一1つの県市が歳入歳出の不足となるが、2012年の14県市の不足と比べて、各県市政府の財政状況は著しく改善されたと述べた。民衆党の立法委員である黄珊珊は問いかけた。一般性補助金削減が各地方政府に対して議会に賛成議案を求めることを要求するものなのかと。陳淑姿は卓榮泰の論を持ち出して、各県市が予算を切り詰めるか歳計賸余を活用できると答えた。

20250516-行政院長卓榮泰16日出席上任周年記者会。(顏麟宇撮影)
行政院長卓榮泰は地方補助金を削減し、各地方政府の反発を招いている。(資料写真、顏麟宇撮影)

地方政府は財政豊かか? 14県市の累計余剰は赤字

「歳計賸余」とは、年度内の政府予算の歳入が歳出を超過した状態を指し、行政院長卓榮泰は5月23日・24日・29日、李慧芝は5月27日・30日の発言で、各地方政府が2024年度において歳計賸余があることを指摘した。李慧芝は、2025年度一般性補助金の総額は当初から2501億元が計上されており、そのうち990億元が地方政府の財源を増加させるものである。しかし、2024年度に地方政府の歳計賸余が総計で708.5億元あるため、地方政府はこの部分から削減することが求められている。

しかし、本当に各地方政府は財政豊かであるのか。主計総処のデータ及び各県市の決算によると、全台湾の各県市政府の2024年の歳計賸余決算は確かに708.54億元である。しかし、この額は台湾全体の22県市の総額であり、実際には各県市の財政状況は異なるため歳計賸余の額も異なる。台北市は比較的に裕福で、歳計賸余は269.13億元に達し、708.54億元の37.98%を占める。一方で、人口の多い新北市はわずか20.8億元であり、桃園市は赤字で-57.02億元である。 (関連記事: 韓国新政権》台湾問題に慎重姿勢 李在明政権、米中・日との関係構築に注目 関連記事をもっと読む

20250603-E501 _A各県市2024年歳入歳出余剰(歳計賸余)決算数及び歴年累計余剰
各県市2024年、歳入歳出余剰(歳計賸余)決算数及び歴年累計余剰。

削減額は余剰額を超える 地方政府にとっては死活問題

立法院財政委員会の国民党立委李彥秀は《風傳媒》のインタビューで、行政院が「歳計賸余708億元は地方財政の好転を示す」との主張は不適切であり、台北市は269億元・全体の38%近くを占めるが、台北市は首都として大規模なインフラ支出を抱えており、単に歳計賸余を見ても片面情報として解釈され、台北市民や他の21県市民にとっても不公平であると指摘した。さらに、中央政府は2024年に5283億元の税収超過と1641億元の収支余剰を有しているが、地方建設の補足に資源を費やすべきであるとも述べた。

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