「協定を破ったのは誰か?」米中が「合意違反」を巡り応酬 レアアース・関税・台湾発言で緊張再燃

2025-06-03 16:54
中国の習近平国家主席(AP通信)
中国の習近平国家主席(AP通信)

中国商務部は2日、先月ジュネーブで合意した内容を北京側が違反したとの米大統領の発言を否定する声明を発表した。トランプ前大統領は先週、習近平国家主席との電話会談を希望すると表明し、ホワイトハウスの国家経済会議委員長や財務長官らも両首脳の通話が近く実現すると見込んでいる。しかし、『ブルームバーグニュース』は現在の米中関係が停戦合意の破綻を招く可能性があると懸念している。

中国商務部は、米中両国が先月12日に発表した「中米ジュネーブ経済貿易会談共同声明」に基づき、中国側は合意内容に従い、米国に対する「対等関税」関連の関税および非関税措置を取消または一時停止したと表明した。「中国側は責任ある態度でこの合意を真摯に受け止め厳格に履行し積極的に維持しているのに対し、米国は相次いで中国に対する差別的な制限措置を追加している具体的には、AIチップの輸出管理指針の発表、対中チップ設計ソフト(EDA)の販売停止、中国人留学生のビザ取り消し方針の表明などが挙げられる。」

中国商務部は、米国のこれらの措置が今年1月17日に両国首脳が電話会談で合意した内容に重大な違反であり、ジュネーブ経済貿易会談での既存の合意も深刻に損なうものだと非難した。また、中国の正当な権益を著しく侵害していると指摘した。米国は一方的に新たな経済貿易摩擦を引き起こし、両国関係の不確実性と不安定さを増大させているにもかかわらず、自身の問題を顧みず、むしろ中国側を根拠なく非難していることは事実に反すると強調した。もし米国がこのまま強硬姿勢を続け、中国の利益を損なうならば、中国は断固たる措置を講じて自国の正当な権益を守ると表明した。

このような米中関係の緊張激化を受けて、アジアの株式市場や米国の株価指数先物は同時に下落し、香港市場の中国株の代表的な指数は一時2.9%急落し、約2か月ぶりの大幅な下げ幅を記録した。

『ブルームバーグニュース』は、世界最大の二大経済圏間の緊張が、5月の関税緩和以降再び高まっていると指摘している。経済関係の緊迫に加え、地政学的な摩擦も一層激化している。中国外交部は先週、米国防長官代行のピート・ヘグセス氏がシンガポールで開催された「シャングリラ・ダイアログ」フォーラムで「中国は台湾に差し迫った脅威をもたらしている」と発言したことに抗議した。現在、米財務長官ジャネット・イエレン氏や通商代表キャサリン・タイ氏の発言からは、米国側は中国がレアアースの輸出を加速していないと見ていることがうかがえる。また、中国米国商工会議所会長のマイケル・ハート氏も、過去1週間にわたる中国のレアアース輸出規制緩和の動きは「業界の予想よりも遅い」と述べている。

実は北京がワシントンのジュネーブ合意違反を批判する前に、トランプ米大統領は先週、中国が両国間の関税引き下げ協議を違反したと非難し、世界最大の二大経済圏間の緊張を一層高めた。トランプ氏は当時、「中国は――一部の人にとっては驚きではないかもしれないが――完全に我々との協定を破った。いわゆる『いい子ちゃん』のイメージはここで終わりだ!」と強調した。米政府関係者はトランプ氏と習近平国家主席の電話会談が間もなく実現すると繰り返し伝えているが、トランプ氏自身も5月中旬に終わったジュネーブ会談後に習主席と電話をする可能性があると述べたものの、両者の直接のやり取りはまだなく、中国側も習主席がトランプ氏と通話する意向を示していない。

世界を、台湾から読む⇒風傳媒日本語版 X:@stormmedia_jp

最新ニュース
安倍昭恵さん、「AI安倍晋三」と「AI李登輝」の対話に期待感示す
舞台裏》中国、黄海に構造物設置 日本・台湾・韓国にまたがる戦略行動か
台湾、米国との「ゼロ関税」交渉に農業団体が猛反発 「台湾人がすべて負担?絶対に同意できない」
台湾、公務員の中国渡航に事前許可義務化へ 「線を引きすぎ」と批判も
21世紀の真珠湾攻撃は宇宙から?米将軍「中国は台湾侵攻前に奇襲も」
米中再び緊張、トランプ氏「穏便に済ませない」 レアアース輸出停止で合意破り批判
中国無人機が台湾東方沖を旋回飛行 空母「遼寧」は監視圏外に?日本も警戒強化へ
ロシア版「真珠湾攻撃」 ウクライナ無人機が戦果、ロシア軍極東基地まで爆撃
李志堯の見解》米軍は台湾海峡戦争を援助しない─それはなぜか?
論評》波風立たぬ無風はなし、米債危機は各国に試練
北京観察》台湾サイト「海棠文学城」作家大量拘束 同性愛小説で刑事処分の恐れ
フジロック開幕に向け「FUJI ROCK WEEK」開催へ、都内・関西でプレイベント続々 公式グッズ第2弾も販売開始
中国・大連で日本人2人殺害 容疑の中国人男を拘束、ビジネストラブルが背景か
「我が巨人軍は永久に不滅です!」長嶋茂雄氏、89歳で逝去 「ミスタープロ野球」が歩んだ伝説の生涯
チームラボ、身体ごと没入するアート体験を追求 新たなミュージアムも開業
トランプ「解放日」の混乱、苦い結果が到来!米国4月商品輸入が20%暴落、記録開始以来最大の下落幅
ゼレンスキー大統領の和戦戦略!和平案発表直前に117機ドローンでロシア爆撃機を攻撃
米造船業の凋落はなぜ?建造費アジアの5倍高、トランプ政権の復活戦略は
【新ニュース】がんは年齢を選ばない、予防対策が急務 若年性大腸がん増加の真因が判明
中国が台湾に攻めれば「世界破滅」 米国防長官が異例の強硬メッセージ
張鈞凱コラム》反共は正義、「親共」は死すべきか?
台湾ドル急騰の黒幕判明 中央銀行が異例の声明6本発表
2025年「日台観光サミット in 鳥取」開催 台湾からの訪日客が最多更新、『鳥取宣言』も発表
「2025日台観光サミットin鳥取」開催 米子~台北直行便が同時就航、官民連携で日台観光が新段階へ
エコノミスト誌が米政府を批判:台海政策に安定性欠く、トランプ氏「退任後に中国が台湾を奪取」と発言
2025年世界都市ランキング 日本は東京9位、京都100位、台北は60位に
評論》「台湾人」に「中国人」と主張する自由はあるのか?──民進党政権の処分方針に波紋
トランプ氏の賭け:「アジアの5倍コスト」でも米造船業を再建できるか
舞台裏》トランプ氏、ハーバード台湾留学生に圧力 教育部長に救い求める声も──頼清徳政権の対応は?
台湾海峡の緊張に懸念 シンガポール国防相「未来を語り合うべき」
イーロン・マスク氏「薬物依存」疑惑 NYTが実名報道、本人は全面否定
石垣島〜台湾・基隆の定期フェリーが9月就航へ 片道1万円から、週3便運航
TSMCが中東進出へ? UAEと複数回協議、中東に「第2のアリゾナ工場」構想浮上
半導体サプライチェーン3》AIブームがサプライチェーンの再編を推進 台灣企業が現れる最有力候補を考察
半導体サプライチェーン2》ゴールドマン・サックスからマッコーリーまで 米中対立下での台湾投資戦略を法人評価で一文解説
半導体サプライチェーン1》米中対立下における半導体サプライチェーン再編成 米日欧代表と台湾企業の大計画
チエさんインタビュー:夢だった日本生活、そして「好き」が仕事になるまで
台湾映画『余燼』、慶應義塾大学で特別上映──記憶と加害の問いをめぐる白熱討論
仏教はAIとともにどう歩むか?熊谷誠慈教授が語る、信仰とテクノロジーの可能性
独占インタビュー》2025年「台湾映画上映会」が大学に拡大開催 林家威監督と曾鈐龍センター長が語る
台湾文化センター主催「台湾映画上映会2025」が日大で開催、映画『タイペイ、アイラブユー』上映後には監督と批評家が登壇へ
『猟師兄弟』で『セデック・バレ』俳優が再共演 「台湾映画上映会2025」2作品でトークイベント実施へ
Lynnさん語学ゼロからBEAMS就職 日本で奮闘の日々
スターラックス航空、台北〜オンタリオ直行便を新規開設 初便搭乗でソニー最新イヤホン贈呈も!
大湖いちご・三義老街を超えた! 苗栗で最も人気の観光スポットに35.4万人、「美食天国で行く価値大」
トランプ関税撤回で台湾は危機回避?米貿易法院が大統領権限に制限、専門家が「最強者」の次の一手を分析
賴総統、訪米国議員に購買リストを提示 米国メディアが特別報道
阿里山より凄い! 台湾で一番の観光列車が話題、地元民も絶賛「必見コース」
【サマーソニック2025】8月16日・17日に東京・大阪で同時開催!
日本での11年、理想と現実の間で見つけた道──台湾出身・歩小心さんが語るキャリアと挑戦