第16回「2025日台観光サミット in 鳥取」は、5月29日から6月1日にかけて鳥取県で開催された。台北駐日経済文化代表処代表(駐日大使)の李逸洋氏は、30日に会場で行われたインタビューの中で、「現在の円安の影響により、日本人の訪台意欲はやや低下しています」と述べた。
しかしながら、李氏は「台湾には多彩な祭りや文化体験があり、観光テーマも豊富で、日台両国の国民は互いに好感を持っています」と強調した。その上で、「今後円高が進めば、日本人の台湾旅行への意欲向上につながることが期待されます」との見解を示した。
2025日台観光サミット in 鳥取。(写真/黃信維撮影) 李氏は、今回のサミットが鳥取で開催されたことに特別な意義 があると強調した。 鳥取県は現在の首相・石破茂氏の故郷であり、そうした地での開催は象徴的であると語った。また、台湾駐在歴18年の代表処職員に「 鳥取に来たことがありますか 」と尋ねたところ、「 今回が3回目です 」と答えたという。李氏は、訪問の機会が少ない地に多数の台湾旅行業者が集結したことは、台湾が日本の地方観光との連携を重視していることの表れであるとし、「日本各地には魅力的な地域が多く、今回の機会を通じて台湾の魅力も広く紹介したい です 」 と語った。
2025日台観光サミット in 鳥取。台北駐日経済文化代表処代表であり駐日大使の李逸洋氏。(写真/黃信維撮影)
観光大使の倪暄氏と曲羿氏は、イベント全体に熱心に参加し、InstagramなどSNSを通じて積極的に情報を発信し、その役割を十分に果たしていた。
観光大使の倪暄氏と曲羿氏は、イベント全体に熱心に参加し、InstagramなどSNSを通じて積極的に情報を発信し、その役割を十分に果たしていた。(写真/黃信維撮影) 日台観光のサミット交流報告パートでは、日本政府観光局(JNTO)理事の伊與田美歴氏が、現在の日台観光交流の状況について詳しく説明した。2024年の訪日外国人観光客は合計3,687万人に達し、過去最高を記録。3月には月間1,000万人を突破、4月には390万人と、観光市場の急速な回復が示された。
台湾市場では、2024年の訪日台湾人旅行者数が604万人に達し、こちらも過去最高を更新。伊與田氏は、長年にわたる台湾旅行業界の支援に感謝の意を表し、現在、台日間の航空ネットワークはコロナ禍以前を超えるレベルにまで回復しており、今年の夏には台北・高雄・台中と日本の25都市を結ぶ週656便が運航され、地方都市間の観光交流に更なる可能性があると述べた。
2025日台観光サミット in 鳥取。(写真/黃信維撮影) 特に、5月29日に就航した「 鳥取米子-台湾 桃園」直行便が注目されており、関係各所への謝意も示した。統計によれば、訪日台湾人旅行者の約8割がリピーターで、そのうち4分の1は10回以上日本を訪れているディープトラベラーである。この層が地方での宿泊需要を牽引し、台湾は外国人市場で日本の地方都市における宿泊数・宿泊割合ともにトップである。2024年の延べ宿泊数は868万泊に達し、2019年比で14.7%増加。宮崎や新潟など再就航地域では宿泊数が倍増し、航空路線の復活が地方観光を押し上げている。
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一方で、観光客急増による「オーバーツーリズム」への懸念も示された。日本観光庁は高付加価値型体験コンテンツや限定イベントを推進し、観光の質向上と圧力のかかる地域への支援を進めている。
伊與田氏は、2023年に策定された3年戦略のマーケティング計画が最終年度を迎えており、観光消費の拡大、地方訪問の促進、持続可能な観光の推進を三本柱としていると説明。台湾市場では、三つの主要ターゲット層に焦点を当て、各地の特色体験や四季の料理を訴求し、直行便がある都市と連携した地域広報を展開している。
また、台湾市場における教育旅行の潜在力にも触れ、2020年からは国際教育旅行の対象が高校から中学・小学校へと広がり、SDGs理念も取り入れていると説明。昨年は約70名の台湾教育旅行業者を日本に招致し、各地の探究学習プログラムや地域教育資源(防災・平和学習、農家民宿体験など)を実地体験してもらい、高評価を得たという。2024年もこの取り組みを継続し、台湾主要都市で説明会を開催。山陰地域へのプロモーションを強化し、鳥取のほか、島根や山口とも連携し、アート、食文化と融合した広報活動を展開する予定である。
会談の終盤、伊與田氏は、4月に開幕した大阪・関西万博についても触れ、「10月13日まで開催される万博を契機に、訪日観光の波を日本各地に波及させたい」と述べ、台湾からの参加と周遊旅行を呼びかけた。「今こそが訪日観光の絶好のタイミング」と力強く語り、日台観光交流の更なる深化と発展を願って締めくくった。
台湾からは交通部観光署東京事務所主任の王紹旬氏が出席し、日台観光の現状と今後の戦略について報告した。2024年、台湾への訪問客は786万人に達し、そのうち日本からの旅行者は約17%を占め、最多の国となっている。台湾への平均滞在日数は7.39泊で、日本人は約4.8泊。1日あたりの平均消費額は180米ドル、日本人旅行者は198米ドル、団体旅行者は272米ドルに達しており、高い経済貢献を示している。
台湾観光局は2024年より「TAIWAN – Waves of Wonder」ブランド3.0を展開し、「SHARE(共有)、DISCOVER(発見)、ENGAGE(関係構築)、ENJOY(楽しみ)」の四大テーマのもと、台湾の自然と文化の魅力を紹介。10月には新しい国際プロモーション映像の公開も予定されている。
2025年には人気声優・津田健次郎をナレーターに起用した新しい映像作品を公開予定で、阿里山や迪化街など台湾の特色ある地域を紹介するという。台湾観光局は「台遊館」ブランドを通じて、旅行業者、航空会社、グルメ、地域体験を統合し、B2CとB2B双方へのアプローチを強化。テレビ番組やインフルエンサーの招致を進め、東京テレビの『出川哲朗の充電させてもらえませんか?』の台湾特集を成功例として紹介した。
政府は旅行者向けに5,000元のクーポン、交通費割引、高速鉄道の1+1キャンペーンなど多様な自由旅行支援策を展開。日本各地との観光連携も進められ、京急電鉄の「ビービービー台湾号」広告列車は国際的な賞を複数受賞。今夏には台湾東北角や宜蘭での復刻運行も予定されている。JATAと共催するクルーズ旅行、夜間経済イベント、千人規模の天燈上げ、大学生訪台イベントなども企画されている。
締めくくりとして王氏は、花蓮・石梯坪の海蝕壺穴の風景を例に挙げ、「台湾の絶景、グルメ、人情味をぜひ体験してください。“第四のビービー”はここにいる皆さんに贈ります。台湾で心の宝物を見つけてください」と呼びかけた。
29日夜には歓迎レセプションが開催され、鳥取県第1区選出の衆議院議員・石破茂首相が衆議院名義で祝電を送った。「2025日台観光サミットin 鳥取」の成功を祈念し、祝意を表明。29日には、タイガーエア台湾による「米子鬼太郎空港-台湾桃園空港」定期便が開設され、関係者への敬意が示された。3時間程度のフライトで、食・観光・文化体験を共有できるようになったことで、鳥取と台湾の交流がさらに深まることが期待されている。
「2025年日台観光サミット in 鳥取」。(写真/黃信維) 30日のフォーラム終了後、「鳥取宣言」が発表された。2024年の訪日台湾人旅行者は604万人に達し、「高雄宣言」で掲げた700万人の相互訪問数目標が達成された。今後は「持続可能性」を共通の指標とし、時代に即した形で両国の知恵と力を結集し、健全で均衡の取れた観光交流を促進する。双方は独自の地域文化、自然、食文化を旅行商品に取り入れ、旅行者が地域の伝統と文化を体験しながら地方観光を推進し、環境保護と地域経済の発展に配慮した持続可能な観光を目指す。
政府と民間団体は引き続き連携し、特に 教育旅行など若年層の交流ではスポーツ、文化、サブカルチャーなどのソフトパワーを活用し、未来志向の交流を創出していく。次回の「日台観光サミット」は台湾・苗栗県で開催予定であり、両国は長年の友好と協力を基盤に観光交流をさらに推進し、共存共栄を目指していく。