遠洋航海中の「いつくしま」 米沿岸警備隊と連携訓練

2025-05-31 11:12
写真は、防衛省が展示した12式地対艦誘導弾(Type-12 SSM)(防衛装備庁より)。
目次

海上保安庁は5月14日、遠洋航海中の海上保安大学校練習船「いつくしま」が米国サンフランシスコ沖で、米国沿岸警備隊(USCG)と合同訓練を実施したと発表した。本訓練は、日米海上保安機関による協力枠組「SAPPHIRE(サファイア)」の一環として行われたもので、両国間の実務的連携と相互理解を深める貴重な機会となった。

圖為美軍現役尼米茲級十號航空母艦「老布希號」。(翻攝自美國海軍)
写真は、現役のアメリカ海軍ニミッツ級空母10番艦「ジョージ・H・W・ブッシュ」(米海軍より)。

訓練の概要

訓練は現地時間午後1時から1時間にわたり実施され、日本時間では5月15日午前5時からとなった。訓練海域はサンフランシスコ沖で、海上保安庁からは練習船「いつくしま」と搭載艇2隻が参加。米国沿岸警備隊からは47フィートのモーターライフボート(MLB)1隻と固定翼機C-27が投入された。

訓練内容は、通信手順の確認や行方不明者を想定した救助訓練で、両機関は情報伝達手段や救難活動の手順を実践的に確認し、知見と技術の共有を図った。

実習生にとっての学びと成果

今回の訓練は、将来の幹部を目指す実習生にとって、外国機関との協力の重要性を肌で感じる貴重な経験となった。実際の海難救助を想定した状況下で、日米の実習生は共同で捜索や通信を行い、国際的な対応能力を磨いた。

訓練の様子として、搭載艇が米側MLBと併走する場面や、日米の実習生が打ち合わせを行う姿、記念撮影の様子なども報告されている。

SAPPHIRE:日米連携の象徴的枠組

「SAPPHIRE(サファイア)」は、“Solid Alliance for Peace and Prosperity with Humanity and Integrity on the Rule-of-law based Engagement”の略称であり、「法の支配の取り組みにおける誠実と仁愛に基づいた平和と繁栄のための強固な連携」を理念としている。

海上保安庁と米国沿岸警備隊は、1948年の海保創設以来、深い交流を築いており、2010年には協力覚書を締結。2022年には共同訓練・オペレーションの促進を目的に新たな付属文書も交わされた。今回の訓練もその具体的成果の一例といえる。

練習船「いつくしま」令和7年度遠洋航海について

本年度の遠洋航海は、「いつくしま」の就役後初の実施となり、寄港地にはサンフランシスコのほか、ホノルル、マジュロ、シドニー、チェンナイ、シンガポールが含まれる。期間は令和7年4月25日から8月1日までの99日間で、総航程は約24,000海里(約44,500km)に及ぶ。乗船者は実習生51名(うち女性14名)、乗組員等54名(うち女性10名)で構成されている。

米国沿岸警備隊(USCG)について

USCGは国土安全保障省に属する海上法執行機関であり、航行安全、海難救助、海洋環境保護などを任務とする。太平洋・大西洋両方面本部のもとに9つの区域司令部を有し、広範な任務を遂行している。

世界を、台湾から読む⇒風傳媒日本語版 X:@stormmedia_jp