TICAD9に向けた日本のODA戦略を村上参事官が解説 — 民間連携の重要性を強調

2025-05-31 11:21
外務省国際協力局参事官兼アフリカ部参事官の村上顯樹氏。FPCJ

外務省国際協力局参事官兼アフリカ部参事官の村上顯樹氏は5月22日、公益財団法人フォーリン・プレスセンター(FPCJ)が主催するオンライン プレス・ブリーフィングに登壇し、「TICAD9を通じた日本とグローバル・サウス諸国との関係強化」をテーマに講演を行った。2025年8月に横浜で開催される第9回アフリカ開発会議(TICAD9)を見据え、日本が進める新たなODA(政府開発援助)政策とアフリカとの関係深化の方針について詳述した。

村上氏は、アフリカの経済的重要性と人口動態に着目し、「アフリカは21世紀を通じて唯一人口が増え続ける大陸であり、2050年には世界人口の4分の1がアフリカ出身者になる」と指摘。さらに、2030年には労働市場に新たに参入する若年層の3人に1人がアフリカ人になるとの予測を紹介し、「これは大きな機会であると同時に、雇用創出や教育、インフラ整備といった課題への対応が急務となっている」と述べた。

こうした背景を踏まえ、日本は2023年に開発協力大綱を8年ぶりに改定し、従来のインフラ中心型支援から「課題解決型ODA」へと転換を図っている。村上氏は「共創(コークリエーション)の視点に立ち、途上国と共に課題を解決する協力モデルが必要」と強調。特に気候変動、食料安全保障、保健医療、教育、デジタル化、人材育成などの分野で、相手国の政策や戦略と整合性のある支援を進めると説明した。

民間資金との連携も柱の一つとされ、JICA法改正により債務保証や債権取得が可能となったことを紹介。JICAがアンカーインベスターとして参入することで、国際金融市場に不慣れなアフリカ企業のグリーンボンド発行を後押しする制度なども整備されているという。また、「オファー型協力」によって、外務省やJICA、経産省、国交省、JETRO、JBICなどが連携し、ザンビアとモザンビークを結ぶナカラ回廊のような広域支援にも対応する新しい協力モデルが進められていると述べた。

ブリーフィング後半の質疑応答では、台湾の報道機関《風傳媒》の記者が、日本のアフリカ外交における台湾との関係について質問を投げかけた。

記者は、「本日は貴重なお話をありがとうございます。日本はTICADを通じてアフリカ諸国との関係強化に取り組まれているとのことですが、同じく民主的価値を共有し、国際協力に積極的な台湾との連携や貢献の可能性については、どのようにお考えでしょうか?たとえば民間協力やODAにおける連携など、今後の展望があればお聞かせいただけますと幸いです」と尋ねた。

これに対し村上氏は、「我が国のODAリソースが限られていますし、また投資に関してもなかなか日本企業だけで進出するのは難しいという声もよく聞かれます」とした上で、「そうした中、外国の企業さん等々を含め、様々な主体と連携していくということは、投資にしても、それからODAにしても、大変重要な方策の一つであると考えています」と述べた。

さらに、「アフリカ諸国を含め、第三国において、民間企業、民間団体などを含めた様々なアクターと連携しながら、開発協力を進めていきたいと考えています」と説明。そのうえで、「台湾は日本にとって、基本的価値を共有し、緊密な経済関係と人的往来を有する重要なパートナーであり、大切な友人であると理解しています」と明確に語った。

最後に、「民間企業や民間団体などを含む多様なアクターと連携するという場合、台湾から進出している企業や民間団体についても同様であるというふうに考えています」と述べ、台湾との協力の可能性について肯定的な姿勢を示した。

村上氏は結びに、「TICAD9は、アフリカと日本が共に未来を設計し、持続可能な国際秩序と開発目標を実現していく場となる」と述べ、日本政府としても引き続き準備を進めていく考えを示した。

編集:柄澤南