台湾総統頼清徳氏が提示した「買収論」 その真意とは?

2025-05-28 18:39
総統・頼清徳が5月20日の就任1周年を前に、インターネット番組《敏ディ選読》のインタビューに応じ、両岸関係を「大小企業の併合」に例える発言。(写真/総統府提供)
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台湾総統である頼清徳氏は5月5日、人気ポッドキャスト「敏迪選読」のホスト敏迪氏のインタビューを受け、その内容が17日に放送された。インタビューの中で頼氏は、大企業が小企業を買収する例を挙げて中台関係を説明した。「中国は大きな会社で、台湾は小さい会社だ。もしあなたが私の会社を買収したいのなら、条件を提示するべきだ。台湾から条件を提示するのではない」と述べた。この頼氏の「買収論」は議論を巻き起こしている。

元立法委員でイェール大学博士の郭正亮(かくせいりょう)氏は、「買収は条件付きの統一だ」と強調する。彼は「買収論」は合理的だとし、そうでなければどうやって中台が平和交渉を行うのかと疑問を呈した。郭氏は、「中台は統一に向けて交渉のテーブルにつくべきだ。だからこそ私は『買収論』を歓迎する」と述べ、中台の対立を平和的に解決し、情勢が合理的に進展することを促すべきだと主張した。

中国大陸初の条件提示:葉九条

頼氏が中国大陸に条件提示を求めたことで、これまでに中国大陸が条件を提示したことがあるのか、そして台湾側にも条件提示を望んだことがあるのかを振り返る必要がある。

中国大陸が最初に比較的完全な条件を提示したのは1981年9月30日、全国人民代表大会常務委員会委員長の葉剣英(ようけんえい)氏が提案した9条の平和統一主張(通称「葉九条」)だ。その要点は、国共両党が対等に交渉することを可能とし、統一後の台湾は軍を維持し、特別行政区として特別な自治権を享受できること、台湾の社会、経済制度、生活様式、その他の国々との経済、文化関係は変わらないこと、私有財産、住宅、土地、企業の所有権、合法的な継承権および外国投資は侵害されないこと、台湾の政治指導者が全国的な政治機関のリーダーを務め、国家管理に参加できること、台湾の地方財政に困難がある場合は中央政府が補助を考慮し、台湾の産業界の人々が中国大陸での投資を歓迎し、合法的な権利と利益が保証されること、台湾の各界や団体を歓迎し、統一の提案を提供し、国家の重要事項を共に議論することなどが含まれている。 (関連記事: 舞台裏》頼政権が「チャイニーズタイペイ」に寛容?馬英九、訪中で抗戦勝利80周年を記念。 国民党内で「この大事」先に騒動か 関連記事をもっと読む

(筆者)は「葉九条」の発表の前に、国務院の招待を受けて北京の孫中山鉄獅子胡同の故居で、後の社会科学院台湾研究所の所長や主要な研究者たちと数日間会談した。最も熱心に討論された議題は平和交渉の対象者であり、私は当時の与党であった国民党との対等な交渉を主張した。彼らは国民党が台湾の人々を代表できるかどうかを質問した。私は、国連総会第2758号決議が中華人民共和国の合法的な地位の回復を通過して以来、蒋(しょう)父子が台湾の政権を強化するために、国民党を「台湾化」したと述べた。政治的な新進気鋭の人材を党に受け入れ(通称「吹台青」)るだけでなく、台湾出身の党員を強力に育成し、さらには地方勢力のリーダーを市区の党部主委に任命することで、本省籍党員が85%を占めているため、国民党との対等交渉に不当性はなく、台湾の利益に反しないと指摘した。「葉九条」の中に国民党に希望を託し、さらに台湾の人々に希望を託すことが盛り込まれているが、実際に実行される際に十分に実行されておらず、実施が難しい点がある。