「留学生=金のなる木」?トランプの一手が名門大学の存続を脅かす

2025-05-28 18:05
ハーバード大学。(AP通信)
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米国の高等教育において、留学生はもはや教室の片隅に座る少数派ではない。大学の財政を支える重要な存在となっている。ワシントン・ポスト紙によると、毎年110万人以上の留学生が米国の各地の大学で学び、同国に400億ドル(約6兆2600億円)以上の経済効果をもたらすとともに、科学技術の強化にも貢献しているという。しかし、これらの「金のなる木」が、トランプ氏と名門大学の対立に巻き込まれ、米国の経済と学術研究に大打撃を与える可能性があると予測されている。

​非営利のシンクタンク「米国政策国立財団」(National Foundation for American Policy)のスチュアート・アンダーソン(Stuart Anderson)ワシントン・ポストにこう語った。「留学生は米国に活気ある科学研究の中心をもたらし、新興企業やシリコンバレーの大手テック企業が繁栄するのを助ける重要な人材だ。」

トランプ氏 対 ハーバード激化

米国国土安全保障省は22日、ハーバード大学の外国人留学生の受け入れ資格を剥奪し、すでに在学中の留学生は転学を求められ、さもなくばビザが停止されると命じた。マサチューセッツ州の連邦判事は24時間以内にこの命令を一時停止したが、事態はまだ終わっていない。ホワイトハウスの報道官は「選挙で選ばれていない判事がトランプ政権が移民政策と国家安全保障についての正当な権限を行使するのを妨げる権利はない」と述べ、裁判所は27日にこの件を審理する予定だとワシントン・ポスト紙は報じている。

トランプ政権は、米国の大学をかつてない方法で攻撃している。これらの学校が反ユダヤ主義を煽動し、トランプ氏が廃止を望む「多様性、公平性、包摂性(DEI)」の政策を維持していると非難しているのだ。今年3月にトランプ氏がハーバード大学を攻撃した際、大学の高官たちは訴訟や交渉を検討した。しかし、トランプ氏が一連の攻撃を続け、数十億ドルの連邦資金撤回や税制優遇の取り消しをちらつかせ、留学生の受け入れを妨害すると脅したため、最終的に大学は立場を守ることを決意した。

ウォール・ストリート・ジャーナルによると、23日までにハーバード大学は連邦政府に対して2件の訴訟を起こしている。

2024年4月25日、一名の学生がハーバード大学の寄贈者ジョン・ハーバードの像の前で、パレスチナの旗をまといガザ戦争に反対するデモに参加している。(AP)
2024年4月25日、ハーバード大学の象徴であるジョン・ハーバード像の前で、パレスチナの旗をまとってガザ戦争に抗議する学生の姿。(AP通信)

トランプ氏は26日、政府がハーバード大学の30億ドル(約4700億円)の研究助成金を凍結または取り消し、米国全土の職業技術学校に振り分けることを検討していると投稿した。さらにトランプ氏は、ハーバード大学が「外国学生リスト」を政府に提出しないことを批判。「過激化した狂人やトラブルメーカー」を見極めるためにその情報が必要だと主張した。しかし、トランプ氏の言う「外国学生リスト」が具体的に何を指すのかは不明で、連邦政府はすでにすべての学生のビザ情報を把握しており、ハーバード大学に在籍する約6800人の留学生の名前や国籍も含まれている。

ニューヨーク・タイムズ​紙によると、凍結または取り消された研究資金は主に科学研究、例えば病気の予防に使われている。影響が最も大きいのはハーバード公衆衛生大学院で、結核病の予防や多発性硬化症の原因解明などに取り組んでいる。これらの研究は、自動車修理や美容などの実用的な技能を教え、科学研究を行わない職業技術学校の専門分野ではない。

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