日本滞在9年、台湾人フォトグラファー呂柏霏──歩み、成長、そしてこれから

台湾出身のフォトグラファー兼映像クリエイターの呂柏霏(黃信維 撮影)

来日9年目を迎えた台湾出身のフォトグラファー兼映像クリエイター呂柏霏(ろ・はくひ)氏は、風傳媒のインタビューに応じ、自身の歩みと成長、今後の目標について率直に語った。

呂氏は、撮影活動を通じて多様なバックグラウンドを持つ人々と出会い、異なる人生経験に触れることができたことを、この仕事の最大の喜びの一つに挙げた。限られた人生の中で自ら体験できることには限界があるが、カメラを通じて世界を広げることができたという。過去には世界を旅するバックパッカーたちとも出会い、アジア圏特有の「働いて老後に備える」という価値観とは異なる生き方に触れたことも、大きな刺激になったと振り返った。

台湾出身のフォトグラファー兼映像クリエイター呂柏霏
呂柏霏氏は、この仕事の最大の喜びは撮影活動を通じて多様なバックグラウンドを持つ人々と出会い、異なる人生経験に触れれることだと述べた。(黃信維 撮影)​

呂氏は2016年に来日し、2年制の専門学校に進学。2018年に卒業後は、学校の紹介でポストプロダクション会社に就職し、編集アシスタントとしてキャリアをスタートさせた。学生時代から日本文化に強く惹かれ、高雄市の文藻外語大学日本語科で日本語を学び続け、大学進学後も日本語を専攻しながら、世新大学で公共関係学と広告学も学んだ。

元々は台湾で就職する予定だったが、「旅行」と「現地で生活すること」はまったく別物だと感じ、卒業を機に留学を決断。学校選びに迷っていた際、偶然SNSで旧友が通っていた専門学校を知り、進学を決意した。

卒業後、企業広告映像を制作する会社で勤務したが、自身の志向とは異なるジャンルだったため、東京への異動を希望。専門学校時代にライブハウスでバンド撮影を続けていた経験から、東京でより多様な音楽や映像プロジェクトに関わることを目指した。

しかし、異動の機会はすぐには訪れず、2020年、コロナ禍でリモート勤務となった折、SNSで長年尊敬してきた映像ディレクターがアシスタントを募集しているのを知り、応募。書類選考と面接を経て採用され、2020年7月に東京へ移り、3年間現場で経験を積んだ。

現在は、企業に所属しながら個人でも撮影・制作活動を展開。ポートレート撮影、企業イベント記録、テレビドラマや映画のポストプロダクション(オンライン編集)など、幅広く活動している。台湾から日本へ来た制作チームと連携し、通訳や制作コーディネートを担った経験もあり、近年ではNetflix作品のポストプロダクション業務にも携わった。

湾出身のフォトグラファー兼映像クリエイター呂柏霏
呂柏霏は撮影において、環境に溶け込む自然な姿を引き出すことを大切にしている。(黃信維 撮影)

呂氏の撮影スタイルは、被写体の自然な動きと感情を捉えることを重視している。意図的なポージングや指示を最小限に抑え、環境に溶け込む自然な姿を引き出すことを大切にしている。「その瞬間にしかない空気感や感情を捉えた写真には、圧倒的な説得力がある」と語る。 (関連記事: 木宮正史氏、日韓国交正常化60年で講演 日韓の経済連携と対中戦略・構造的転換を語る 関連記事をもっと読む

色調やトーンについても、被写体やシチュエーションに応じて柔軟にアプローチを変える。例えば、ロックバンドを撮影する際には、コントラストを強調してエネルギーを表現する一方で、カップルフォトではフィルム調の柔らかさを重視する。「完璧なクリアさよりも、少し雑味のある、温度を感じる画に惹かれる」と自身の美意識を述べた。