人気インフルエンサー2人が相次ぎ射殺 ラテンアメリカでフェミサイド深刻化

2025-05-22 15:04
わずか2日間のうちに、ライブ配信中に銃撃され命を落としたメキシコのインフルエンサー、ヴァレリア・マルケスさん(左、23歳)と、自宅前で偽装宅配員に襲撃されたコロンビアのマリア・ホセ・エストゥピニャンさん(右、22歳)。(画像はそれぞれのInstagramおよびFacebookより)
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メキシコで13日、23歳の女性インフルエンサー、ヴァレリア・マルケス(Valeria Márquez)さんがライブ配信中に銃撃され死亡した。わずか2日後の15日には、コロンビアでも22歳のインフルエンサー、マリア・ホセ・エストゥピニャン(María José Estupiñán)さんが自宅前で銃撃され、命を落とした。英紙『ガーディアン紙』によるとこれらの事件はラテンアメリカにおける女性に対する暴力、いわゆる「フェミサイド(femicide)」への怒りを呼び起こしており、人権団体は政府の対応の不十分さを厳しく批判している。

偽装宅配員が玄関先で犯行 顔を撃たれた被害者

マリアさんは、コロンビア北東部の都市ククタ(Cúcuta)でモデル兼インフルエンサーとして活動していた。15日の事件当日は自宅でライブ配信中だったが、警察によると、宅配員を装った犯人がインターホンを押し、マリアさんが応対に出たところ至近距離から顔を撃たれたという。防犯カメラには、犯行後に逃走する人物の姿が映っていた。

マリアさんはTiktokで約4万8千人のフォロワーを持ち、再生回数が170万回を超える人気動画もあった。旅行や水泳、ジム通いなど日常を発信しながら、女性向けの下着やスポーツ用品、靴などを販売するビジネスも展開していた。

コロンビア司法機関のジェンダー委員会のマグダ・ビクトリア・アコスタ(Magda Victoria Acosta)委員長は「彼女は若く、野心にあふれた女性で、未来には多くの可能性があった。しかし、多くのコロンビア女性と同様に、その夢は無残に絶たれてしまった」と悼んだ。

前日に家庭内暴力で勝訴 判決の翌日に襲撃

警察の初期調査では、この事件が性別を動機とする「フェミサイド」の可能性が高いとされている。マリアさんは生前、元交際相手からの家庭内暴力を繰り返し裁判所に訴えており、事件前日に裁判所が加害者に約3,000万ペソ(日本円で約23万円)の賠償を命じる判決を出していた。しかし、その判決が彼女の命を守ることにはつながらなかった。

女性の権利を擁護する弁護士は「法律上の勝利が、現実の安全につながらないのがこの国の現状だ」と『ガーディアン』に語っている。

28時間に1人、女性が殺される現実

地元の女性支援団体「ウーマン、スピークアウト&ムーブイット(Woman, Speak Out and Move It)」のディレクター、アレハンドラ・ベラ(Alejandra Vera)氏は「マリアさんの死は単なる偶然ではない。彼女は制度に従い、家庭内暴力を報告し、保護を求めていた。それにもかかわらず、国家は彼女を守れなかった」と非難した。

同氏によれば、コロンビアでは28時間ごとに女性が殺害されており、「これは制度的な放置と加害者への甘さの結果だ」と訴える。