アメリカの元大統領ジョー・バイデン氏の事務所は18日、バイデン氏が17日に悪性の前立腺がんと診断され、がん細胞が骨髄へ転移していることを明らかにした。
『ニューヨーク・タイムズ』によると、バイデン氏は先週、尿路の症状が悪化し、病院で診察を受けた結果、前立腺に「小さな結節(nodule)」が見つかったという。医師は17日、バイデン氏が前立腺がんであることを確定診断し、「グリーソン・スコアは9点で、すでに骨へ転移している」と発表した。グリーソン・スコアとはがん細胞の悪性度を示す指標で、6点が低悪性、7点が中程度、8〜10点が高悪性とされる。
バイデン氏の事務所は「これはより侵襲性の高いがんを意味するが、ホルモンに反応するタイプである可能性が高く、有効な治療が可能だ」「バイデン氏と家族は現在、医師と治療方針について協議している」と述べた。82歳のバイデン氏は今年1月に退任。在任中から高齢と健康状態についての懸念が続き、最終的に再選を断念した。

『ニューヨーク・タイムズ』は、退任後のバイデン氏は目立った公的活動を控え、故郷デラウェア州で静かに過ごしていたと伝えた。トランプ氏が大統領に就任して100日が経過した頃、バイデン氏はメディアのインタビューに応じ、自身が認知的に衰えているという見方を否定。「自分が出馬していればトランプに勝てた」とも発言した。しかし、昨年6月の大統領討論会での大失態により、民主党幹部はバイデン氏の再選支援を撤回。最終的に「バイデンからハリスへ」の交代が決まり、結果としてトランプ氏が再び大統領の座に返り咲いた。
『ワシントン・ポスト』によると、CNNのジェイク・タッパー氏とAxiosのアレックス・トンプソン氏による共著『原罪:バイデン大統領の衰え、隠蔽、再出馬という悲惨な選択(仮題)(原題:Original Sin)』が5月20日に出版予定で、書籍には2024年の大統領選期間中にバイデン氏の健康状態が著しく悪化し、スタッフの間で「車椅子で遊説すべきか」まで議論されていたことが記されている。この本は、バイデン氏が出馬を決断したことの是非や、民主党幹部が健康問題を隠していたかどうかを巡り、党内で再び激しい議論を呼んでいる。
『ワシントン・ポスト』は、今回診断されたがんと昨年の健康状態の関係性は不明だとしつつも、バイデン氏が歴代最年長の米大統領である事実に言及。この件はトランプ氏や他の高齢政治家に対する健康面での懸念にもつながっている。現在78歳のトランプ氏は、任期を全うすればバイデン氏を超えて史上最年長の大統領となる見込み。民主党内からもその年齢や資質を疑問視する声が上がっており、これはかつて共和党がバイデン氏に向けていた非難と同様の構図となっている。 (関連記事: 米中対立は世界の分水嶺に──台湾は孤立しているのか?ハーバード大教授が警鐘 | 関連記事をもっと読む )
一方、バイデン氏を日頃から「無能で老いぼれ、うたた寝ばかりしている」と揶揄していたトランプ氏も、18日に自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」に次のように投稿した。