台湾の台北国際コンピューター見本市「COMPUTEX 2025」が5月20日に開幕する。開幕前日の記者会見(19日)で、主催者である台湾対外貿易発展協会(TAITRA)の黄志芳董事長は、「世界の政経情勢が不透明な中、AI(人工知能)が産業の再構築と人間と機械の共創という新たな時代を切り開いている。台湾はそのAI革命の中心にあり、重要な役割を担う責任と能力を有している」と強調した。
黄氏によると、現在、世界は急速な経済構造の変化と地政学的な緊張に直面しており、企業やリーダーは次の一手を模索しているという。だが、それ以上に注目すべきは、AIと演算能力が爆発的な成長期を迎えている点だと述べた。
特に2025年はAI技術の飛躍的な進化が見込まれており、オープンソースツールの普及によって開発コストが大幅に下がり、世界中の起業家や開発者に新たな可能性が広がっている。中小企業がAIを活用して従来不可能とされていた成果を実現し、産業構造そのものを変革している。
「AIはもはや補助的なツールではなくなり、人間と機械の境界すら超えつつある」。黄氏は「AIが“チューリング境界”を越え、人間に近い思考力や創造性を見せ始めている」とし、「今や機械の方が私たちより賢いかもしれない」と笑いを交えて語った。
さらに、AI革命の影響はテクノロジー分野だけにとどまらず、宗教界でも注目されているという。現教皇が産業革命期の教皇と同じ「レオ14世」という名を選んだことも、AIがもたらす人間性、正義、労働といった問題に対し、信仰や社会的価値観の再考を促す象徴だと説明した。
黄氏は続けて、AIが今年から「長期記憶」を持つようになったと述べ、「経験を学び、技能や性格を形成できるようになる。将来のロボットは人格を持ち、生まれた工場や育った環境によって一つひとつが異なる特性を持つようになるだろう」と語った。
こうした流れの中で、台湾は半導体、イノベーション、高性能計算力という強みを武器に、このAI変革の核心的存在にあるとし、COMPUTEX 2025こそがその動向を観察・体験・推進する最適な場であると訴えた。
本年の展示会は以下の3つのテーマに焦点を当てて開催される:
1. AIとロボティクス
2. 次世代コンピューティング技術(チップ、クラウド、エッジコンピューティングまで)
3. 未来のモビリティテクノロジー
これらは単なる一過性のトレンドではなく、「今後10年のイノベーションの中核になる」と強調した。
彭双浪氏:AIは世界産業の深層変革を促すカギ
台北コンピューター協会(TCA)の彭双浪理事長は、「AIはもはや流行の話題ではなく、世界の産業を根本から変革する力となっている」と指摘。COMPUTEX 2025のテーマ「AI NEXT」は、業界の未来に対する共通の期待を象徴していると述べた。
彭氏は、台湾がAI時代において有する3つの優位性として、(1)世界トップクラスの半導体サプライチェーン、(2)高度なソフト・ハード統合力、(3)高齢化や労働力不足への現実的な解決能力を挙げ、これらが産業の柔軟性と対応力の源泉となっていると語った。
また、NVIDIA、Intel、AMDといった世界的テック企業が、台湾のAI分野における戦略的地位を高く評価していることにも言及。AI応用を模索し、戦略的パートナーを探す企業にとって、COMPUTEXとスタートアップ展示のInnoVEXは代え難いビジネス機会であると強調した。
「COMPUTEXは次世代技術を世界が体験するステージであり、InnoVEXは創造の旅の出発点だ」。台湾の強固な技術力と国際的なネットワークを背景に、AI時代の未来図を国際社会とともに描いていきたいと締めくくった。 (関連記事: 台湾クラウドサービス業者8社、「Japan IT Week 春」に出展 | 関連記事をもっと読む )
編集:梅木奈実
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