総統就任から1年を迎える5月20日を前に、頼清徳総統は19日、ネット番組「敏迪選読」のインタビューに応じ、野党による罷免提案について見解を示した。
頼氏は、「罷免は憲法により国民に認められた権利であり、かつて馬英九元総統もこの権利を肯定していた」と述べたうえで、「野党による罷免提案は、政党の手続きを通じて立法委員が行使する憲法上の権限であり、尊重せざるを得ない」との認識を示した。
また、頼氏は「公民の持つ力は非常に価値がある」とした上で、選挙だけでなく、罷免・創制・複決といった制度もまた、憲法が国民に与えた重要な手段であると強調。「今回の動きは、台湾の民主政治が一歩前進した証でもあり、間接民主制から直接民主制への移行が進んでいる」との見方を示した。
さらに、「罷免が受け入れられるようになれば、創制や複決も次第に日常化し、直接民主の権利として着実に広がっていく。これは民主主義の深化に他ならない」と語った。
現在の与野党の対立については、「民主主義による問題は、より大きな民主主義によって解決すべきだ」と述べ、超党派での対話の必要性を改めて訴えた。
制度的な対話の場については、「立法院における与野党首脳会談がその役割を果たすべき」とした一方で、「野党である国民党と民衆党が議会で多数を占めているにもかかわらず、実質的な交渉が行われていない現状がある」と指摘。「法制度を通じた交渉が十分に機能していないのは、政党の立場が大きく影響している」と述べた。
また、蔡英文前総統が退任前に「与野党間の溝の深さ」を懸念し、コミュニケーションの場を設けることを模索していたことにも言及。当時、国民党の朱立倫主席と民衆党の柯文哲主席に対話の場への参加を呼びかけたが、朱氏は招待を辞退し、柯氏は参加したものの成果は得られなかったという。
頼氏は、自身が総統に就任して以降も、野党との接触や対話の機会を模索してきたが、実現には至らなかったと説明。そのうえで「現在の対立は単に対話が不足しているからではなく、コミュニケーションはあくまで手段である。政党が対話を受け入れる姿勢を持たなければ、前進は難しい」と述べた。
編集:梅木奈実 (関連記事: 評論》台湾に「真理部」が発足?頼清徳政権の対中交流制限に教育界から懸念の声 | 関連記事をもっと読む )
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