台湾の頼清徳総統は最近、台北の総統府で『日本経済新聞』およびその英語版『Nikkei Asia』の共同インタビューに応じた。インタビューでは、半導体供給網や米中関税戦争、日本の地域的役割などについて語り、台湾の将来的な戦略方針を明確に示した。これは、頼氏が2024年5月に総統に就任して以来、初めて日本メディアによるインタビューに応じたものである。
頼総統は、台湾は半導体とAI産業を中心に、米国や日本などの民主国家と連携し、中国を排除した「非レッド・サプライチェーン(Non-Red Supply Chain)」を構築し、補助金や知的財産侵害を通じた中国の「不公正な貿易」に対抗していくと述べた。頼氏は「中国は安価な製品を投げ売りし、自由貿易体制を破壊している。民主主義国家には、ルールと価値を共に守る責任がある」と強調した。
また、日本が素材・製造装置に強みを持ち、台湾が高度製造を担い、米国がIC設計やマーケティングをリードし、オランダなどの装置メーカーを加えれば、民主主義国家による半導体エコシステムが形成できると説明。「これは経済的な選択にとどまらず、価値観の選択でもある」と語った。
さらに頼総統は、日本により積極的なリーダーシップを発揮してほしいと訴えた。インド太平洋地域と世界の民主陣営が専制体制からの圧力に直面する中、「台湾は日本がCPTPP加盟を支持し、日台間で経済連携協定(EPA)を締結することを望んでいる」と述べた。日台が経済的な同盟関係を深めることで、より強靭で政治的にも安定した供給網の構築につながると語った。
トランプ氏の高関税方針に「対話で対応」
米国のトランプ政権が台湾製品に対して32%の「互恵関税」を課すと発表した件について、頼総統は「厳しい挑戦だ」と認めつつ、「対抗ではなく対話」で臨む姿勢を示した。ゼロ関税を起点とする提案から出発し、二国間の貿易協定締結を目指したいと語った。
また、台湾はすでにTSMCの米国工場設立や天然ガスの購入などを通じて貿易赤字の縮小に努めており、今後も対米投資と協力を継続していく考えを示した。
対中関係では「平和共存・対等な尊厳」
台湾と中国との関係について頼総統は、「平和共存、対等な尊厳」という立場を改めて強調した。中国が依然として軍事的威嚇や浸透工作を続けているとしつつも、台湾としては善意をもって対応し、「対立を対話に、封鎖を交流に」転換したいと述べた。また、過去に習近平国家主席とタピオカミルクティーを共にしたいと語った自身の発言を再び取り上げ、「戦争に勝者はいない」とのメッセージを送った。
最後に、頼総統は、「民主、平和、革新、正義こそが日本と共に取り組むべき方向だ」と述べ、台湾と日本が協力して台湾海峡とインド太平洋地域の自由・安定・繁栄を守るよう呼びかけた。
『Nikkei Asia』の報道によれば、頼清徳氏は民主台湾の象徴として、中国からの圧力や国内の政治的課題に直面する中で、より率直かつ揺るぎない戦略的思考を示しているという。取材現場には紫色のランの花と「看世界」と題された書道作品が飾られ、頼氏のグローバルな視野と主権防衛への決意を象徴していた。今回の単独インタビューは台北の総統府で実施され、『日本経済新聞』の山崎浩志編集総長が自ら司会を務めた。インタビュー時間は1時間を超えたという。『Nikkei』はアジアにおける経済・政治の主要な世論指標であり、『Nikkei Asia』は国際社会に向けて発信される高い政策影響力を持つ媒体である。 (関連記事: 独占インタビュー》「日本防衛は台湾防衛そのもの」――元陸自将軍が語る、中国抑止のカギと“ワンシアター”構想の全貌 | 関連記事をもっと読む )
編集:梅木奈実
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