蔡英文氏がリトアニア訪問 フランス人観光客が「台湾の総統だ!」と感動の声と記念撮影

前総統の蔡英文がヨーロッパ、リトアニアを訪問。(蔡英文事務所提供)

「Taiwanだよ、Thailandじゃない」──かつて台湾人の間で自嘲的に使われていたこの言葉も、いまや国際社会の中ではあまり聞かれなくなっている。総統退任後も民主主義外交を積極的に推進している台湾の前総統・蔡英文氏は現在、ヨーロッパを訪問中である。現地では政界関係者や華僑から熱烈な歓迎を受けただけでなく、リトアニアではフランス人観光客との交流を通じて、その国際的な知名度の高さを示した。

今回の訪問には、蔡氏の元側近である黄重諺氏も同行。蔡英文氏は5月11日、リトアニアの水上城を訪問し、国会の親台議員グループの会長が終始同行して案内を務めた。見学中、フランスからの観光客が蔡氏を見かけて驚き、次々と写真を撮り始めた。蔡氏はその様子に気づくと、自ら振り返って観光客に声をかけ、ある男性とは笑顔でツーショット撮影に応じた。同じ団体の女性観光客は「私たちは台湾の民主主義と自由が大好きです」と語り、感動した様子を見せた。

こうした即興的な交流からも、たとえ退任後であっても蔡英文氏が国際的な旅行者にとって「台湾総統」として強く認識されていることが改めて裏付けられた。

ゲディミナス塔を訪れた際には、リトアニアに留学中の台湾人学生17人と共に行動し、蔡氏は台湾を象徴する小さな贈り物──台湾製のバッジ、イーメイのプチシューや「脆笛酥」などを手渡し、「台湾に戻ったらぜひオフィスに遊びに来て話しましょう」と学生たちを激励した。徒歩で帰る途中、蔡氏は「バルトの道」の起点に足跡を残し、「奇跡(Stebuklas)」を象徴する石畳の上で回転しながら願い事をかけ、「台湾の平和と安定」を祈った。

20250512-前總統蔡英文赴歐洲立陶宛訪問。(蔡英文辦公室提供)
台湾前總統蔡英文がヨーロッパのリトアニアを訪問した。(蔡英文オフィス提供)

同日の午後、蔡英文氏はリトアニア建国議会の議長と約1時間にわたり会談を行った。蔡氏は議長に一本のペンを贈呈し、「このペンで台湾について多くのことを書いてもらいたい」と思いを伝えた。総統在任の8年間、蔡英文氏は民主主義外交を推進し、米国、日本、欧州など民主主義諸国との関係を強化してきたことで、「台湾総統」という存在を国際社会の中で明確に印象付けることに成功した。

蔡氏はこれまでに数多くの国際メディアのインタビューを受け、また「コペンハーゲン民主主義サミット」など重要な国際フォーラムにも招かれている。フランスの有力紙『ル・モンド』は、彼女が台湾を国際社会の周縁から中央の舞台へと押し上げ、民主陣営の重要なパートナーとしたと報じた。『ボイス・オブ・アメリカ(VOA)』もまた、蔡氏が退任前に「米中対立の中で台湾の立場を堅持したリーダー」として紹介した。

初めて総統選に立候補した当初、国際社会では台湾とタイの区別がつかないことが多かったが、今では「世界の多くが台湾を知っている」という状況に変わりつつある。韓国の人気YouTuber「胃酸人」も、ニューヨークで行った街頭インタビューの中で、既に退任していた蔡英文氏の知名度が高いことを示した。総統在任中、蔡英文氏は欧米や日本の民主国家との協力、そして積極的な国際的発信を通じて、台湾という存在を世界の中で明確に位置付けた。そして彼女自身の高い知名度が、こうしたイメージの転換における重要な原動力となったのである。 (関連記事: 蔡英文氏、リトアニアで演説『小国でも脅しには屈しない』 欧州に民主連携を訴え 関連記事をもっと読む

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編集:梅木奈実

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