吳典蓉コラム:対米交渉 賴清德は蔡英文に及ばないのか?

アメリカのトランプ大統領が関税攻撃を仕掛けた後、国際政治経済情勢は依然として混乱しており、賴清德総統は民進党政権以来最も厳しい情勢に直面している。(資料写真、柯承惠撮影)
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トランプ政権が台湾に32%の重税を課す中、台湾で繰り広げられているのは、蕭美琴副総統が春巻きの中身について質問し、賴清德総統が動画に顔を出して「私たちには少なくとも音楽がある」と述べる場面である。国民が恐慌に陥る中、国家指導者が「可愛らしさを装う」ことに忙しく、怒りを買うのも無理はない。しかし、この「国難」の時に、指導者がこれほど軽重をわきまえない振る舞いをするのは、決して偶然ではない。これは民進党が執政して約10年間の統治手法であり、「アメリカを無条件に信頼する」ことが執政の核心である。この時点で、統治手法はもはや執政の核心の崩壊を隠すことができなくなった。「時宜に合わない」という表現でさえ、重要な点から目をそらした言い方である。

「現在は台米関係が最良の時期である」というのは、ここ数年、民進党政府が繰り返し唱えてきた大内宣伝である。しかし、台米関係が良いかどうかは自分が決めることではない。トランプの台湾に対する関税攻撃により、「台米関係最良説」は嘘か妄想でなければ、さらに深刻なのは、アメリカに対して石を投げて道を尋ねる手段さえ見つからない状況では、「関係」という言葉すら語れないということである。この危機的時期に、緑営の一部は蔡英文前総統に対米交渉の出馬を要請するよう呼びかけている。この提案は暗に蔡賴の対立を煽るものだが、たとえ賴清德が心の壁を取り払い、蔡英文に国難に共に立ち向かうよう要請したとしても、現時点ではもはや効果がないだろう。なぜなら、蔡英文政権時代の行為こそが問題の核心だからである。 (関連記事: 舞台裏》米国土安全保障省を動かす!内戦時の銃口が向くことを懸念 台米連携で暴力団の武装解除、竹聯幇主の権力闘争を注視 関連記事をもっと読む

中華民国台湾政府で親米でない政権はおそらくなく、国民党であれ民進党であれ執政に違いはない。国民党は野党であっても、依然としてアメリカの態度や立場を非常に重視している。しかし、親米であることと無条件にアメリカを信頼することは別問題である。蒋介石・蒋経国父子は「米中共同防衛条約」があった時でさえ、主体性を保ち、アメリカに好き勝手にさせなかったことは言うまでもなく、「二国論」を提唱した李登輝でさえ、できる限り両岸の交流チャンネルを維持した。真にアメリカに全面的に賭けたのは蔡政権からだろう。蔡英文は2期目の初期に萊豬(ラクトパミン入り豚肉)の輸入を推進したが、これはアメリカ側の要求を満たすには至らなかった。蔡英文の任期中にバイデン政権に協力し、台積電のアメリカ進出・投資を促進したが、アリゾナ州の環境や人材は理想的とは言えない場所にもかかわらず、台積電は涙を飲んでアメリカに赴いた。バイデン政権は少なくともチップ法案を提出し、台積電に適度な補助金を与えた。トランプ政権は就任するとすぐに選挙公約を守り、台湾に「盗まれた」チップを取り戻そうとした。彼は確かに全くコストをかけずに台積電に約2000億ドルの投資をさせたが、アメリカの商務長官はそれでも満足せず、台湾の半導体を全てアメリカに戻すと宣言した。