トランプ氏、相互関税を90日延期も市場は警戒継続 エコノミスト誌が「3つの懸念」を指摘

2025年4月9日、アメリカのトランプ大統領がホワイトハウスの大統領執務室で発言、傍らには財務長官ベストと商務長官ルトニックが同席。(AP通信)

米国のドナルド・トランプ大統領は9日、突如として姿勢を軟化させ、世界の市場に混乱をもたらしていた「対等関税」の導入を90日間延期すると発表した。この政策が全面的に発効してからわずか12時間しか経っておらず、今回の決定により、対中国以外のほとんどの措置は猶予されることとなった。一方で、中国からの輸入品に対する関税はさらに引き上げるとしている。この決定を受け、米国株式市場は祝賀ムードで上昇したが、英誌『エコノミスト』は、瀬戸際にある世界貿易戦争のリスクは依然として存在し、3つの大きな懸念が残っていると指摘している。

トランプ氏は、今回の関税猶予は、すでに75か国以上が米国との協議に前向きな姿勢を示し、米国が抱く貿易への不満の解消に向けて共に取り組む意思を示したことによるものだと説明した。『エコノミスト』誌は、この決定には不安定な米国債市場の動きも影響している可能性があるとし、米国株および先物価格が反発した背景には、投資家の「経済崩壊は目前に迫っている」との恐怖感が後退したこともあると分析している。

『エコノミスト』誌によると、トランプ氏が4月2日に「解放日関税(Liberation Day Tariffs)」を発表して以降、投資家から各国外交官に至るまで、多くの関係者が共通して不安に陥ったとし、「トランプ氏はどうやら世界の貿易秩序を根本から作り替えるつもりであり、経済や金融市場への悪影響など全く意に介していない」という結論に至ったとしている。そのため、世界の市場は混乱に陥り、エコノミストや専門家の間では「今年中に景気後退に陥る」との見方も広がっていた。しかし、トランプ氏が今回突然方針を転換したことは、「予測不能な型破りの政治家」である彼ですら、市場からの強い反発を無視できなくなったことを意味すると指摘している。

市場の楽観論の裏に潜む3つのリスク

世界の市場が一時的に楽観ムードに包まれている一方で、『エコノミスト』は、現在もなお3つの大きな懸念が残されていると分析する。

1. 中国への関税はさらに強化

トランプ氏の「善意」は無条件ではない。中国に対する関税を125%に引き上げた。これは、12時間前の104%よりさらに高く、先週発表された「対中対等関税」の34%を大きく上回るものである。トランプ氏は、中国政府が報復措置を取ったことを理由に「特別な懲罰」として課税を強化したと説明。SNS上では「中国は世界市場に対する敬意を欠いている」と批判している。

2. 10%の「基本関税」は継続中

今回延期されたのは「対等関税」のみであり、「基本関税(基礎関税)」とされる一律10%の関税措置はそのまま残されている。例えば、自動車の関税はすでに先月25%に引き上げられており、医薬品や半導体などの分野でも新たな関税がまもなく発表される可能性がある。結果として、今回の延期により「壊滅的な貿易戦争」は回避されたかに見えるが、わずか2か月間で米国の平均関税率は約3%から20%近くまで跳ね上がり、ここ100年で最も高い水準に達している。

3. 「対等関税」は延期されたのみ、撤回ではない

今回の発表でトランプ氏が約束したのは、あくまで90日間の延期であり、対等関税の完全撤回ではない。カナダやメキシコに対する過去の関税措置のように、彼が再び態度を急変させる可能性があるとの懸念は根強い。投資家たちの間では、彼のタカ派的発言や政策をますます疑問視する声も強まるだろう。トランプ氏の貿易戦略は極めて不確実性が高く、政策の一貫性が乏しいからである。ただし、市場がこの一連の発表に対して比較的冷静な反応を示す場合、トランプ氏はむしろ政策を押し通すための自由度をさらに得る可能性もある。 (関連記事: 世界の株式市場が急騰 トランプ氏が関税を90日間停止 台湾先物は夜間取引で9%超上昇 関連記事をもっと読む

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編集:梅木奈実

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