トランプ氏が関税撤回の理由とは?英FTが分析「真の理由は米国債危機」

2025-04-10 11:41
アメリカ大統領トランプ氏。(AP通信)
アメリカ大統領トランプ氏。(AP通信)

米国のドナルド・トランプ大統領は9日、いわゆる「解放日」関税の大部分を突然撤回した。実はこの日が「解放日」関税の全面実施初日でもあった。この決定により米国株は急騰。英紙『フィナンシャル・タイムズ(FT)』は、今回の政策の方向転換は市場、ウォール街、そして議会からの圧力によって、トランプ氏が妥協を余儀なくされたことを示していると分析した。

トランプ氏が4月2日に強気で打ち出した多方面にわたる貿易戦争は、わずか数日で経済的、財政的、政治的に持続不可能であることが露呈した。トランプ氏は9日、突如として中国以外の貿易相手国への「対等関税」の徴収を停止すると発表(ただし10%の基礎関税は維持)し、90日間の猶予期間を設けることで、市場に一時的な安堵感をもたらすと同時に、今後の貿易交渉に向けた余地を確保した。

『フィナンシャル・タイムズ』は、この政策転換はトランプ氏にとって明らかに大きな挫折であると指摘する。トランプ氏はこれまで、関税政策によってアメリカを「解放」し、世界の不公正な貿易体制を打破すると主張してきた。そして、自身こそがその構造を再編する勇気を持つ唯一の米大統領であると語っていた。しかし、9日の突然の譲歩は、トランプ氏にとって最も象徴的な政治的公約すら、投資家、議会、そして大口献金者たちの反発から逃れることはできなかったことを示している。

2025年4月9日,美國總統川普在白宮橢圓辦公室發表談話,一旁是財政部長貝斯特與商務部長盧特尼克。(美聯社)
2025年4月9日、トランプ大統領がホワイトハウス大統領執務室で発言を行い、傍らには財務長官ベストと商務長官ルトニックが同席。(AP通信)

トランプ氏は、ここ数日間、関税停止を検討していたと述べ、9日朝に最終決定を下したと語った。彼は、市場の恐怖感が自身の態度を変えた最大の要因であると率直に認めた。「人々は少し怯えていた。私は皆が少し過剰に反応していたと思う。感情的になりすぎていた」と語り、関税の一時停止は「心からの判断」であったと強調した。

資産運用会社SLCの責任者であるデック・マラキー氏は『フィナンシャル・タイムズ』の取材に対し、「今回の出来事は、トランプ氏がいまだに市場を注視しており、自分が行き過ぎたことに気付いたことを示している。市場の抑止力としては良い兆候だ」と述べた。とはいえ、米国株式市場は、トランプ氏が一時的に強硬姿勢を取ったことで激しい売り圧力にさらされていた。トランプ氏はフロリダ州でゴルフを楽しんだ週末を過ごした後、動揺する貿易相手国に対し極めて高い交渉条件を突き付けた。

しかし、圧力が次第に高まる中で、共和党の盟友たちは公然とトランプ氏の貿易政策を批判し始め、民主党はこの機会を逃さず、貿易戦争をトランプ批判の突破口として利用し、国民の利益を損なう可能性があると糾弾した。また、投資家や大口献金者(イーロン・マスクを含む)からの反発も日に日に強まっていた。

トランプ氏は7日から戦略を見直し、日本や韓国との貿易交渉を開始し、ウォール街から最も信頼を得ている人物とされるスコット・ベッセント財務長官を起用して貿易相手国との交渉を主導させた。 (関連記事: トランプ氏、相互関税を90日延期も市場は警戒継続 エコノミスト誌が「3つの懸念」を指摘 関連記事をもっと読む

美國財政部長貝森特。(美聯社)
アメリカのベッセント財務長官。(AP通信)

トランプ氏の貿易政策顧問であり、関税強硬派として知られるピーター・ナバロ氏は、その影響力を一部失った模様だ。ナバロ氏は以前『フィナンシャル・タイムズ』への寄稿で、「トランプ氏は交渉しているのではなく、不公正な体制に直接圧力をかけている」と主張していた。一方、ベッセント氏は、「政府は本格的な交渉を試みている」と述べ、トランプ氏が関税の一時停止を検討する際にベッセント氏や他の顧問とは話し合っていたものの、ナバロ氏には言及していなかったことが明らかになった。

最新ニュース
50カ国が順番待ちをする中、なぜトランプは日本を交渉へ指名したのか? 彼らは誰を派遣?交渉の切り札は何?台湾は何を学べるのか?
噂が現実に:トランプが関税を90日間停止し株式市場が急騰、投資家は本当に安心できるのか?
吳典蓉コラム:対米交渉 賴清德は蔡英文に及ばないのか?
舞台裏》アメリカは演技をやめた!台湾に直接核エネルギーと武器を売り込み だがトランプが本当に欲しいのは…。
速報》台湾・新北、桃園で浸水警戒発令 鶯歌・樹林・楊梅など6地域に注意呼びかけ
トランプ氏、相互関税を90日延期も市場は警戒継続 エコノミスト誌が「3つの懸念」を指摘
世界の株式市場が急騰 トランプ氏が関税を90日間停止 台湾先物は夜間取引で9%超上昇
【速報】トランプ氏、関税措置を90日猶予 台湾株急騰で19,000突破 TSMC・鴻海はストップ高
台湾は習近平への大きな贈り物? 『エコノミスト』:アメリカは最終的に中国を再び偉大にする
トランプが「台湾の砦」全体を移転? 米商務長官:「半導体産業すべて」が台湾から米国へ移動
舞台裏》米国土安全保障省を動かす!内戦時の銃口が向くことを懸念 台米連携で暴力団の武装解除、竹聯幇主の権力闘争を注視
タイガーエア台湾初の女性董事長に黄世惠氏就任 LCC運営に精通、英語・日本語も堪能
松井秀喜氏、恒例の野球教室開催 魚雷バットに言及「違反でなければ自由」
舞台裏》柯建銘に何が起きているか誰が理解できるのか かつて柯文哲は違和感を、民進党立法委員は不満を、卓栄泰は苛立ちを感じ…
トランプ氏、対日24%関税を決定 石破首相の投資表明も効果なし、台湾も他人事ではない
琉球放送の元アナウンサー、同僚に薬物混入 睡眠薬入り飲料で急性薬物中毒、傷害罪で起訴
【台湾株暴落】TSMC800元割れ、鴻海は3日連続ストップ安 国安基金の支え効かず
米国、中国からの一部輸入品に104%の関税 ホワイトハウス「8日発効、9日徴収開始」
トランプ政権が米ウォール街を混乱へ、08年金融危機再来か! 英メディア:米企業「目立つ鳥は撃たれる」を恐れ、公然と敵対できず
トランプ氏の「相互関税」は水増し4倍? 米シンクタンクが誤算指摘、台湾の実質税率は10%程度
【台湾】トランプ氏の対中関税包囲網に板挟み 学者「中国は非平和手段に出る可能性」
トランプ氏、TSMCに圧力 「アメリカで工場を建てなければ100%関税」
【速報】台湾・宜蘭でM5.8の地震 北部広域で揺れ、国家警報システムも発動
寄稿:世界大地震の中で、緑陣営はまだ罷免の夢を見ている
【新新聞】トランプ高関税で世界を交渉テーブルに引き戻す 台湾の最大の弱点が露呈
舞台裏》関税大戦で台湾政府は苦難の女主役! 頼清徳の読書会閣僚は高慢、鄭麗君は後始末を担うのみ
【速報】台湾株価急落で国家安定基金が出動決定、必要に応じて資金投入 台湾株式市場の安定を維持へ
【日経平均1876円高】石破首相がトランプ氏と関税協議 米日会談で市場に反発ムード
「相互関税」唯一の免除条件? 「米国成分」適用除外の真相と台湾への影響とは
【台湾】元副総統が蔡英文氏の対米交渉起用を提言 「現内閣は責任を果たせるのか」と政権に5つの注文
米国「相互関税」政策、ベトナムの「ゼロ関税」提案でも揺るがず 米商務長官「国家安全保障の問題」と強調
【台湾】対米関税交渉に蔡英文氏起用案 前副院長「特使として適任」と指摘 TSMC投資も交渉材料か
【台湾】民進党党員2人が中国スパイ関与で除名 対中浸透工作に厳正対応
李忠謙コラム》関税が引き起こす世界経済の恐慌、トランプはいつ手を引くのか?
広末涼子容疑者、病院で看護師に傷害容疑現行犯逮捕 事故搬送後の“異常行動”に衝撃広がる
「北京が報復を続けるなら、中国に50%の関税を課す!」トランプ氏が再び強硬姿勢、中国製品への関税が104%に達する恐れも
JR秋葉原駅に“ちょっとミライ”が到来──次世代型エキナカ施設「エキュート秋葉原」、4月7日グランドオープン
【MLB】大谷翔平がドジャースと共にホワイトハウス訪問 トランプ大統領「彼はまるで映画スター」
米国が「不公正貿易10カ国」を公表:中国・日本が名指し、台湾の米国産豚肉・牛肉にも懸念
日米首脳が関税問題で電話会談 石破首相「一方的関税に強い懸念」 閣僚級協議へ
韋安観点|トランプの「アメリカ手術」:この治療は命取りになるのか?
台湾株、2000ポイント下落 過去には「79.8%暴落」も 当局が緊急対策
セブン店長が半年無休で自殺、過重労働で労災認定
台湾先住民が映像で語る「忘れられた戦い」 3年をかけた記録作品『百年原殤』
台湾株ショック止まらず 台湾株価指数先物がナイトセッションで再び暴落、一時17600ポイント割れ
日経平均が2644円安 トランプ氏の「相互関税」表明で売り殺到、史上3番目の下げ幅
【46%関税】「ベトナム製」がNike直撃 トランプがスニーカー市場を揺らす
舞台裏》中国、対台軍演に極超音速ミサイル『鷹撃21(YJ-21)』を投入 台湾は“極めて深刻”と評価
不合理な関税には報復せず 台湾総統・頼清徳氏が5つの戦略を発表「台米はゼロ関税から始める」
TSMCが30兆円を投資しても高関税を免れず BBCが提起:「台湾にはまだ交渉の切り札があるのか」