台湾ドル急騰の黒幕判明 中央銀行が異例の声明6本発表

2025-06-02 19:10
台湾ドルは5月に単月で2.088元急騰し、上昇率は6.98%に達し、1988年以来最大の単月上昇幅を記録した。為替市場の激しい変動に直面し、中央銀行は昨日6つの声明を発表した。(資料写真/柯承惠撮影)
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米国大統領トランプが対等関税政策を発表し、市場におけるドルと米国債への疑念を引き起こした。これを受けて、ドルの動向は急落し、国際資金が新興市場に流入した。新台湾ドルは5月の1カ月間で2.088元も急上昇し、上昇率は6.98%に達した。1988年以来の最大の月間上昇幅となる。外国為替市場の激しい変動に直面して、中央銀行は昨日(6月1日)、6項目の声明を発表した。外資の投機を打撃する立場を再確認し、また、ドルを支持する珍しい発言を行い、「ドルが国際的な主要準備通貨としての地位は依然として揺るぎない」と強調した。

中央銀行は、最近新台湾ドルの為替レートは顕著に安定しているが、市場の投機や憶測による動揺には引き続き警戒する必要があると指摘し、評論家やメディアに対し為替レート予測の広範な拡散を避けるよう呼びかけた。それにより、為替市場の秩序を維持することを目的としている。同時に、輸出入業者に対し、実際の需要に基づいて為替を行うべきであり、市場情報に過剰に反応して誤った判断をし、損失を被ることを避けるよう注意を促している。

外資の投機に名指しで警告 中央銀行が異常な資金操作に警鐘

声明の中で、中央銀行は場外監査の結果、一部の外資が台湾株に投資するためと申告した多額の資金が、実際には新台湾ドル預金口座に留まっており、投資活動が見られないことを明らかにした。為替レートによる差益をねらった投機の疑いがあるとし、送金申告の原則に違反しているとした。中央銀行は、外資の資金は当初の申告用途どおりに使用されるべきであり、為替差を利用した投機は認められないと再確認し、引き続き監視し、法に基づいて処理することを表明した。

中央銀行は、現在の為替レートの変動は主に国際的な資本の大量かつ頻繁な移動に起因すると強調した。2024年の台湾の外資と国内資金の進出規模は商品貿易の外為収支の19.3倍に達しており、短期資金の流動が為替レート変動の主因となっていることを示している。

最近の新台湾ドルの強い値上がりについて、中央銀行は、台湾の経済の基礎的な健全さを反映していると指摘した。2023年と2024年第1四半期のGDP成長率は欧米や日本などの主要経済体を上回った。また、5月29日までに、ドル指数(DXY)は8.49%下落し、新台湾ドルは9.53%上昇した。上昇率は円やウォンをわずかに上回っているが、スイスフランやユーロを下回っている。

ドルの安定性を強く支持 マール・ア・ラーゴ協議の噂を否定

市場で米ドルの地位に対する懸念が広がるなか、中央銀行は「ドルは依然として世界の主要な準備通貨および取引通貨としての地位を堅持している」と強調した。トランプ政権が最近打ち出した関税に関するシグナルや、「マール・ア・ラーゴ協定(Mar-a-Lago Accord)」によってドル安を誘導するとの憶測が一部で浮上しているが、中央銀行はホワイトハウス経済諮問委員会(CEA)のミレン委員長とベセント財務長官の最新の発言を引用し、密かな為替協定を進めているとの報道を否定。「強いドル政策」は依然として米国の基本方針であるとあらためて表明した。

同時に中央銀行は、米国債についても「依然として高い信用力と流動性を有しており、格付けはAA+で、G7諸国の中ではドイツ、カナダに次ぐ水準にある」と指摘。主要な国際金融機関にとって適格な担保資産として広く受け入れられており、米ドルおよび米国債の国際的な金融地位が短期的に揺らぐことはないとの見方を示した。

中央銀行、「為替市場の安定に向けた調整を継続」

中央銀行は、新台湾ドルの為替レートは基本的に市場の需給によって決まるとの原則をあらためて強調したうえで、「為替レートに非合理的な変動が生じたり、金融安定を脅かす可能性がある場合には、責任に基づき適時に市場に介入し、為替の動的な安定を維持する」との方針を示した。

今回の新台湾ドル急騰は、台湾経済の先行きに対する市場の信頼感を反映する一方で、国際資金の流入による潜在的なリスクも浮き彫りにした。中央銀行は今回、為替市場の状況および政策スタンスについて積極的に説明を行い、市場の過熱感を冷まし、金融システムに対する信頼の維持を図ろうとしている。

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