台湾文化センター主催「台湾映画上映会2025」が日大で開催、映画『タイペイ、アイラブユー』上映後には監督と批評家が登壇へ

2025-06-01 15:05
映画上映後にはトークイベントが行われ、プロデューサーのエイミー・マー氏がオンラインで参加。会場には、上映企画のキュレーターを務めた映画監督のリム・カーワイ氏と映画批評家の相田冬二氏が登壇した(写真/黃信維)。

2025年5月17日、「台湾文化センター台湾映画上映会2025」の第1回上映イベントが、日本大学文理学部オーバル・ホールにて開催された。上映作品は、台北の街を舞台に10人の監督が多様な愛の形を描いたオムニバス映画『タイペイ、アイラブユー』だ。当日は、主催である台北駐日経済文化代表処台湾文化センターの曾鈐龍(そう けいりゅう)センター長も来場し、日本と台湾の文化交流の場として多くの観客が集まった。

プロデューサーのエイミー・マー氏がオンラインで参加し、映画監督で本上映企画のキュレーターでもあるリム・カーワイ氏、映画批評家の相田冬二氏が登壇してトークイベントが行われた。
映画上映後にはトークイベントが行われ、プロデューサーのエイミー・マー氏がオンラインで参加。会場には、上映企画のキュレーターを務めた映画監督のリム・カーワイ氏と映画批評家の相田冬二氏が登壇した(写真/黃信維)

​映画上映後には、プロデューサーのエイミー・マー氏がオンラインで参加し、映画監督で本上映企画のキュレーターでもあるリム・カーワイ氏、映画批評家の相田冬二氏が登壇してトークイベントが行われた。司会は台湾映画史研究者であり日本大学文理学部教授の三澤真美恵氏、通訳は中山大樹氏が務めた。

トークではまず、リム氏が「本作は台湾、香港、フランス、ブータン、マレーシアなど10人の監督が集結し、台北の街を背景に“愛”をテーマに描いている。10話それぞれの違いと共鳴が見どころ」と紹介した。相田氏は「見知らぬ者同士が触れあう刹那的な時間が連なり、台北という都市を介して“出会い”と“すれ違い”が映し出されている。1回ではなく何度も観て、そのつながりを感じてほしい」と語った。

プロデューサーのエイミー・マー氏は、企画のきっかけについて「コロナ禍を経て、人との心の触れ合いや対等な関係性を描くことが必要だと感じた。10人の監督には自由に台北の“愛”を表現してもらった」と述べた。監督の選定にあたっては、「結果的に台湾と海外から5人ずつ、男女も5人ずつという構成になった。文化的背景が異なる監督たちが、それぞれの視点で“情”を描くことで、豊かで多層的な台北が浮かび上がった」と語った。

出演俳優のキャスティングについての裏話も披露され、台湾の人気歌手ウー・バイ氏が新聞配達員として全話に登場する理由について、マー氏は「街のどこにでも現れ、誰とでも関われる存在として新聞配達員を設定した。その象徴として“台湾を代表する顔”であるウー・バイさんがふさわしかった」と説明した。また、リン・チーリン氏の特別出演についても「当初は本人に出てもらう予定だったが、最終的な登場の形がかえって本作らしくて素晴らしい」と語った

プロデューサーのエイミー・マー氏がオンラインで参加し、映画監督で本上映企画のキュレーターでもあるリム・カーワイ氏、映画批評家の相田冬二氏が登壇してトークイベントが行われた。
映画上映後にはトークイベントが行われ、プロデューサーのエイミー・マー氏がオンラインで参加。会場には、上映企画のキュレーターを務めた映画監督のリム・カーワイ氏と映画批評家の相田冬二氏が登壇した(写真/黃信維)。

観客からは「台湾でよく見る光景や人物がリアルに描かれていて共感した。台湾の人々の感想はどうだったか?」という質問が寄せられ、マー氏は「台湾の観客も、どのエピソードが好きか、どの登場人物に自分を重ねるかで盛り上がっていた。日本の観客の皆さんにも、自分の体験に重ねて楽しんでもらいたい」と答えた。

またリム氏は、香港と台湾の関係性を描くエピソードのフェアな描写にも触れ、「この作品は、初対面であってもすでに対等であること、その平等性が台湾らしさに通じている」と評価した。DJとラッパーの関係性を描いた話などを例に、「人と人がコラボレーションするように響き合う構成こそ、本作の醍醐味」と語り、マー氏のプロデュースセンスに感嘆の意を示した。

トークイベントの最後は、「本作を観たあと、誰が好きだったか、どの話が響いたかをぜひ語り合ってほしい。映画は共感と発見の場であり続けてほしい」というメッセージで締めくくられた。

『タイペイ、アイラブユー』上映会は、日本大学中国語中国文化学科との連携企画として実施され、台湾映画の多様性と国際性、そして今を生きる台湾の感性を日本の観客に届ける機会となった。台湾映画の魅力を改めて実感するひとときとなり、観客の多くが満足げな表情で会場を後にした。

編集:田中佳奈