米中AI大戦の行方──鍵を握るのは「速度」ではなく「応用力」

2025-05-30 17:38
生成AIモデル「Ideogram 2.0 Turbo」によるビジュアルイメージ。(AI生成)
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NVIDIAのジェンスン・フアン(黄仁勋)氏が最近発言した「中国はAI分野でアメリカに後れを取っていない」という言葉は、シリコンバレーの技術業界の主要人物にとっては賛同しがたいかもしれない。先週のGoogle I/O大会で、最新のGemini AIモデルは世界最速で、トークン出力速度がDeepSeekの10倍であると主張された。しかし、「日本経済新聞アジア版」(日経アジア)は28日、AIモデルの出力速度はAI性能の指標の一つに過ぎず、今はAIアプリケーションをどれだけ早く発展させられるかが、AI戦争で実際に優位に立つ鍵だと指摘した。

アメリカの各AI企業は、自社の最新モデルの優位性を競って誇示している。ChatGPTを開発したOpenAI、イーロン・マスク氏のxAI、そして新興企業AnthropicによるClaudeなども例外ではない。中国のアリババも、先月発表したQwen3モデルが数学的推論とプログラミング能力で競合を凌駕し、必要な計算能力が業界平均よりも著しく低いと強調している。しかし、AI軍拡競争の最中、「日経アジア」は、最先端のモデルを持っていることがもはやそれほど重要ではなくなるかもしれないと指摘している。

「AIの次の戦場は応用だ」

マッコーリー・アジアテクノロジー(Macquarie)のアーサー・ライ(Arthur Lai)研究部長は、AIの次の戦場は応用面にあると述べた。彼は「DeepSeekのような技術は分散型訓練、モデルの分割、あるいは分散型の微調整を実現する可能性があり、これによって各企業のコストや計算ニーズが軽減される」と語った。AIモデルが広く採用される一方で、計算能力のニーズが高まり続けているが、「高度な成長潜在力を持つ領域は『AIエージェント』である」と指摘している。簡単に言うと、「AIエージェント」はデジタルアシスタントの一種で、人間はタスクを直接それに任せることができ、作業の過程に参加する必要がないという。

ミシガン大学でコンピュータビジョンとAIを専門とするジェイソン・コルソ(Jason Corso)教授もこの見解に賛同している。コルソ教授は、どの企業や国のAIが「進んでいる」と言うかを区別するのは難しいと指摘する。なぜなら、これらのAIモデルが現実世界でどのように影響を与えているかを評価する公認の基準が存在しないからだ。「米国は全体的なモデル能力や処理能力で先行しているかもしれないが、これらの能力と処理量が実際の価値に転じなければ、リードした優位性は意味がない」と述べた。 (関連記事: 最強AIモデル「ChatGPT o3」がシャットダウン拒否、プログラムコードを「自己改変」か マスク氏も懸念表明 関連記事をもっと読む

コルソ教授は、「Googleは、AIモデルが『最速』であり、国際数学オリンピックの問題を解決できると主張することはできるかもしれないが、これらの成果は人工知能の一部を測るだけであり、エンドユーザーにとって直接の有用性はない」と語った。また、「表面的には全てが進化改善されているように見える」「しかし、現実的な観点から見ると、生成トークンの速度が本当に意味があるのか問うべきだ」とも指摘している。