2025年の「 IISSアジア安全保障サミット:シャングリラ会合」が、5月30日から6月1日までシンガポールで開催される。今回、中国の国防部長である董軍氏が会議を欠席するとの報道がある中、初めて出席するアメリカの国防長官ピート・ヘグセス氏と、日本の防衛大臣・中谷元氏がインド太平洋の安全保障戦略についてどのように語るかに注目が集まっている。
『フィナンシャル・タイムズ』が5月26日に報じたところによると、「シャングリラ会合」はこれまで米中両国の国防トップが直接意見交換できる数少ない場とされてきたが、中国当局は主催者に対して、今回は正式な代表を派遣しないと通知したという。董氏の欠席理由は明らかにされておらず、出席の可能性もゼロではないものの、中国がこの判断を覆す可能性は極めて低いとみられている。
『Eurasia Review』の5月29日の分析では、今回のヘグセス氏による演説は、トランプ政権下での閣僚クラスによるインド太平洋政策に関する最も重要な公開談話になると指摘されている。バイデン政権が2021年初頭に『国家安全保障戦略暫定ガイドライン(Interim National Security Strategic Guidance)』を発表していたのに対し、トランプ政権はこれまで正式なインド太平洋戦略文書を公表してこなかった。
外交面では、2021年初めに前国防長官のロイド・オースティン氏と国務長官のアントニー・ブリンケン氏がアジアを訪問したが、トランプ政権第2期では、国務長官のマルコ・ルビオ氏はインド太平洋地域を訪れておらず、実質的にヘグセス氏が唯一の訪問者となっている。
『Eurasia Review』は、ヘグセス氏の演説が以下の3点に焦点を当てる可能性が高いとしている。それは「インド太平洋地域における安全保障上の脅威に対するアメリカの見解」、「同盟国との連携戦略」、そして「共有された価値観に基づく安全保障関係」だ。ヘグセス氏は今年3月にフィリピンを訪問した際、アメリカが『米比共同防衛条約』を重視していると強調し、対艦ミサイルや無人海上機を含む軍事支援を発表している。
日本がOCEAN構想を提案へ インド太平洋の多国間協力を強化
中谷元氏は今回の会議中、「OCEAN(One Cooperative Effort Among Nations)」と名付けられた海洋安全保障戦略構想を正式に提案する予定だ。「朝日新聞」によれば、このOCEAN構想は従来の「単一戦区(One Theater)」の発展形であり、政策をパッケージ化することで多国間協力を促進し、地域の緊張緩和を目指すとしている。
「単一戦区」構想は、東シナ海、南シナ海、台湾海峡、朝鮮半島といった地域を一つの戦略空間とみなし、アメリカ、オーストラリア、フィリピン、韓国などとの共同訓練や情報共有を通じて、中国の軍事的動きを牽制する狙いがあった。中谷氏はこれまでにも非公式な形で、アメリカ、インド、フィリピンなどの国防大臣とこの構想について意見交換を行っており、地図などを用いて地域全体の戦略的意義を説明してきた。
日本の防衛省関係者は匿名を条件に、「OCEANという名称は『単一戦区』よりも包容力があり、より多くのASEAN諸国や中立的な立場の国々の理解と支持を得ることが期待できる」と述べている。
編集:田中佳奈 (関連記事: ASEANサミット》トランプ関税が引き金で東南アジア全体で反撃 10月に新貿易協定ATIGAを締結、米国の単独主義に対抗 | 関連記事をもっと読む )
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