舞台裏》台湾の盾が弾切れ寸前──米軍協力の裏で進む極限訓練

2025-05-28 17:53
警護特勤隊は警察内で最も高度な反テロ部隊だが、現在、第一線で活動する隊員たちは訓練用の弾薬不足という深刻な課題に直面している。(写真/蘇仲泓撮影)
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元米国インド太平洋軍司令官のフィリップ・デービッドソン氏は、議会での証言で、台湾が明らかに中国の野心の一部であり、その脅威が2027年には顕在化する可能性があると指摘していた。中国が2027年に台湾を攻撃する可能性を示唆したこの警告は「デービッドソン・ウィンドウ」と呼ばれ、時間がますます差し迫る中、台湾は2025年の漢光41号演習でも「デービッドソン・ウィンドウ」を意識した各種想定を取り入れ始めている。軍だけでなく、頼清徳政権発足後も、蔡英文前総統が在任中に始めた「全社会的防衛の強靭性」の推進は継続しており、これは実質的に米国が台湾に強く促し、必ず実行させねばならないものとされている。

この防衛強化の動きは、武力を持つ警察も無関係ではない。警政署保一総隊に所属する「維安特勤隊」は、警察組織内で最高レベルの対テロ部隊だ。近年、友好国との交流を続け、最新鋭の装備を導入するなど、その総合的な戦力は軍に引けを取らない。高性能な装備を身につけ、大柄な体格を持つ彼らは、公の場に現れる際には必ずサングラスや黒いマスクで全身を隠し、その身元が高度な秘密保持を求められる特殊性を示している。実際、米軍関係者の姿が軍内部で頻繁に見られるようになった頃には、「英語教師」と呼ばれる米軍の教官がすでに警察特殊訓練にも介入しており、訓練量が増加しているものの、警察は苦しみを言葉にできない状況にあるという。

20250517-2025雙北世界壯年運動會開幕典禮17日於大巨蛋舉辦,圖為前來現場的維安特勤。(劉偉宏攝)
​黒いマスクにサングラス、全身を先進装備で覆った警察特勤隊。大柄な体格と匿名性を保つその姿は、特殊任務部隊としての高度な秘密性を物語っている。(写真/劉偉宏撮影)

訓練増加で弾薬底つく、下層からの警告も無視か

しかし、この保一総隊のエリート部隊である維安特勤隊は、現在弾薬不足の窮地に直面している。風傳媒が掴んだ情報によると、現在、維安特勤隊が使用する5.56mmライフル弾薬は、すでにほとんど「底をつく」状態にあり、次の段階で銃を持っても使う弾薬がない恐れがあるという。これは、たとえるなら「牙を抜かれた虎」のように、装備があっても活用できず、戦力が大幅に減少することに繋がりかねない。

情報によれば、弾薬不足が起こる主な原因は、これまで維安特勤隊に弾薬を配分する際、毎年すべての警官が必要とするライフル弾薬から融通されていたためだ。例えば、毎年1人の警官は100発の5.56mmライフル弾を撃つ必要があるが、実際にはそれほど撃つことはなく、使い残した5.56mm弾薬を維安特勤隊に回していた。これまでのこの運用方法では特に大きな問題はなかったという。

しかし、2025年の初めに、維安特勤隊は弾薬の残高が不十分であることに気づいた。下層部隊が要求を提出した後も、保一総隊は具体的な措置を講じず、消極的な態度を取り続けたため、下層の隊員は不満を抱き、「官僚の怠慢だ」とまで口にするほどだという。さらに、外部には知られていない状況として、これほど大量の弾薬が突然必要になったのは、米側の訓練が増加したせいだという指摘もある。

維安特勤隊執勤 20190108_從白曉燕命案、惡龍張錫銘集團的圍捕,都有維安特勤隊執勤身影。(資料照,蘇仲泓攝)
米軍の協力訓練が本格化する中、警察特勤隊が使用する訓練用弾薬は、すでに底をつきかけている状況だ。(写真/蘇仲泓撮影)

警察訓練は実弾使用、米軍協力で消費急増

この件について、情報によれば、対テロと重要インフラ防護能力を強化するため、米軍は直接台湾に派遣され、警察に協力して訓練を行っている。警察の射撃訓練では、「空包弾」を使用する軍とは異なり、訓練用の弾薬も「実弾」が使用されている。「米語教師」による協力訓練の増加により、弾薬使用量が急増し、その結果、ライフル弾薬がほとんど底をつきかけているのだ。

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