トップ ニュース 【台湾・潜水艦部隊の舞台裏】知られざる「256戦隊」の実態 謎に包まれた過酷な訓練と、新型艦「海鯤」に懸ける期待
【台湾・潜水艦部隊の舞台裏】知られざる「256戦隊」の実態 謎に包まれた過酷な訓練と、新型艦「海鯤」に懸ける期待 台湾の謎に包まれた潜水艦部隊「256戦隊」がいったいどのような任務を遂行しているのか、外部からの関心は極めて高い。写真は洋上試験で潜航を行う「海鯤号」。(写真/台船提供)
台湾初の国産潜水艦「海鯤号」は現在、海上公試(SAT)を実施中だ。台湾において潜水艦建造の是非については賛否両論が存在してきたが、水中で敵に探知されにくく、極めて大きな脅威を与える存在であることに変わりはない。また、潜水艦の乗組員になることは容易ではなく、幾重もの厳しい試験を突破しなければならないため、その実態はベールに包まれている。台湾唯一の潜水艦部隊である「第256戦隊」は普段どのような任務に就き、過去にはどのような海域まで航行していたのだろうか。
エリート集団のプライドと、音で故障を察知する「黄金の上士」 潜水艦出身の将兵に対し、外部は「閉鎖的で無口、どこか優越感を漂わせている」という印象を抱きがちだ。関係者によると、この優越感は、潜水艦乗組員になること自体の難易度の高さに起因するという。少数精鋭の部隊であり、ミスが許されない環境が、強い名誉心を醸成しているのだ。加えて、潜水艦には海軍で最も優秀な人材が配置され、訓練も全海軍の中で最も過酷かつ堅実であるとされる。
一方で、任務スケジュールは水上艦に比べて固定的だ。水上艦が夜中に緊急出港を命じられることが多いのに対し、潜水艦は翌月の出港予定があらかじめ決まっているため、休暇などの計画が立てやすい側面もある。潜水艦が水上艦を監視することは不可能であり、せいぜい水上艦の訓練標的となるか、特定の訓練や検閲に参加する程度であるためだ。
潜水艦勤務は高度な専門性が求められる分、福利厚生も手厚いため、一度乗艦すると退役まで勤務し続ける将兵も多い。関係者によれば、台湾の潜水艦部隊には世界でも稀な「黄金の上士(曹長クラス)」や「黄金の中士(軍曹クラス)」と呼ばれるベテランが存在する。彼らは20年以上も異動することなく潜水艦に勤務し続けており、機器からわずかな異音がしただけで、即座に不具合の箇所を特定できるほどの熟練度を誇るという。
潜水艦の操作には高度な専門性が求められる一方、待遇や福利厚生は良く、一度配属されると退役まで勤務する将兵も少なくない。(写真/台湾国際造船提供)
ガピー級は練習艦へ、剣龍級は寿命延長の近代化改修 台湾が保有する潜水艦のうち、老朽化した「ガピー級」は訓練艦となっており、実質的な戦力は、オランダから導入した剣龍(ズワードフィス)級の「海龍」と「海虎」の2隻が担っている。この2隻は1987年の引き渡しから既に38年が経過し、運用寿命を超えている上、一部部品はメーカーの生産終了により入手困難となっている。これを受け、海軍は総予算74億1254万台湾元(約366億円)を投じ、剣龍級の戦闘システム等の性能向上を図っている。期間は2018年度から2027年度までとなっており、現在「海龍」の改修は完了し、「海虎」は作業中である。
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艦齢60年を超えるガピー級「海獅」「海豹」は、現在は訓練艦として運用されている。(写真/中華民国海軍ウェブサイト提供)
上官の思いつきで始まる「抜き打ちの海殺(自由攻防戦)」 剣龍級潜水艦は現在、どのような任務を遂行しているのか。関係者によると、乗員の基礎訓練終了後、連携訓練を経て対抗訓練へと移行する。対抗訓練にはレベル分けがあり、レベル1や2を経て、レベル4がいわゆる「海殺(ハンター・キラー)」と呼ばれる自由攻防戦となる。出港後の定時連絡以外は自由な航行が許可される。
かつて、全海軍の中で潜水艦の正確な位置を把握していたのは、直属の第256戦隊の司令官らごく一部のみだった。現在はシステムの発達により大まかな位置は共有されているが、過去には上官が「海龍」が緑島沖にいることを知ると、突如として水上艦に「緊急抽出検査を行う。緑島沖の方位〇〇に潜水艦らしき反応あり、直ちに捜索せよ」と命じることがあった。これが「予告なき海殺」である。
また別のパターンとして、潜水艦に対し意図的にレーダー波を発信させて位置を暴露させ、水上艦に探知訓練をさせる「予告なき海殺」もあったという。いずれも予期せぬ実戦的訓練であったが、現在は艦齢が高くなっているため、こうした負荷のかかる訓練は控えられる傾向にある。
かつて潜水艦の正確な位置を知るのは第256戦隊のみだった。手前は剣龍級潜水艦。(写真/蘇仲泓撮影)
水中での接触、国籍不明の相手への「警告」 戦備任務に関して、潜水艦の哨戒任務は特定の担当海域を与えられ、そのエリアの水文、水深、底質などのデータを収集することが主となる。ある退役潜水艦将官は、台湾の潜水艦が敵と「直接(目視で)接触」したことは一度もないと指摘する。1996年の台湾海峡危機も例外ではない。水中では映画『レッド・オクトーバーを追え!』のように、音響センサーで前方に相手がいることを感知する。「こちらの装備が優れていれば先に相手の位置を知ることができる」としつつ、一定の距離まで接近し、相手にこちらの存在を「知らせるべき」と判断した場合には、故意に音を出したり、急旋回(クレイジー・イワン)のような機動を行ったりして警告するという。
この元将官によれば、水中で接触した際、相手の潜水艦がどこの国のものかは即座には判別できないという。米国、日本、あるいはオーストラリアの可能性もあり、不明確なままだ。過去には、相手側が音を出して台湾側に存在を知らせてくるケースもあったという。「相手の技量が上とは限らないが、装備は確実に我々より優秀だ」とし、相手が音を発する目的は「お前はもう我々の玄関口に入っている、これ以上近づくな」という警告であり、公海上であっても「そこにいるのは分かっている、接近するな」という意思表示なのだと述べた。
退役将官によると、台湾の潜水艦が敵艦と直接(目視で)接触したことはないという。写真は海獅潜水艦内部の複雑な計器類。(写真/蘇仲泓撮影)
マリアナ海溝海域への航行と、新型艦「海鯤」への期待 さらに同退役将官は、過去に剣龍級潜水艦が地球で最も深いマリアナ海溝付近の海域まで遠洋航海を行った事実を明らかにした。当時は燃料でどこまで航行可能かを確認する試験だったが、結果として、燃料の限界よりも先に、乗組員の体力や精神的な負荷が限界に達してしまうことが分かったという。また通信距離のテストも行われ、海底までの水深を測る測深儀(ソナー)の有効計測深度は6000メートルだったが、マリアナ海溝の海域では深度表示が出ず、海底までの深さが6000メートルを超えていることを確認したエピソードも披露された。
現在、ガピー級潜水艦は戦力化が困難であり、剣龍級も高齢化が進んでいる。近代化改修を終えたとはいえ、中国人民解放軍に対して十分な脅威となり得るかについては、多くの関係者が厳しい現実を認識しているだろう。しかし、島国である台湾にとって、軍部は潜水艦の必要性を強く認識している。今後、国産潜水艦「海鯤」が厳しい試験に耐え抜き、後続艦の建造計画を円滑に進めることができるか、各界からの注目が集まっている。
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