トランプ氏、イランに「10日以内の核合意」最後通告か 拒否なら軍事攻撃の可能性も――テヘラン「権力の空白」という懸念
2026年1月28日、イラクのバグダッドにて、燃え盛る星条旗とトランプ氏の肖像を掲げ、同氏のイラク政策に抗議するデモ参加者(写真/AP通信提供)
イラン核問題が膠着状態に陥る中、トランプ米大統領は再び、得意とする「最大限の圧力」を行使しようとしている。米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)』や英誌『エコノミスト』によると、トランプ氏は中東各国を緊張させる「10日間」という期限を設定したという。もし10日以内にイランが交渉のテーブルに戻り核合意に署名しなければ、米軍による実質的な攻撃が行われる可能性がある。今回は単なるツイッター上の威嚇ではなく、すでに2隻の米空母がイラン近海に展開している。
しかし、トランプ氏の軍事攻撃計画には別の懸念もある。米軍の攻撃によってテヘランの政権が崩壊した場合、8000万人の人口を抱えるこの歴史ある国は、勝者のいない「権力の空白」に陥る恐れがあるのだ。
「最大限の圧力」の再来とブラッディ・ノーズ戦術
WSJ紙によると、トランプ氏はイランに対する「限定的」な軍事攻撃を検討しているという。トランプ氏はイラン政府を即座に転覆させることまでは望んでおらず、いくつかの軍事施設や核施設をピンポイントで破壊し、テヘランに「痛みを伴う教訓」を与えることで、核問題での譲歩を迫る狙いがある。事情に詳しい関係者によると、トランプ氏が命令を下せば、数日以内に最初の攻撃が開始される見通しだ。
このいわゆる「鼻血(ブラッディ・ノーズ)」戦術は、相手に一撃を加えて痛みを認識させるもので、もし攻撃を受けてもイランがウラン濃縮を停止しない場合、米国は行動をエスカレートさせ、政権中枢に対する壊滅的な攻撃を行い、その際の目標は「政権交代(レジーム・チェンジ)」となる。
この手法は、2018年にトランプ氏が北朝鮮に対してとった戦略を想起させる。当時、トランプ氏は金正恩氏と最終的に和解に至ったが、硬軟どちらの手段も通用しないイランに対し、今回はF-35戦闘機に外交官の代わりをさせる意欲が強いようだ。ホワイトハウスのアンナ・ケリー報道官の回答は、トランプ流の神秘性に満ちている。「トランプ大統領が何をするか、あるいは何をしないかは、大統領自身だけが知っている」。この戦略的な曖昧さこそが、トランプ氏の交渉術の核心であり、いつテーブルをひっくり返すか相手に予測させない手法である。
空母2隻とステルス戦闘機が配備完了
さらに、WSJ紙によると、多数の最新鋭ステルス戦闘機F-35およびF-22が中東へ移動しており、大規模な空爆の組織に不可欠な早期警戒管制機(E-3)や空中給油機も配備が完了している。昨年、ホワイトハウスが同様の「2週間の期限」を提示した際、期限が過ぎると実際に米軍のB-2爆撃機がイランの3箇所の核施設を爆撃した経緯がある。トランプ氏の最後通牒は単なる脅しではないことが多く、イラン側が米軍の攻撃を懸念するのには正当な理由がある。さらに、トランプ氏は先週、「我々は今後10日以内に決定を下す」と公言している。この言葉の裏には、「交渉のテーブルで署名するか、廃墟の上で署名するか」というメッセージが込められている。
テヘランと米国の二重のジレンマ
米軍の圧力を前に、イランの最高指導者アリ・ハメネイ師の態度は依然として強硬であり、「米空母を撃沈する」能力があると豪語している。しかし実際には、外交ルートは動き出している。トランプ氏の義理の息子であるジャレッド・クシュナー氏と特使のスティーブ・ウィトコフ氏は、先日ジュネーブでイラン外相と極秘交渉を行った。部分的な原則合意には達したものの、双方はまだ完全な妥結には至っていない。加えて、J・D・バンス副大統領が異例の悲観的な見解を公にし、イラン人は窮地に陥るまで事態を理解しないだろうと述べたことで、開戦のリスクは急激に高まっている。
もしトランプ氏が実際に「斬首作戦」を実行し、ハメネイ政権が崩壊した場合、次に何が起こるのか。WSJ紙は、現在のイランには情勢を安定させられる代替勢力が存在しないことが最も厄介な問題だと指摘している。これは1979年のイラン・イスラム革命前夜とは全く状況が異なる。当時はパフラヴィー国王が権力を握っていたものの、パリに亡命していたホメイニ師がすでに圧倒的な支持を集める反体制派の指導者として存在し、強力な動員力を持っていた。
今日において、イスラム共和国に反対する勢力は怒りを抱いているものの、烏合の衆に過ぎない。憤る広範な市民には統一された指導者が不在であり、著名な反体制派であるノーベル平和賞受賞者のナルゲス・モハンマディ氏らは収監されている。亡命中の元皇太子レザー・パフラヴィー氏は海外で活発に活動しているが、国内では旧王朝時代の弾圧を記憶している人々も多く、少数民族も彼を信頼していない。また、「人民聖戦士機構(ムジャヒディン・ハルク)」などの反体制派組織は欧米政界で一定のロビー活動能力を持っているが、イラン・イラク戦争でイラクを支持した過去があるため、国内からは裏切り者と見なされている。
権力の空白と「破綻国家」への転落リスク
さらに恐ろしいシナリオは、ハメネイ師が倒れた後、権力を掌握するのが民主派ではなく、より急進的な軍事指導者になる可能性だ。テネシー大学の専門家サイード・ゴルカール氏は、元イスラム革命防衛隊司令官で現国会議長のモハンマド・バゲル・ガリバフ氏が、より軍事化された強硬な政府を率いる可能性があると分析している。また、ハメネイ師の側近アリ・アスガル・ヘジャジ氏や、極端な急進派の精神的指導者モハンマド・メフディ・ミルバゲリ氏らが混乱に乗じて台頭する可能性もある。
現在米国に在住するイランの反体制派モフセン・サゼガラ氏は、もし今ハメネイ師を殺害しても、権力を引き継ぐのは民主派ではない可能性が高く、国家全体が崩壊し、ソマリアのような「破綻国家」に転落する恐れがあると警告している。したがって、トランプ氏が直面しているのは実質的な賭けである。彼は「狂人(マッドマン)」のイメージを維持し、イランに「本当に攻撃する」と信じ込ませる必要がある。しかし、実際に戦端を開き、その結末を制御できなくなれば、混乱したイランが米国を泥沼に引きずり込み、さらには中東全体に新たな大混乱を引き起こすことになりかねない。
『エコノミスト』誌が述べるように、トランプ氏の忍耐には限界があり、米軍の空母配備にも期限がある(すでに8ヶ月配備されている空母フォードは限界に近い)。この「残り10日」のカウントダウンの中で、中東の運命は再びトランプ氏の一存にかかっている。これは新たな外交的奇跡となるのか、それとも中東の戦火が再び燃え上がるのか。世界中が固唾を呑んで見守っている。
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