まるで本物の魚が背中に張り付いているかのような圧倒的なリアルさと、一度見たら忘れられないユニークな存在感。SNSを中心に話題を呼び、日本国内のみならず海外にもファンを持つレザーブランド「かばんばか(Kaban Baka)」をご存知だろうか。
マグロ、チョウチンアンコウ、ダイオウイカなど、海の生き物をモチーフにした革製バッグを制作するのは、カバン職人の川本有哉(カワモト・ユウヤ)氏だ。今回、『風傳媒』(The Storm Media)は川本氏への単独インタビューを行い、その創作の原点から、知られざる制作の裏側、そして自身の活動の転機となった台湾への想いについて詳しく話を聞いた。

始まりは「マグロ」から リアルさと機能性の追求
川本氏が海の生き物をモチーフにし始めたきっかけは、最初に制作した「マグロバッグ」だった。作ってみると制作自体が非常に楽しく、完成品をX(旧Twitter)に投稿したところ、「可愛い」「背負ってみたい」という反響が多く寄せられたという。自身も背負っていて楽しさを感じたことから、そこからフグやメンダコ、チョウチンアンコウなど、次々と新作を生み出していった。

中でも制作に最も苦労したのは、全長約150センチにも及ぶ「巨大マグロバッグ」だ。通常のリュックは大きくても50センチ程度だが、150センチの魚を人が背負うことは本来想定されていないため、構造を一から考える必要があり、完成までに約半年を要したという。

彼の作品の最大の特徴は、生物としての「リアルさ」と、カバンとしての「機能性」の両立にある。例えば、マグロとチョウチンアンコウでは形状が全く異なるが、川本氏は「どんな形であっても、財布、スマートフォン、ペットボトルといった必需品が入ることは絶対条件」と断言する。

デザインを成立させつつ、日常使いができる容量を確保し、さらに長く愛用してもらうために素材選びにも妥協はない。国産の丈夫な牛革や真鍮製の金具、壊れにくい金属ファスナーを使用し、5年、10年と使い続けられる耐久性を追求している。「エビやシャチも好きですね。特にシャチはお腹の模様を忠実に再現することにこだわりました」と、生き物への愛着も深い。

命を吹き込む「裁断」 手作りならではの葛藤とこだわり
すべての工程を一人で行う手作りだからこその難しさもある。特に神経を使うのは革の「裁断」だ。天然素材である牛革は、背中部分は硬く、お腹部分は柔らかく伸びやすいという特徴がある。
川本氏は「例えば、しなやかに動かしたいマンタの尻尾には柔らかい部分を、しっかりと強度が必要な本体には硬い背中の部分を使います。また、牛が生きていた頃の傷や虫刺されの跡を避けながら、どこをどう切り出せばそのカバンが最も美しく見えるかを常に考えています」と、素材と対話しながらハサミを入れる。
「背負う魔法」が繋いだ奇跡の縁と、台湾への想い
ブランドのコンセプトである「背負うと楽しくなる魔法」には、カバンを通じてコミュニケーションが生まれてほしいという願いが込められている。「街中で『そのカバン、イカですか?』と知らない人から声をかけられることは、普通のカバンではあまりない体験です」と川本氏は語る。


















































