トップ ニュース 日本移住の中国人が過去最多に!東京が「台湾」に代わる文化拠点へ 高市政権のビザ厳格化で「二度目の移民」も
日本移住の中国人が過去最多に!東京が「台湾」に代わる文化拠点へ 高市政権のビザ厳格化で「二度目の移民」も 著書『潤日』の著者・舛友雄大氏は、こうした「潤日者」の中には実際に中国へ帰国する者や、「再移民」の準備を進める者もいると指摘している。(写真:AP通信)
「潤(ルン=RUN)」とは、新型コロナウイルスのパンデミックや中国の社会封鎖の中で生まれた流行語であり、より良い生活を求めて中国から逃げ出すことを意味する風刺的な言葉だ。
近年、数千から数万人がシンガポール、米国、ニュージーランド、オーストラリアなどの世界の主要都市へ「潤(脱出)」しているが、その中でも「潤日(日本への移住)」を選ぶ者が多数を占めている。しかし、書籍『潤日』の著者である舛友雄大氏が台湾メディア『風傳媒』に明かしたところによると、これら「潤日」組の中には中国へ帰国する者や、他国へ「二度目の移民(再移民)」を準備している者も確実に存在するという。
『潤日』の著者である舛友雄大氏は、日本人が通常「舛友」と姓で呼ばれるのとは対照的に、中国的な親しみやすさを込めて自らを下の名前「雄大」と称している。日本人国際ジャーナリストである舛友 氏は、米カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)で国際関係学修士号を取得。中国とメディアに強い関心を持ち、北京の経済メディア『財新網』に入社して日中関係や在中国日系企業の報道を4年間(2010~2014年)担当した。また、シンガポール国立大学リー・クアンユー公共政策大学院で研究員を務めた経歴も持つ。中国語、英語、インドネシア語に堪能で、現在はYouTubeチャンネル「舛友雄大の亜州前線」 も運営している。
「潤日」現象:東京圏で勃興する新・中華街 舛友氏 が『潤日』を執筆したきっかけは、2018年に在日中国人コミュニティの変化に気づいたことだった。当時東京に定住していた舛友 氏 は、埼玉県南部の「新・西川口中華街」一帯に頻繁に足を運び取材を重ねた。
巨大住宅街「芝園団地」では、中国人住民の割合が約50%に達していることを発見。さらに、中国人が現金一括で不動産を購入する姿や、不動産広告に中国語の表記が併記され、多くの仲介業者が中国語専用窓口を設けている実態を目の当たりにした。
「潤日」組の正体:大都市の中産階級とエリート層 「潤日」した中国人の背景やアイデンティティにはどのような特徴があるのか。舛友氏の分析によれば、「潤日者」は従来の「新華僑」とは明確に異なるという。彼らは中国の大都市に住む中産階級であり、国際的な視野を持つ専門職、経営者、エンジニア、知識人、芸術家などで構成され、その数はざっと10万人に上ると推計される。
『潤日』著者の舛友雄大氏。(林庭瑤撮影)
日本語を学ばない?独自の経済圏を構築 舛友氏は、従来の「新華僑」が多くの場合、日本語を懸命に学び、何とかして日本社会に溶け込もうと努力してきたと指摘する。対照的に、「潤日者」は日本語の習得に固執せず、WeChat(微信)を通じて独自の中国人コミュニティによる生活圏を形成している。また、彼らは多かれ少なかれ中国政府に対して不満を抱いているのも特徴だ。
新華僑と「潤日」組を含め、在日中国人は急速に増加している。日本政府の統計によると、2025年6月時点で日本に居住する中国人は初めて90万人の大台を突破し、2026年には100万人を超える可能性があると予想されている。
舛友 氏は一例として、チャンネル登録者数670万人を誇るYouTuber「老高與小茉(Mr & Mrs Gao)」 を挙げる。このインフルエンサー夫妻はもともと日本に住んでいたが、日本の所得税が高すぎるとの理由でシンガポールへ移住したと言われている。舛友氏は、ある「潤日者」の言葉を引用した。「中国には全く戻りたくありません。人口の4分の3を華人が占めるシンガポールにはとても親近感を覚えますが、そこに永住するかどうかはまだ決めていません。オーストラリアへの定住も視野に入れています」
歴史は繰り返す:東京に集結する中国のエリートたち 舛友氏は、自身が親交を持つ中国のコラムニストで、かつてテンセントの『大家』で編集長を務めた賈葭氏についても言及した。賈氏は現在、東京大学教養学部の客員研究員を務めている。
賈氏 はかつて習近平総書記に辞任を求める公開書簡に関与したとされ、2016年に北京から香港へ向かう途中で中国当局に連行され、10日間にわたり音信不通となった経験を持つ。その後、北京と香港での生活体験をエッセイ集『私の双城記』としてまとめた。舛友氏によれば、賈氏は香港の反政府デモ(反送中運動)を機に日本へ「潤」し、中国に戻る意思はないと明言しているという。
「中国の文化エリートたちが今、日本に集結しつつある」。舛友氏は著書の中でそう綴っている。現代の中国リベラル派が東京に集う姿は、まるで歴史の繰り返しのようだ。清末期にも、魯迅、梁啓超、孫文ら進歩派の中国人知識人が日本へ渡り、西洋の思想を吸収した。中国同盟会が結成されたのも東京であり、『清議報』や『新民叢報』といった思想誌も横浜で誕生した。当時、日本の政界では犬養毅が、民間では宮崎滔天や梅屋庄吉らが、反体制派の中国人を間接的に支援していた歴史がある。
「潤日」の決定打:政治体制の変化とゼロコロナ政策 「潤日」の決定的な要因について、舛友氏は次のように語る。習近平氏が憲法を改正して国家主席の任期制限を撤廃し、中国共産党の政治的継承システムを打ち破ったことで、北京、上海、深圳などの大都市に住む中産階級や知識人たちが海外へ「潤」し始めた。
舛友氏は、コロナ禍の2022年11月、数百人の在日中国人が「白紙運動(ゼロコロナ政策に抗議する運動)」に呼応してJR新宿駅南口に集結した光景を目にし、「何か新しい変化が起きている」と感じたという。
8年前に習近平氏の辞任を呼びかけ中国当局に拘束され、現在は東京大学で客員研究員を務める賈葭氏。2024年8月20日、東京の書店にてAP通信の取材に応じた。(AP通信)
「潤日」を促す3つの要因:経済・教育・言論の自由 なぜ彼らは中国を脱出し、日本へ「潤(脱出)」するのか。舛友氏は、その背景に以下の3つの大きな要因があると指摘する。
① 経済の減速と深刻な「内巻(過当競争)」 「潤日者」たちは中国の不動産を売却し、日本で不動産を購入している。日本の経済環境に将来性を見出し、雇用機会も豊富だと考えているためだ。また、2020年以降のコロナ禍において、武漢から上海へと続いた都市封鎖(ロックダウン)は決定的な出来事だった。国際金融都市・上海に住む中産階級にとって、長期間にわたり人身の自由を奪われることは想像を絶する恐怖であった。
② 教育の多様性 中国の愛国教育は過度に硬直化・形式化しており、次世代を中国で教育したくないと考える親が増加している。一方、少子化が進む日本において、インターナショナルスクールの学費は相対的に安価であり、例えば北京のインターナショナルスクールの学費は東京の約2倍に上るという実態がある。
③ 言論の自由 公共知識人(オピニオンリーダー)、専門職、芸術家たちは、日本で「飛地」「単向街」「Outsider(局外人)」といった中国語系書店を開業している。週末には東京で頻繁に新刊のトークイベントやサロンが開催され、「読道社」のような出版社も設立された。彼らは中国語でのコミュニティ形成に重きを置いており、必ずしも高い日本語能力を必要とせずに生活できる環境を構築している。
東京が台湾に代わり「東アジアの文化拠点」へ 舛友氏は、多くの 香港人が台湾ではなく東京へ移住しており、東京が台湾に取って代わって「東アジアの文化拠点」になりつつあると指摘する。中国や香港にゆかりのある書店が次々と設立され、教育分野でも中国の親たちが多額の資金を投じて子供に日本の中学受験を受けさせる動きが加速している。
こうした現象に対し、日本の『週刊文春』は「東京大学の学生の12%以上が中国人」というセンセーショナルな見出しを掲げ、日本社会に「潤日者」への警戒感を呼び起こした。ある対中外交に携わる日本政府関係者は、舛友氏に対し「この集団の規模がさらに拡大すれば、将来的に参議院選挙で独自の代表(議員)を推挙できるレベルになるかもしれない。日本政府としてどう対応すべきか、国会で議論を始めるべき時期に来ている」と漏らしたという。
2026年1月19日、首相官邸で記者会見を行う高市早苗首相。(AP通信)
高市政権の「排外ムード」とビザ厳格化が招く「二度目の移民」 その最大の理由は、「世界的な右傾化」である。米国のMAGA運動、英国の改革党、フランスの国民連合(RN)、ドイツのための選択肢(AfD)など、世界中で右翼政治が台頭している。日本においても、高市早苗首相の就任以降、高市政権は右派・保守・排外的な路線を鮮明にしている。舛友氏自身、東京から中国へ帰国した起業家の「潤日者」を取材したことがあると明かす。
舛友氏は、2025年10月からの「経営・管理ビザ」の大幅な要件厳格化(いわゆる「入場料」の引き上げ)が大きな転換点になったと指摘する。新制度では、ハードルが著しく引き上げられた。
3000万円以上の資本金投資 常勤従業員(日本国籍または永住者)の最低1名の雇用 独立した実体のあるオフィスの確保 専門家の確認を経た具体的な事業計画書の提出 3年以上の経営・管理経験 相当程度の日本語能力 このビザは外国人が日本で事業を行い滞在することを許可するものだが、要件の引き上げは、実態のある事業運営能力を持つ起業家を選別し、単なる投資目的や事実上の「移民」を排除する狙いがある。
2022年、中国共産党中央軍事委員会の習近平主席(左から3人目)が、張又俠副主席(右から2人目)、何衛東副主席(左端)、および委員の苗華氏(右端)、李尚福氏(右から3人目)、張昇民氏(右から4人目)、劉振立氏(左から2人目)を率いて軍事委員会統合作戦指揮センターを視察した際の様子。現在、この7人グループで任に残っているのは習近平氏と張昇民氏のみである。(新華社)
「日本第一」を掲げる保守派の台頭と今後の展望 日本のメディアが「中国資本が日本を買い占めている 」と報じるたび、多くの日本人が「国家のアイデンティティが書き換えられる」という危機感を抱いていると舛友氏は分析する。直近の参議院選挙では、「日本第一」を掲げる政党が保守派の票を席巻し、これを「大和民族を守る聖戦」と見なす動きすらあった。
その結果、日本社会の中国人に対する見方は日増しに厳しくなっている。不動産、金融、小売業界などの大企業は「潤日マネー」を日本人の消費低迷を補う新たな需要源と見なす一方で、地方自治体は超高層タワーマンションへの外国人投資を制限する動きを見せ始めている。
舛友氏は「潤日」現象の今後について、習近平政権の権威主義化や香港統制の強化に伴い、台湾社会の北京当局に対する警戒感も高まっていると言及。蔡英文政権から頼清徳政権へと続く「脱中国化」の流れや台湾の経験は、日本にとっても一つの教訓(リファレンス)となっている。
中国の自由派知識人たちは「蒸発(失踪)」を恐れて帰国できず、マレーシアやタイなどへの再移民も検討し始めている。舛友氏は、「習近平体制が維持される限り、『潤』という現象はさらに加速していくだろう」と結論づけた。
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