森聡・慶應大教授、「トランプ2.0」の対中戦略を読み解く 対中「負担分担」と日本の「モデル・アライ」への課題

森教授は、トランプ政権がインド太平洋を重視する中で、日本が対米投資と防衛力強化を通じて「模範的同盟国」としての価値を証明し、同盟の信頼性を維持することが不可欠であると強調した。(写真/日本記者クラブ提供)
森教授は、トランプ政権がインド太平洋を重視する中で、日本が対米投資と防衛力強化を通じて「模範的同盟国」としての価値を証明し、同盟の信頼性を維持することが不可欠であると強調した。(写真/日本記者クラブ提供)

慶應義塾大学教授の森聡氏は2月13日、日本記者クラブで「トランプ2.0」と題して会見し、第2期トランプ政権の国家安全保障戦略(NSS)および国家防衛戦略(NDS)に基づく外交・安保政策と日米同盟の展望について詳説した。

森氏は、トランプ大統領が掲げる「米国第一主義」において、西半球とインド太平洋地域が例外的に重視されていると分析し、特にインド太平洋では中国との勢力均衡を維持するため、同盟国との「負担分担」が求められるとの見方を示した。

欧州へは「転嫁」、アジアとは「分担」

森氏は、第2期政権の特徴として、大統領個人の権力が政策を主導する「独断専行」の強まりと、伝統的な国際主義を否定する「反グローバリズム」の姿勢を挙げた。

トランプ大統領は、米国の平和と繁栄は他国と切り離して成立し得ると考え、同盟関係を本質的にリスクとみなす傾向にあるが、経済的利益の源泉であるインド太平洋と、直接的な脅威となり得る西半球については、例外的に関与を強化する方針であると指摘した。

その際、欧州や朝鮮半島に対しては通常戦力による抑止の責任を委ねる「負担転嫁」を進める一方、対中戦略においては同盟国を動員して共に抑止する「負担分担」を重視しており、欧州での関与縮小が直ちにアジアからの撤退を意味するわけではないと論じた。

訪中時は台湾武器売却凍結も

対中政策については、トランプ政権が「柔軟な現実主義」を掲げ、戦争を回避しながら「戦略的安定」を目指していると解説した。

経済面では、米国内のインフレ懸念などから、関税による圧力(ムチ)よりも、実利的な取引(アメ)を優先する可能性があり、4月上旬にも見込まれるトランプ大統領の訪中では、大型商談の成立が模索される一方で、交渉期間中は台湾への武器売却が一時凍結される可能性があるとの見通しを示した。

また、安全保障面では、中国による台湾侵攻を抑止するため、同盟国と共に「拒否的防衛(Denial Defense)」の態勢を構築することが焦点となっている。

日本は「モデル・アライ」になれるか

日本への影響に関して、森氏は3月19日に予定されている高市首相の訪米が極めて重要な局面になると指摘した。

トランプ大統領は同盟国を「モデル・アライ(模範的同盟国)」と「ディペンデンシー(従属国・負担となる国)」に峻別しており、日本が「モデル・アライ」と認められるためには、対米投資による雇用創出などの経済的貢献に加え、十分な防衛力を整備して米国にとっての「安全保障コストとリスク」を低減させる必要があると強調した。

森氏は、日本自身が中国を拒否できるだけの防衛力を持たなければ、米国が日本防衛にコミットする信憑性が低下すると警鐘を鳴らし、日米同盟の再定義と強化が急務であると訴えた。

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編集:小田菜々香

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